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魚の骨が刺さった、二の腕に。殺される、と思った。【煮付かれ Part2】

アスカの家は想像通りだった。ナチュラルな家具が揃っていて、いい匂いがした。テレビの横に綺麗に飾られた家族写真。やっぱりあった、ドライフラワー。ニトリのカタログに飛び込んだ気分だった。
『よっちゃん高知出身でしょ?魚食べたいかな、と思って、カレイの煮付けにした!』
出身地を知られてることも驚いたし、そこカツオのたたきじゃなくてカレイなんだ、ってことにも驚いた。ご飯ができるまで飾られてる写真を見てたけど、家族の写真ばかりで友達との写真が見当たらなかった。一枚の写真のアスカと目が合い、急に鳥肌が立った。

『おまたせ!できたよ!』
綺麗なダイニングテーブルに料理が並んだ。一人暮らしでダイニングテーブルを置いてる家なんて初めて来たかも。カレイの煮付けはとてもいい匂いがして食欲をそそった。炊き立てのご飯はツヤツヤで、インスタント以外の味噌汁を飲むのは入学以来初めてだった。絵に描いたような完璧な女だ。その後もお互いのいろんな話をした。自分のことをこんなに人に話したことは無かったかもしれない。往復560円分以上の満足感を得た私に、それは突然やってきた。

刺さった、というよりは刺された、の方が適切だろうか。突然の事すぎて全く理解ができない。さっきまで一緒に笑ってたのに?え?なに?アスカの手にはカレイの骨。骨の先には私の二の腕があった。痛い。痛いより驚きが勝って心臓のBPMは152をとうに超えていた。

『よっちゃんてさ、うちのこと嫌いだよね?』
全く理解ができない、とは言い切れない。たぶん私はアスカを好きではなかった、2人で話すまでは。だがさっきまでは、ため息を吐きながら考えた思ってもない期待が本当に実現するのでは?と心のどこかで思っていたのに。なのに私の二の腕には骨が刺さっていた。
『うち、わかるんだよね、そーゆーの。わかるし、めちゃくちゃ嫌いなの。仲良いフリ、みたいな、自分見てるようでさ。よっちゃんは違うと思ったのにな。』
なにを言われているのかさっぱりわからなかった。わからなかったし、目つきも口調も別人すぎて、とてもさっきまでのアスカと同じ人だとは思えなかった。

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Part2は以上です!

この記事は前記事【煮付かれPart1】の続きです!
はじめましての方は下記リンク初回記事から!

https://note.com/genkinamaigo/n/n9922fad22a02

それではPart3もお楽しみに!


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