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日本の場合、電気自動車と電車じゃ比較にならない理由【2/5 本当のエコとは?】

個人消費ベースのエネルギーとインフラの面から見ると、東京はエコだ。

今回はエネルギー回という事で車、原油、電気に絞ってエコに生きることについて、車と発電方法を軸に東京と地方などを引き合いに出しながら何が本当にエコなのか考えてみたいと思う。

<イントロダクション>
プラスチックレジ袋が2020年7月1日に有料化したが、これは環境保全(この場合、脱炭素社会)に直接的な影響をほとんど与えない(前述)。だが、この有料化の流れによって様々なエコアクションが加速していくだろう。具体的にはどんなことが私達にできるのだろう、5回に渡って紹介していく。

<本当のエコとは? 全体目次>
第1回 【イントロダクション】レジ袋有料化の波に乗ってみよう
第2回 【インフラ・エネルギー回】日本の場合、電気自動車と電車じゃ比較にならない理由←<本日>
第3回 【フードロス回】残さず食べるを現実にする3つの方法
第4回 【プラスチック回】プラスチックエコ活動は個人から始めた方がいい3つの理由
第5回 【選別・情報発信回】(テーマ)

東京は、24時間営業店が200m四方に1件は存在し、目まぐるしく流行が入れ替わる消費と飽食の都市と思われがちだが、日本で最も鉄道インフラが整備されており、移動手段の多様性に優れた都市でもある。

車に乗らないというシンプルな選択を実行するために

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参考: 運輸・交通と環境2019版

自家用車は、鉄道と比較すると約7倍のCO2を排出している。自家用車を極力使わない生活が現状では最もエコというデータだが、悲しいことにこれを実現できる都市は日本では東京、大阪、名古屋などの三大都市圏に限られている。

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 参考:平成27年度全国都市交通特性調査結果(速報版)

上記は、三大都市圏では自動車移動が減っており電車、自転車、徒歩移動が増えているのに対して、地方都市は車移動が増えているという内容である。

三大都市圏において車移動が減っている理由は、電車本数の多さが最も主要因だ。また、他線との連結による利便性の改善やシェアサイクルの利用のしやすさ、徒歩でも安全に移動できる専用道路や街灯などのインフラ整備が進んでいることが理由にあるだろう。

なぜ地方は車移動をやめられないのか

地方都市部の車移動が増えているのは、鉄道各社が少子高齢化に伴い赤字の常態化と運転手の担い手不足のため廃線や規模縮小が相次いでいるためだ。都市部とは逆に本数が少ないので電車文化が根付かず、道路整備や店舗もメインの車移動者を優先し、ますます徒歩や自転車では生活しづらくなるという三重苦の現状がある。

車は家族全員が持っていないと生活できないほど大量にあるのだから、Uberなどのライドシェアは地方こそスタートするべきだと私は思う。アメリカでは、新型コロナウイルス感染拡大の影響で大手ライドシェアのウーバーやリフトが、相乗りから病院への搬送や物資輸送に目先を変えている。超高齢国家日本の参考になる事例ではないだろうか。
また、2駅分くらいの小さな周遊圏で無人運転マイクロバスパーソナルモビリティを導入すれば良いのではないかなどと思うが、進んではいても現実的な導入は5年から10年程度先のように感じる。

インフラにおけるエコという観点では、地方は深刻だが、都市部はそれなりに貢献できているのだ。

電気自動車が環境に優しいのは、紛れもない真実だが

では、電動自動車(EV)やディーゼル車、ハイブリットカーではどうだろうか。全ドイツ自動車クラブ(ADAC)がハイデルベルク・エネルギー&環境研究所とともに調査した中に面白いデータがある。この分析結果は、電動自動車(EV)が最もエコだが、そこにはいくつかの諸条件がある事を明らかにされている。1台の車の寿命が尽きるのを15万kmの走行として、下記の3つの要素を合わせて結論づけている。

1.自動車の「製造」と「リサイクル」におけるCO2排出量
2.自動車で使う「燃料の製造」と「電気の製造」におけるCO2排出量
3.自動車の「運転」におけるCO2排出量

・大型車においては、ディーゼル車が最も環境にやさしい。
(ガソリン車から約30%減)
・中型車においては、EVが最もCO2の排出量が低い。
(ガソリン車から約27%減)
・小型車においても、EVが最もCO2の排出量が低い。
(ガソリン車から約8%減)

※ただし、セカンドカーあるいは都市で使用するクルマ(走行量が上記の1/3以下)と想定した場合、EVはガソリン車と比べて最もCO2の排出量が多くなる。

だが、もしEVの充電における電気が100%再生エネルギーで作られた場合は、大中小全ての車でEVが圧倒的にエコである。中型車でガソリン車の1/3程度のCO2排出量に抑える事が可能だ。発電手段が非常に重要なのである。では、日本における発電状況はどうなっているのだろうか。

石炭火力は太陽光発電のなんと24.8倍のCO2排出量。

日本のCO2排出において、エネルギー部門が最も高い比率で実に40.1%を占める。そしてその原因は、化石燃料由来による火力発電だ。

NPO法人環境エネルギー政策調査研究所の資料によると、日本国内における電源は化石燃料(石油・石炭・LNG(液化天然ガス)など)による火力発電が最も多く、全体の年間発電量における約75%。

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(出典)日本全体の電源構成(2019年) 出所:電力調査統計などよりISEP作成

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出典:各種電源別のライフサイクルCO2排出量/電気事業連合会

最もCO2を出す石炭火力と再生エネルギーの代表格、太陽光発電との排出量差はなんと24.8倍という驚きの数値である。

平均家庭の一世帯辺りの月間消費電力量は247.8kwhという調査がある、これを全て石炭火力でまかなっているとすると、ガソリン車で240km程度走行したのと同様のCO2を排出していることになる。全て再生エネルギーになれば月間9.6km走行分まで抑えられるのだから、その差は大きい。だが、全てを再生エネルギーにすることは実際に可能なのだろうか。

再生エネルギーのみの発電企業は日本にはない。しかし、CO2排出量0の未来に繋げるプランなら複数ある

日本で、再生エネルギー100%の企業は存在しない。スマートジャパンによると発電自給率が高い地区は地熱発電が盛んな大分県だが、それでも39%に留まり、それ以外の地区の多くは未だ火力発電が主力だ。

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出展:都道府別の電力自給率千葉大学、環境エネルギー政策研究所

とはいえ、再生エネルギー由来は日に日に増えておりその活動を促進する仕組みも導入され機能している。「グリーン電力証書」と「非化石証書」と「J-クレジット」という3つの証明書システムだ。ザックリ説明すると、再生エネで作られた電気の環境価値(CO2排出の削減など)を権利化し売買するもので、その証書を購入した金額は、再生エネ導入を支える設備や再生エネルギー賦課金などに当てられるため、事実上CO2排出係数はゼロになるというもの。

この仕組みを活用した、いわゆる「100%再生エネの先取り」企業の中でも最もエコで、かつ全国展開している企業は、長野県に本拠地を構えるネクストエナジーアンドリソースのGREENaだろう。同社の「GREENa RE100プラン」は大手電力会社と同等の価格で、非化石証書と合わせてCO2排出ゼロを謳っている。実質的な発電内訳の再生可能エネルギーが50%というのも突出して高い数値だ。そのほか自然電力みんな電力などが、関東では同証書を用いてCO2排出ゼロのプランを持っている。

また、純粋にプランだけで判断するならば大規模水力発電施設を持っている大手電力会社は、水力発電100%のプランを提供している。これは紛れもないCO2排出ゼロのプランである。東京電力エナジーパートナーでは「アクアエナジー100」がこれに該当するが、価格が通常の3割ほど割高な上、賦課金など未来への投資を付与していく仕組みになってはいないため、ただ他の契約者の水力発電分を取っただけなのではないかという論もある。

地方と都市部の再生エネルギー供給の差は今の所それほど大きくはない。北海道を除く本州では、上記のCO2排出量0プランを持った企業が供給可能だ。今後は、発電自給率の可能性の面で地方の方が有利だと言われており、その割合は逆転していくかもしれない。

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