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お香はなぜ現代の生活でも使われ続けるのか

日常に取り入れる香りといえば、多くの人はまずアロマオイルや香水などを思い浮かべると思う。
しかし、日本人は歴史的にお香で匂いを生活に取り入れてきた。そう、あの灰の匂いがして時代遅れなものという印象があるお香だ。しかし、調べてみるとお香は人気が全然落ちていない。そんなお香について、その良さを調べてみた。

そもそもお香とは何か

そもそも、お香とはよく耳にするが実際に何なのか説明できない人は多いと思う。私も、伝統的に日本で使われてきた香り発生装置という程度の理解だ。インターネットで調べてみると、以下のように解説されている。

お香とは、もともと、白檀や沈香などの天然香木の香りのことを指します。そこから線香や焼香などの香木を原料とするものの総称となりました。

香木は良い香りがする木材のこと沈香と白檀という種類が有名らしい。聞きなれない単語だが、木から良い香りがするというのは、檜風呂などを想像するとなんとなくわかる。

お香が日本で流行・定着したきっかけ

そもそもお香がなぜ広まったのか。そのきっかけは仏教だ。
仏教では焼香を推奨してきた。焼香といえば、お葬式の際に今でもよく使うお香だ。だから、仏教が日本に伝わると共に、お香も広まった。
奈良時代(西暦710-794年)に鑑真和上がお香の原料と調合する技術を日本に伝えた。それがきっかけで平安貴族がお香文化を発展させた。
このお香ブームは長く続いた。貴族の世界のみならず武士の世界(鎌倉時代)でも人気は続き、室町時代には香道が誕生した。
歴史的な部分の詳細は、お香の生産を行っている薫寿堂のWebサイトに記載されている。

お香は全然衰退しない

1980年代から日本でも流行したアロマセラピーにより、気軽に良い香りをもたらしてくれる製品も身近に増えてきた。驚いたことに、そんな世の中でもお香は全然衰退していない。

1989年から2019年までの日本国内の出荷金額を5年ごとにプロットしてみた。だいたい300億円程度で推移している。2014−2019年はなんと出荷量が増えている。

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出処:経産省工業統計より筆者作成

可能性としては、「日本での消費が落ちているが海外でお香ブームがあったため出荷量が増えている」ということも考えられる。そう思い、同じ期間(1989年から2019年まで)の輸出・輸入金額を5年ごとにプロットしてみた。

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出処:財務省貿易統計より筆者作成
※ここでは、アガバティその他の香気性の調製品で燃焼させて使用するものを指す。

輸出量は2004年あたりで爆発的に増えている。しかしながら、さきほどの出荷量の金額と比較すると多いときでも10%に満たない。

つまり、日本人はアロマセラピーという香りを楽しむ文化を取り入れながらも、長い歴史の中で育んできたお香文化を少しも忘れていなかったのだ。
これは、同じ伝統産業である焼き物の劇的な市場規模縮小を考えるととてつもないことである。なぜ同じ伝統産業である焼き物がこれほどまでに衰退し、お香は維持しているのか。今後調べていきたい。

現代の生活でもアロマオイル・香水よりもお香を使いたくなる理由はどこにあるのか

これほどまでにお香が使われているのはなぜなのか、感覚的にわからない。お寺に参拝する時やお墓参りでは線香を使うが、正直良さがわからない。あの独特な灰のような匂いがなぜここまで人気なのか。

無印良品でお香を買ってみた

もしかすると、私が普段使っている安いお香と高級なお香では全く匂いが違うのではないか。そう思い、まずそこそこ良いものが手軽に手に入れられる、無印良品に行ってみた。

無印良品では、沢山の種類のお香(線香)が売られている。桜や金木犀などの華やかな種類のお香もある。試しにお香セット(ひのき・桜・藤・グレープフルーツの香り)と金木犀を購入してみた。

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まず火をつけない状態で匂いを嗅いでみると確かに良い香りがする。それぞれ、和風な香りと見事に調和して心地よい気分になってくる。

火をつけると部屋中に香りが充満してとても幸せになるのではないかと思った。しかし実際には、部屋には灰のような香りが充満して煙たいだけだった。

京都の有名店でお香を買ってみた

あまりにも良さがわからないので、お香の老舗に行って良さを教えてもらうことにした。松栄堂という会社の京都本店に行ってみた。

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出典:monpulさんブログより。(訪問時は写真を撮り忘れてしまいました)

まず、入った瞬間に良い香りがする。全然灰のような匂いはなく、少し甘く、アロマオイルのようなストレートすぎない心地よい香りだ。この香りを言葉で伝えるのは難しいので、ぜひ実際にお店に行って感じてほしい。

実際にお店に入ってみると意外にも若い人が多い。休日に行ったことも影響してか、20代の女性、もしくは同年代のカップルがほとんどだった。

店員さんに線香の楽しみ方を聞いてみた。そうすると、そもそも線香の使い方が間違っていた。近すぎると灰の匂いが強くなってしまう。少し離れるととても良い香りがするとのことだ。
(しかし、帰宅後に教えてもらったような距離感を探ってみても、灰の香りが少なくて良い香りが濃くなる距離感を実現するのはとても難しかった。)

さらにお話を伺うと、焼かないお香は灰の香りがしないらしい。入り口でつかっていたのもそれで、灰っぽい匂いはせずに甘い香りがしていた。一方で、香りが遠くまで広がる線香とは異なり、焼かないタイプが広がる範囲は狭く、部屋全体ではなくお香の近くで楽しむものとのことだ。店内の入り口付近のように素敵な香りを自宅でも楽しめるのならとても魅力的である。

まとめ:お香は正しく使うと良い匂いがするから現代でも使われ続ける

これまでお香のことを灰の匂いがする時代遅れのものと思っていたが、専門店に行って正しい楽しみ方を教えてもらったらとても良いものだと印象が大きく変わった。お香は製品としてアロマオイルに劣らず良いものだから現代でも使われる付けているのだと思った。実際に私は毎日のようにお香を楽しむようになった。焼かないお香の入門セットを使っているが、とても良い。

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お香の本当の楽しみ方を知らない人は多いと思う。現代の暮らしに合わないものでもない。お洒落な場所に自然に焼かないお香が置かれていたらとても素敵だと思う。広範囲に香りが届くわけではないので、カフェの入り口で良い香りをさせる、といった使い方もありだと思う。少し前の私と同じようにお香が嫌な匂いという思い込みを持っている人が、本当の魅力を知るきっかけが増えれば良いなと思う。

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