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映画「コットンテール」感想

あらすじと概要
 リリー・フランキー演じる妻を亡くした男の家族再生を描いた日英合作映画。
 兼三郎は妻・明子の葬式でしばらく疎遠となっていた一人息子の慧(トシ)とその妻さつき、孫のエミに久しぶりに会う。酒に酔い、だらしない態度をとる喪主の兼三郎に、トシは苛立ちつつも気にかけていた。開封された明子の遺言状には、明子が子どもの頃に好きだった「ピーターラビット」の発祥地であり、夫婦で行きたいと思っていたイギリスのウィンダミア湖に散骨して欲しいという内容が描かれていた。兼三郎とトシ一家は、明子の願いをかなえるため、イギリス北部の湖水地方にあるウィンダミア湖へ旅立つ。兼三郎役のリリーのほか、錦戸亮、木村多江、高梨臨らが顔をそろえる。
 監督・脚本は、英国アカデミー賞US学生映画賞とヨーロッパ人として初めて学生エミー賞をドラマ部門で受賞したパトリック・ディキンソン。

映画com引用
公開中 2024年3月現在


 今回はリリーさんの哀愁漂う姿に惹きつけられました。無骨で自分本位で、どうにか妻の願いを叶えようと息子に不器用な態度をとってしまう姿がもどかしくてたまらなかった。「一生のお願い」よりも「最期のお願い」という言葉がなによりも執拗な行動をさせた原因になってしまったのでしょうね。
 夫婦や家族がいれば、誰もが経験する大切な人との病気と別離。妻に対する優しい言葉遣いや労る介護が、苦しくて切ない。うまく対応できなかったことで、息子に対する嫉妬めいた思いを抱いてしまう感情もなんとなく察せられる。
 錦戸亮さん演じる息子の目と母(妻)の目が同じに見えました。父(夫)を責めるような、願い乞うような視線。そして、木村多江さん演じる明子の表情と幼い声が悲痛で涙しました。とても好きな女優さんです。
 兼三郎が1人のとき、目的のウィンダミア湖までの道中に出会って助けてもらったイギリス人の父と娘の親子も、とてもいい味出してるなぁと。他人だからこそ話せることもあるし、親切や言葉も素直に聞くことができる。最後の告白は私にとっては意外で、だからこそ心に刺さりました。

 物語は静かで浮き沈みは大きくないけれど、イギリスの風光明媚な自然風景は美しく、沁沁と心があたたかくなりました。良作です。

2024年3月25日㈪ 鑑賞 幻ノ月音


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