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プラスチックエコ活動は個人から始めた方がいい3つの理由【本当のエコとは?4/5】

レジ袋と同じく原油から出来ているプラスチック。日本がプラスチック大国なのは多くの人が知るところだろう。その廃棄量は891万トン、うち84%はリサイクルされているのだが、海外からの評価は芳しくない。それは化石燃料に変換するサーマルリサイクル方式がメインであるという事と、プラスチックパッケージの消費量が、アメリカに次ぐ世界第二位、3Rの初手のアクションであるリデュース(使用量を減らす)が機能していないからだ。ここには業界の根深い問題が横たわっている。

私は過去9年に渡って食品プラスチック業界に身を置いてきた。その見地も踏まえて、プラスチックリサイクルとリデュースに秘められた問題と、個人からスタートすべきアクションを紹介しよう。

<イントロダクション>
プラスチックレジ袋が2020年7月1日に有料化したが、これは環境保全に直接的な影響をほとんど与えない(前述)。だが、この流れによってエコアクションを加速していくことが有料化した意味なのだ。では、個人目線でどんなエコアクションができるのか?5回に渡って紹介していく


<本当のエコとは? 全体目次>
第1回 【イントロダクション】レジ袋有料化の波に乗ってみよう
第2回 【インフラ・エネルギー回】日本の場合、電気自動車と電車じゃ比較にならない理由
第3回 【フードロス回】残さず食べるを現実にする3つの方法
第4回 【プラスチック回】プラスチックエコ活動は個人から始めた方がいい3つの理由
第5回 【選別・情報発信回】(テーマ)

サーマルリサイクルはコスパ◎、環境負荷△

前述したが、プラスチックで最もリサイクルされている方式は、サーマルリサイクルで実に56%を占める。
次いで、マテリアルリサイクル23%、ケミカルリサイクル4.4%、合計84%。残り16%は焼却8%、埋め立て8%の内訳となっている。では、サーマルリサイクルとはどんなリサイクルなのか?まずそれぞれのリサイクル方式の特徴を説明しよう。

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参考: プラスチック基礎知識2020-プラスチック循環利用協会

・サーマルリサイクルとは…プラスチックを燃やす事で火力発電のエネルギー効率を上げる、いわゆる石油・石炭などの燃料に変換する方式。

・マテリアルリサイクルとは…プラスチックを同一の素材に分類し、それらを同じ素材の別の製品に再利用する方式。

・ケミカルリサイクルとは…化学的な方法で分子にして再び材料や製品にする方式。

サーマルリサイクルは実質化石燃料を効率よく燃やしているだけなので、CO2排出量は、プラスチックを燃やす量に伴い当然ながら増える。

少し古い資料になるが、2010年の東京都清掃一部事務組合の資料によると、約36.7万トン分の追加廃プラ焼却により、19.7万トンの温室効果ガスを余計に排出したことが分かっている。焼却埋立地を延命させ発電量も多く稼げるという埋立減少やコスト減というメリットを優先し、環境配慮はそこそこという方式が最も浸透してしまっているのが現在の日本のプラスチックリサイクルの現状なのだ。

世界的には、サーマルリサイクルは「熱回収」と呼び、リサイクル方式にはカウントしていない。本来は燃焼工程を経ず製品から製品に循環できるマテリアルリサイクルが増えるのが好ましいが、事前の素材分別が必須であり、その精度はまだそれほど高くない。私の知っているプラスチック容器の大手メーカーも主に手作業での分別頼りだった。現在、スーパーマーケット等でよく見る容器回収ボックスは、マテリアルリサイクルの効率化のために配置されたものだ。

本来私達一人一人が細かく分類すれば衣服の資源回収クラスのリサイクルは可能だろう。しかし、ゴミ袋とラップと弁当容器がそれぞれ違う材質である可能性を理解している人はほとんどいないし、メーカーは次々と新素材を開発し、その都度リサイクル区分を覚え直すのはプロでもカタログをめくりながらの作業である。一般家庭に強いるのは困難と言わざるを得ない。

徹底したリスク対策の気遣いが、プラスチックリデュースできない理由

廃棄プラスチックの中で、47.4%はペットボトル、食品トレー、ラップなどの包装容器とコンテナ類で占められている。パッケージ文化は、日本が世界に誇る食の多様さと豊かさを作っているが、海外のスーパーで一般的なのは対面販売と計り売りだ。大きな容器の中に入った穀物、各種調味料、ドライフルーツ、ドリンク。もしくはその場でオーダーを受けて店員が切り売りする精肉、鮮魚である。なぜ日本だけこれほどパッケージが多いのか?

これは、とにかくリスクを削るからである。マクドナルドは世界中に店舗を出しているがアメリカ人が日本店舗に行くと、そのパッケージの多さに驚くと言う。飲み物には必ず蓋があり、倒れないように紙のホルダーがあり、暖かいものと一緒に注文したなら袋は二つになる。さらに、衛生上の理由でストローやマドラー、ソースは必ず一つずつ包装されている。このような細やかな気遣いから増えていくパッケージは日本の随所に見られる。

また、個食もプラスチックパッケージの追い風になっている。スーパーでは大抵同じ商品なのにサイズの違うパックが少なくとも二つ並んでいる。一人向け、二人向け、ファミリー向け、ジャンボパックと四つ、五つ並んでいる同一商品も決して珍しくはないだろう。この細やかな量目サービスが一般化し、店舗も物流設計も初めからこの複数サイズのパック展開を意図して作られているので、変えるには大掛かりな改定が必要だろう。そして、こうした気遣いのない製品や店はクレームの対象となる。それが日本なのだ。

ノンパッケージカルチャーを選択肢に加える

では、個人として生活の中でこの量を減らすことはできないのだろうか。

エコバッグとマイボトルを常に持ち歩き、スーパーでの買い物を減らし、街の八百屋、肉屋で買うのを増やすことは私達にもできる。実はこういった昔ながらの専門店は余計な包装資材をあまり使わない。家の周りに多くはないし、価格的な問題もあるかもしれないが、街の専門店も頑張っている。まずは覗いてみることから始めてみよう。

つい最近までコンビニでは「レジ袋はいらない」という選択肢がなく、当たり前に無料で袋をもらっていたように「パッケージはいらない」を選べない市場は徐々に時代遅れになっていくだろう。レジ袋有料化で、要らない物をもらわない爽快感を感じている人は少なからずいる。昨今、やっと過剰包装も問題になるようになった。前述した気遣いと包装を簡素化する選択肢が秤にかけられる国になりつつあるのだ。

そんな時代なら、サステナビリティやエコフレンドリーを背景に昔ながらの専門店に回帰することは、新たな幸福の扉を開くことに繋がるかもしれない。

下記のサイト様で、全国の量り売り店をまとめているので参考にしてみるといいだろう。

プラスチックリサイクルに関して、個人ができることが今は少ないかもしれない。それでも「地球のために良いことを選び続ける」ことは、オーバープラスチックを減らすことに繋がるだろう。店側にとってコスト面でも作業面でも少ない方が良いのだから。



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