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【特別連載】noteと共に振り返るマイスター合格への道2021 -Ⅳ-

ヘッダーのカウントダウン/航(書道アーティスト)
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 おはようございます。副音声note4日目です。そしてドイツパン修行録は本日をもって1周年を迎えました。どうもありがとうございます。2020年12月17日に「まえがき」で投稿を開始して以来、ペースを守って1年間連載を続けられました。その中でドイツパン修行録を見付けて下さった皆様への感謝は忘れず、もう少し息長くやっていきたいと思いますのでどうぞよろしくお願いします。なお、リアルタイムサクセスストーリーは継続中です


 4日目の今日は、満を持しての登場になります6月27日更新の「身の程知らず」を振り返ります。1つ目のマイスター試験、製パン分野の筆記試験と実技試験の直後の投稿です。
 余談ですが「身の程知らず」という今回のタイトル、昨日振り返りました「四の五の言わず」と完全に韻を踏んでいます。意味や思惑の有無はご想像にお任せします。

 まず始めにひとつ釈明させていただきます。
 つい先ほど「ペースを守って1年間連載を続けられました」と書いたばかりですが、「身の程知らず」公開までおよそ1カ月休載していました(その間の様子は「*23.5 結果報告と六月の回想」というイレギュラーな形で書き残してあります)。

 理由は試験なんですが、試験まで残り3週間となった日の授業中に激烈な焦りを感じまして、休み時間に大慌てでnoteに休載のお手紙を投稿しました。あの日の焦りも鮮明に蘇ります。


 この回は本当に試験前日から試験中にのみフォーカスを当てて書かれています。そして試験を前にして鼻息を荒げている様子は剣闘士に見立てて描かれています。

まるでコロッセオのアリーナに立ち命を懸けた闘いを前にした古代ローマの剣闘士の如くに私は鼻息を荒げていた。

 そして景気付けにエナジードリンクを飲み干した平たい顔の剣闘士は、剣の代わりにボールペンを携え試験場へと向かった。

顔の平たい剣闘士は手に持ったボールペンを振り回し、襲い来る猛獣を次々と打ち倒していった。

 これ、コロッセオのシステムに則ってペンを剣に見立てたり、問題を猛獣に見立ててみたり、古代ローマというワードから平たい顔に繋げて見たりとドヤ顔を疑われそうなほどしつこく比喩しているんですけど、試験前日から当日の朝にかけての高揚感は、本当に命を懸けた闘いに臨む様な感覚があって、落ちたら人生の全てが終わるような気がしてしまっていたんですね。文章用の比喩と言うよりもっと実際的でした。

 それでも戦いを終え帰路に着いた剣闘士の手には確かな手応えが残っていた。その時点で結果こそ分かっていなかったものの、その手応えを得られただけでも三ヶ月を、それこそ駆け馬の如く走り抜けた自分の肩を、私は漸く叩いてやることが出来た。

 マイスター試験は製パンの筆記、実技、それから教育者適性と経営学の4部構成で、やっぱり自分にとって製パン部門が一番のメインだったんですけど、それから怒涛の展開が先週まで続いていたおかげで筆記試験後に感じていた手応えはもう忘れてしまいました。書き残しておいて良かった。


 筆記試験から数日後に実技試験がありました。こっちの達成感とかその時感じていた万感は全て憶えています。筆記試験と違って、試験後に自分の目で学んできた成果を確認できたからでしょうね。
 しかし読んでいたら本当に当時の心境とか周囲の状況とか思い出して良くも悪くも胸が熱くなります。実技試験本番でパン生地にサワー種入れるの忘れて作り直してましたからね。間に合ったから良かったものの本当に本番に弱い(過去技能五輪に大工として参加した際も漏れなく本番の弱さを発揮)。

 実は先週に一度学校で実技試験本番を想定した通しの練習が行われていたのだが、その時の私は本当に散々であった。時間に追わればたばたと作業し当然それぞれの製品の質も悪く、周囲を見渡せば淡々と綺麗に作業を熟すクラスメート。二日間とも家に帰るなり私は肩を落としていた。そしてマイスター挑戦を掲げたあの日の自分がいかに身の程知らずであったのかを思い知らされ、そんな私の挑戦がいかに無謀であったかを考えさせられていたのである。弱気になるのは良くないと思いながら、そこから自信を持つ方法が一向に分からなかったのである。また気負わずに考え過ぎない方法も見当たらなかったのである。

 少し長めの引用になりましたが、キーポイントです。試験1週間前に本番さながらの練習が行われたのですが、その時は時間内に完成させる事すら出来ず、パン生地にイーストを入れるのも忘れていて、上で引用している文章の通りこの世の終わりくらい肩を落として絶望していました。タイトルの「身の程知らず」もまさにこの時の感情です。「自分なんかがマイスターなんて100年早かったんだ」とアニメのセリフの様な事を本気で考えていました。思い出すと震えます。

これまでの練習の積み重ねを、二日間で計十三時間という制限時間内で発揮できるかどうかに全てを掛ける事に決めていた。結果は二の次に、兎に角自分の出来る限りの事を時間内でやり切る事だけに力を注いだ。

 でも本番ではちゃんと気持ちに整理を付けて切り替えられていたようですね。

結局、ライ麦ベースの生地に味噌と白米を練り込み「REISe-Brot(ライゼブロート)」などと、我が試験の主題である「旅/Reise(ライゼ)」と「米/Reis(ライス)」を掛けた名前を付けて、ドイツ食と日本食の融合などと御機嫌に謳ってみた。

 試験課題だったオリジナルレシピ、試験当日まで学校でも家でもひたすら試行錯誤してました。マンネリを極端に嫌う性格なのか、本番になっていきなりそれまでやった事ないような一手間を成形に加えて思い通りの焼き上がりにならなかったのも今となっては良い思い出です。
 「Reise/旅」と「Reis/米」を掛けたのも然る事ながら、試験の為にドイツ語で書いたオリジナルパンの紹介文もめちゃくちゃ上手く(巧く)書けたと満足していたら、同居人からちゃんと文章的にべた褒めされました。


 斯くして二日に渡って行われた実技試験を終えた私の胸に宿ったのは達成感と満足感であり、これは私自身も予想だにしていなかった報酬であった。

 大きな懸念を孕んでいたケーキ類も折り込み生地類も、計十三時間の制限時間内で無事に形に仕上げられたのは、これまでの私を見て来た私自身が一番驚いた。

審査員が駄目と思えば幾ら私の満足感や達成感があろうとも不合格なのだが、そんな事はどうでもいいと思える程、自分の力を余す事無く出し切れたと感じる試験であった。

 人生の内でもうなかなか味わえないだろうという興奮と感動でした。実際に「身の程知らず」であったのは確かですが、1週間前の絶望が良いフリになったので終わり良ければ、ですね。満を持しての試験回だったので色々と書く事があると思っていたんですが、記憶の中の興奮と感動の比率が大きすぎてかなり粗くなってしまいました。是非、「*23.5 結果報告と六月の回想」を読んでみて下さい。先生からむちゃくちゃ褒められてます。


【クリスマスの物語、小説作品特別公開まであと7日】

#振り返りnote #副音声note  


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