見出し画像

再びの心理学 -定期的に来るアドラーからの語り-

おはようございます!
年内最後となるのかわかりませんが、1冊分まとめたので、こちらに紹介しておきます。

今回の1冊は、こちら。

『NHK「100分de名著」ブックス アドラー「人生の意味の心理学 -変われない?変わりたくない?-」(著:岸見一郎)』

定期的に来るアドラーを学びたい意欲を満たすために、NHKの長寿番組のテキストを購入しました。このシリーズは色々な本を読んでいますが、導入版としてもわかりやすくまとめられており、読書初めには良いと感じています。

「嫌われる勇気」が発刊されてから一時的なブームかと思われていた、アドラー心理学ですが、今となっても変わらず、その影響は与え続けられている印象があります。
今回は、そのルーツなどを踏まえて、読了の記録としてまとめられたらよいと考えています。

アドラーは、自己と他者との在り方を説き続けました。それは、あらゆる人間の苦のはすべてが対人関係であるとする個人心理学を推進したからです。
あらゆる対人関係を縦ではなく、横とし、全てが対等であることの意味が浸透し、理解されることを望んでいました。

その中でも、今回紹介されている『人生の意味と心理学』は、人間の尊厳を取り戻した1冊とも言われています。

1.人生を変える「逆転の発想」

個人心理学とは、あらゆるものを分割が出来ないものとして捉えます。
例えば、理性と感情、意識と無意識、身と心など対となる言葉においても、タイプ別ではない捉え方をしています。
これは、心理学において、独自色が強いものですが、その背景にあるものはアドラー自身の生い立ちが影響をしているのかもしれません。

① 母 < 父
愛情が「弟」へ移っていく母に対して、後に、フロイトの提唱する‟エディプス・コンプレックス(男の子が無意識のうちに同性である父を憎み、母を性的に思慕する傾向)”の否定につながります。
しかし、のちに、母が病弱なアドラーが生活を送れるようにする手助けをしていたことに気が付き、関係性に変化が生まれます。

② 兄との関係性
第1子であった兄とは、病弱であったアドラーとの格差を感じる出来事が多かったため、ライバル視をしています。

③ 医師を目指す
自身が病弱であったこと、弟が1歳で亡くなったことを受け、ウィーン大学医学部へ入学します。
ここで、フロイトと出会い、交流が始まっていきます。
自身は、内科医として勤務しつつ、‟器官劣等性”に着目をします。「生活に困難をもたらすハンディキャップを人間は補填する」という仮説に対して、性格形成や行動が、必ずしも劣等感に繋がらないことを考えていきます。

④ フロイトとの対立
精神医学である「夢診断」を含めて、交流を深めていたフロイトとも、最終的には学説の違いで対立をしていきます。フロイトは人間の根幹に、リビドー(性的欲求)があるとしましたが、アドラーは劣等感であるとしました。
アドラーはここから更に、「目的論」へと発展をさせていきます。

⑤ 共同体感覚の発見
第一次世界大戦にて、医師として帯同したアドラーは自身が精神的苦痛を追っていることに気が付きました。それは、他者を仲間とする感覚を有する(共同体感覚)であるとしました。これに対して、フロイトは人間には攻撃的欲求があるとし、対立をしています。


2.アドラー心理学の特徴

アドラー心理学は「目的論」とされています。
人は自分が‟意味づけ”した世界を生きているとするものです。過去の経験に意味を与え、自分の現在、未来の行動に合う、もしくは正当化するものを見つけ出しているのです。
何かによって、自分の今の行き方や行動が決定していると思いたいという、責任逃れでもあると指摘しています。

人間は、「早期回想」をする生き物です。
自分の認知を裏付けるために、思い出される部分を切り取り、ストーリーにしています。

だからこそ、「ライフスタイル」の重要性を説きます。
① 自己概念:自分のことを自分がどう見ているか?
② 世界像:他者を含む世界の現状についてどう思っているか?
③ 自己理想:自分や世界についてどんな理想を抱いているか?

これは概ね5~10歳までに形成をされるとしています。
しかし、Can't(変われない)モノではなく、Won't(変わりたくない)モノであるとしています。

そこにあるのは本人の決断です。
決断において、影響を与えるのは、遺伝や環境、文化であるとしています。また、そこにさらに強力な因子として作用するのが、賞罰教育と対人関係であるとしています。

特に、対人関係は人間におけるすべての悩みの源泉であるが、生きる喜びや幸せもこの中にしかありません。この対人関係にあっても、ライフスタイルを意識化し、選択をすることで変えられるのです。

ソクラテスのパラドクスとして、「誰一人、悪を欲する人はいない」とあります。アドラーはこの言葉を引用して言い換えているのが、「人は常に、自分のためになること(善)を追求して生きている」です。

善に対して、課題が起きたときに人間は2つのものを抱くとしています。
1つ目は優越性であり、人間の普遍的欲求でもあります。自慢や価値逓減傾向となることから、Whoに着目をしやすくなります。
2つ目は劣等感であり、理想と現実のギャップにより生じます。人生の虚を感じ、言い訳へ移ろいます。

アドラーはこれを否定しているわけではありません。
強まり、コンプレックスるになることを避ける必要があると指摘しているのです。「なぜ?」と考えたときに、そこには原因ではなく、目的が存在をしています。この目的こそ、現実的な努力を避けている一番の要素なのです。

解消のために、解釈を意識化し、他の人の利も考える「他者貢献」こそが有効であるとしています。


3.対人関係こそ悩みの源泉

対人関係における問題は、他者を「敵」とみなすことです。
その共通項として存在をする意識は、‟世界の中心に自分がいる”という共同体における所属感です。子どもは注目を受けたいものであるが、承認欲求や賞罰教育により、「他者に注目をされる」を目的にする思考が形成されます。

アドラーは生きることは、「Give&Give」であるとしています。
そして、そのための3要素を示しています。

① 他者に関心を持つ
他の人の目で見て、他の人の耳で聞き、他の人の心で感じるのです。

② 承認に依存しない
他者は自分の期待を満たすために存在をしてはいません。もちろん、自分も然りです。

③ 課題の分離
最終的な結末の責任は誰にあるのか。他者の課題に「土足」で踏み込み、感情や力で支配することが全てとのトラブルのもとです。アドラーは、‟雨と闘う”と表現しています。

特に、③において、分離をしてどうしても自身で解決できない場合、他者へ協力を求めることも解決の手法として示しています。


4.「共同体感覚」とは何か?

アドラー心理学の究極の目的とも僕は捉えている部分がありますが、この「共同体感覚」とは何でしょうか。

まずは、他者を「仲間」として捉えることから始まります。
次に、その他者へ自身が貢献をすることを考えます。そこから、自分の価値が発掘されていきます。
そのためには、対人関係に入る勇気が必要となりますが、これこそが幸福へ繋がります。

アドラーの指す「共同体感覚」は、宇宙全体を指しており、到達できない理想でもあります。しかし、これこそが、人生をより豊かに幸福にする、生きる意味全体への貢献でもあるのです。

共同体感覚を育むためには、どのような視点が必要なのでしょうか。

1つ目は、「自己受容」です。現実の自分を出発点とし、短所を長所に置き換えます。2つ目は、「他者貢献」です。自分に価値があり、共同体に貢献している時こそ、ありのままの自分でいられるのです。3つ目は、「他者信頼」です。無条件に、「仲間」として受けれいることです。

賞罰教育ではなく、「勇気づけ」こそが重要なのです。
人と人は対等であることから、叱るや褒めるは本来存在しないのです。賞罰は承認への期待と上下の関係性を生むことから、自分自身への関心を強めていきます。これこそが、共同体感覚を欠如されるものでもあります。

しかし、ライフスタイルは変えられます。
ライフスタイルはあくまでもOSであり、変えることが出来るのです。


5.アドラーの考え方まとめ

アドラーの考えの根源は、2つあります。
全ての人間が対等であるということ、誰にも何も支配されないということです。すべての人が「仲間」とみなし、互いに協力し合う世界(理想)を目指すのです。

ありのままでいる価値は、コモンセンスであるものの、社会では現実的に理想論として位置づけられています。
なぜならば、現代の社会において、‟生産性”こそが人の優劣を決める最も重要な要素となっているためです。人間が対等であるということは、誰もがどんな状態でも価値があるということです。

難しいと感じるのは、人に合わせている限り、何事も自分で判断しなくて良い状態に陥りいます。つまり、責任がないという状態です。ここからは脱却を図る必要があります。
また、特別であるべきという感覚との向き合い方も重要です。
本来持つ優越感や劣等感はある程度、成長のためには必要となります。生きることは進化することとアドラーは位置付けてもいます。他者との比較が生じさせるのではなく、比較対象は常に自分です。

アドラーの指すありのままは、「生きることで貢献する」ことを指します。
生産性に焦点を当てている場合、家族や近しい人が病気になったとき、「人間としての価値がなくなった」と判断をせざるを得なくなります。
ただ、本当にそのように判断をしているのでしょうか。

それは、「進化⇔劣化」という括りで人間を観ているためです。
「万物は流転する(ヘラクレイトス)」というのが世の常でもあるのです。

何よりも、現実と事実に即し、生きることをアドラーは求めていました。
他者からの視点により評価に依存するのでもなく、期待からの理想に沿うのでもありません。

自己受容は現実を受け入れることから始まります。
自己肯定ではありません。ありもしない理想の自分を受け入れるのではないのです。人間の価値は、ここに今「ある(存在する)」ことなのですから。


アドラー心理学は、個人心理学として最も実践が困難であるともされています。抽象化せず、あらゆる条件を加味して、考察をする具体的な学問でもあり、脳が最も得意とするタイプ分けをしないためです。
再びきた、アドラーでしたが、以前よりも少し深く考察をできた気がしています。しかし、まとめていて、僕の中にこびり付いている様々なフィルターがあることにも気が付きました。

僕の最大の弱点は、見切りをつけること。
トライ&エラーはするが、エラーの場合、即変化を生み、継続性を持たせられていないことなのかもしれません。トライはし続けるが、ヒトへの期待を持たないことも最近わかってきました。

悩ましいこの頃です。

今日も学んだー!!!

ではでは、今日もワクワクするような最高の笑顔で、いってらっしゃい!!
acty home
講内 源太

医療・介護における患者体験を変えることで、一人ひとりにとって最良のサービス提供が行えるように、日々学び続けています。
『一社)PX研究会』に、是非、一度お立ち寄りください。

#ビジネス本
#まとめ
#アドラー心理学
#心理学
#本が好き
#note初心者

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?