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「みんなのレオ・レオーニ展」を観てアートとデザインを考察する

どうも、工藤@ゆめみ取締役です。

絵本のスイミー、ねずみのフレデリックで有名なレオ・レオーニ展を見てきました。実はそんなに絵本は詳しくなかったのですが、色彩のセンスが絶望的なので、まずは絵本から入ってみるのはいいかもな。という安直な発想で行ってきました。
実際に行ってみたら想像を超えて凄まじかったので、すごい所をいくつかまとめました。感想文なので、とにかく書き殴りました。

①絵本の絵を作る技法

水彩画だけではなく、コラージュやマーブリング、スタンピングといった様々な手法を使い分けて表現されていました。石は石らしい質感を再現するための技法、池は池らしく、草は草らしく。細かい質感にリアリティを探求するこだわりを感じました。また、原画と絵本版ではこのディティールに大きな違いが見られ、原画を目の前で見ることができたのは大きなインプットとなりました。

②色彩感覚

前述の通り、ぼくは色彩センスが全くないので感想の語彙力がないのですが、よくわかんないけどすごい。組み合わせとか、そのページの全体を占めるバランスとか、ページをめくったときの変化とかがすごい(語彙もすごい)。絵本ならではのページめくりによって情緒を動かしていくというもの一つの技法であるなと、良い気づきが得られました。


③抽象化、デフォルメ化

特に「あおくんときいろちゃん」なんかは、「色」そのものを人格化した作品ですが、物事の意味や性質を、抽象的に・かつシンプルに捉えるという感覚がすごい。
ほかにもねずみやカエルといった小動物がモチーフになりやすいのですが、小さいもの、等身の低いものほどデフォルメは難しい。子ども・もしくは不特定多数の大衆一般が認識できるレベルまで情報を最大公約数化させている、というのはすごい力だなと思いました。


④込められたテーマ・メッセージ

レオーニはオランダ生まれのユダヤ系の家系でした。家柄上、元々芸術に触れる機会の多い幼少期だったと知りましたが、作品それぞれから、アーティストとしてのアイデンティティや、人種差別や迫害を受けた背景からの平和・反戦への強い願いと渇望、人類や社会の多様性の主張、、そして突き詰めると、アーティストという人格を超えた、個の存在そのものへの問い、などを感じました。
これは、こどもの頃には絶対に気づけなかっただろうなと、思います。

■ここからはちょいネタバレ含むので注意。レオーニ展を観て、自分なりにアートとデザインの切り口で考察します。

事前知識なしで行ってみて初めて知った、そして急に得た感覚だったので、より凄まじさを感じた。レオーニの凄さや、絵本とクライアントワークの共通点やレオーニ自身、そしてアートとデザインについて考えを深めるきっかけとなりました。

まず、ぼくはレオーニを絵本作家としてしか認知してなかったんですが、1939年にオランダからアメリカに亡命してからは、製造系メーカーのクリエイティブを手掛ける広告会社のアートディレクターを務めていたという経歴があったのです。タイポグラフィや、持ち前の色彩感覚から繰り出されるデザインを広告デザインに活かして仕事を成していたのですが、まさに当時のモダンを醸し出しててめちゃくちゃクールだった。(ググっても出てこないのが残念ですが、特にあの電気計算機のクリエイティブとかすごかった

そして1970年代、「平行植物」というシリーズでの作品をいくつか残しているが、ここでは作風が一気に変わる。ダークファンタジーやSFの世界に出てくるような、架空の植物達を描いたり造形したりしている。
確かに後期の絵本作品に関しても、カタツムリや森の描写が明らかにリアリスムのアプローチを感じるくらいだった。
あの優しい絵本のみの事前知識でこの平行植物シリーズをみたので、ぼくはギョッとしました。人格が崩壊(もしくは70年代特有のサイケにノったか)とも捉えられるが、自分なりには、ここで何か一つが完成したようにも見える。

それはどういうことかというと、絵本に出てくる愛くるしいデフォルメ小動物にしても、世界に存在しない空想上の植物を描くにしても、「観察・洞察」「想像・妄想」を同居させて自己表現しているということでは共通しているのではないだろうか。そしてレオーニはその能力を、絵本といった作品だけでなく広告デザイン、そして前衛的な創造活動にも活かしていたということではないだろうか。
ある特徴をうまくつかみ、それをデフォルメ化する。既知既存の機能から、機能性とそのアフォーダンスを残して、全く別の見せ方に変化させる
ここに、デザインとアートの接合点があるのではないか?と思わせるような、大変有意義な展示会でした。

ちなみに最後に、この美術館が保有するゴッホのひまわりを観覧することができます。ベンチに腰掛けて5分くらい観察しましたが、何か温かいエネルギーを感じました。

みんなのレオ・レオーニ展、東京での展示は西新宿の損保ジャパン日本興亜美術館「東郷青児記念」で2019年9月29日まで。これはおすすめでした。

◆みんなのレオ・レオーニ展
https://www.asahi.com/event/leolionni/
◆損保ジャパン日本興亜美術館のお知らせサイト
https://www.sjnk-museum.org/program/current/5876.html

サポートありがとうございます。 インプットと実践を通して、自分なりの知見や仮説を書いていきます。皆さんの何かきっかけになれば嬉しいです。