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SmartHR 1人目のデータアナリストが過ごした1年間

はじめまして、SmartHRという会社でデータ分析をしている原(@genbo_00)といいます。

社内で1人目のデータアナリストとして入社し今月で早1年ということで、遅れに遅れた入社エントリーに加えて、この1年間やってきたことをお伝えできればと思います。

この記事では、
・前半:入社エントリー & 分析機能確立のために取りかかったこと
・後半:チームとしておこなった具体的な業務
の話をします。
組織的な取り組みについては、同チームの清水さん(@katz)の記事「SaaS企業で事業成長の推進を担うデータマーケティングチームを立ち上げた話」をご覧ください!

■自己紹介

新卒でDeNAに入社し、ショッピングモール事業で新規営業,コンサルティングを数年担当。
組織全体でSFA,BIを導入するタイミングで営業企画に異動し、Salesforce,Tableauの導入・営業現場での活用推進を担当しました。

その後、社内横断の分析部署へ異動。
リサーチの専門部署でスマホゲームの市場規模推定や、アンケート,ユーザーインタビューの設計~分析を担当した後に、ログデータの分析を兼任。
調査とログ分析を跨いで、ユーザー行動分析,イベント分析や、新規タイトル立ち上げ時の分析環境構築,事業計画作成などをやってました。

SmartHRには2020年4月に入社し、今月でちょうど1年になります。
入社当初はマーケティンググループ直下の所属でしたが、現在はデータマーケティングユニット(2020年10月に新設)に所属しています。

■SmartHRに入社した理由

・これまでの経験をうまく掛け合わせられる場所がないかなと思っていた。自分が経験してきた、toB事業の営業・toC事業のデータアナリストというキャリアは一見真逆のように見えます。
ただ、上記の裏返しで、この経験を併せ持っている人はあまりいないし、掛け合わせが活きる場所を見つけられれば大きな価値を出せるのでは?とも考えていました。
SmartHRはBtoBの事業であり、MA,SFA,BIなどのツールは一通り整備されつつも、蓄積されたデータを活かすのはこれからというフェーズだったため、上記2つの経験を活かし、点と点をつなげて線にできる場所として理想的かもしれないと考えました。

・提供価値,ミッションに自らが強く共感できる場所。
SmartHRは「社会の非合理を、ハックする。」というミッションを掲げ、とくに課題が多い「労働」にまつわる分野で複雑でアナログな人事労務をシンプルにするサービスを届けてきました。
自身もこれまでの経験から、新たな価値を0→1で作るよりも、非,不,未の解消の方が価値を出せるという感覚があり、ミッションへの共感が強かったため入社を決めました。

・立ち上げフェーズへの魅力
前職の分析組織は、アナリスト全員のスキル,経験値が非常に高く、事業部からの信頼も厚い部署でした。
一方でSmartHRには、「データアナリスト」という職種がこれまで存在せず、「どんな価値を出すか」「何にフォーカスするのか」をすべて自分主導で決めなければいけない(=決められる)状態でした。
自分としてはこの点が非常に魅力的に映り、最終的に入社を決めました。

■入社してからやったこと(概要)

【1~2ヶ月】
・ドメイン知識,事業内容,KPI構造のキャッチアップ
・業務を通じた「データアナリスト」のイメージ擦り合せ

人事労務,SaaS共に未経験だったので、まずは業界とプロダクト,KPI構造について理解するところからスタートしました。
なお、この間は緊急事態宣言真っ只中。
リモートワークでの入社となり若干の不安はありましたが、人事の皆さんが万全の受け入れ体制を整えてくれ、全くの杞憂に終わりました。(詳細は以下noteを参照ください)
オリエンテーションも非常にわかりやすく、ドメイン,事業内容,KPI構造をスムーズに理解することが出来ました。ありがとうございました!

また、実務面においても、グループ内で「データアナリストが入社したらお願いしたいこと」をリストアップしてくれていたので、それをベースにヒアリングし、着手コスト低 × 事業インパクトがありそうなもの(=スモール・サクセスが見込めそうなもの)から順に取り掛かることができました。
 まずは既存のデータ関連業務を巻取り、個々のタスクについて期待値を確実に超えることを意識し、SmartHRにおける「データアナリスト」は何をする人なのか、その業務イメージ,提供価値を擦り合わせることに意識的に時間を使ったという感じです。

【3~6ヶ月】
 ・基礎集計・可視化をガガッと
・分析機能としての半期のミッション策定
(初の出社:6月)

SmartHRには、データアナリストという専門職こそありませんでしたが、プロダクトの利用データについてはLookerで可視化できている状態でした。
一方で、マーケティングやSales領域においては、Lookerは導入途中段階。

このタイミングでのLooker切り替えも検討しましたが、短期的なレポーティングのしやすさや、業務プロセス上で滑らかにデータを見られる点を優先し、一旦はGoogleデータポータルやSalesforceでの可視化,集計を進めました。(Lookerへの移行は順次進めていきます!)

また、足元のデータ可視化,分析を行いつつ、データ分析機能としての中期方針も定めました。2020年7月に掲げた半年方針はこんな感じです。

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まずはデータ関連業務を集約し改善,効率化して返すことで、継続的かつ広範囲に影響をもたらすようなレバレッジが効いたアウトプットを出すことを優先的に考えています。

※「データの民主化」という思想に則り、基本的な分析は施策担当者が出来るように支援するという方向性もありますが、ひとまずデータ関連業務をまとめ、出来るタイミング,部分から民主化していく ことが全体最適かつ持続的なデータ活用につながると考えました。

もちろん、既存業務の巻取りだけでなく、潜在課題の定義→分析設計→示唆出しもアナリストに求められる価値なので、そこは併行して進める感じです。

【7~12ヶ月】
・攻めの分析を強化
データマーケティングユニットを新設し2名体制に(10月)

レポーティングフォーマットは大方定め、最低限のメンテナンスで回るようになったため、能動的に課題を拾って分析テーマに仕立てる動きに注力し始めました。
また10月には、社内でデジマをゴリゴリ回していた清水さん (@katz_sk2 )がジョインしてくれ、「データマーケティングユニット※」が正式に発足しました。
リソースが増えたのはもちろん、チーム内で気軽に壁打ち,ディスカッションできる環境になったことで、【課題発見→分析設計→集計→示唆出し,施策提案】の一連のサイクルが、より早く回せるようになりました。

※「ユニット」とは組織単位の呼び名で、チームとほぼ同じ意味です。
マーケティンググループ内の各ユニットについては、弊社岡本が書いているマーケティング組織紹介記事がわかりやすいかと思います。

また、この頃から、事業計画の敲き台作成や、マーケ~インサイドセールス~セールス全体での注力領域検討など、中長期のテーマについて、意思決定材料提供に取り組み始めました。

以上、ざっくりとですが、1年間の動きについて時間軸と業務内容の推移を表すと以下イメージになります。

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■入社してからやったこと(具体的な業務)

※2020年10月からはデータマーケティングユニットを新設し2名体制になったので、個人に限らずユニットで取り組んだ内容をいくつか紹介します。

市場のカバレッジ状況可視化
社内データとサードパーティーデータを組み合わせて、市場に対してのリード保有率,商談保有率を可視化し、エリア・業界単位での浸透状況を詳細にモニタリング出来る環境を作りました。
このデータと過去実績を突き合わせて、セグメント毎のポテンシャル比較等をより細かい粒度で行い、Biz組織(=導入までをゴールとする組織)への注力領域提案などを行っています。


KPI間の数理モデル化
マーケティンググループ各ユニットの施策がどのようなKPIに影響し、KGIにつながるのかを明らかにして、リソース配分最適化や注力ポイントを明確にするべく、KPI間の数理モデル構築に着手しました。
難易度が高い領域でまだまだ道半ばではありますが、指名検索数増加がリード獲得に与える影響など、一定の示唆出しは出来つつある状態です。
最終的には、以下図で定義している各ユニットの連動を定量的に示し、数値根拠に基づいた全体最適なアクションが取れるよう、グループを支援していきたいと考えています。

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新規リードの獲得シミュレーション,予算策定の支援
前述したカバレッジデータや、社内に蓄積されたマーケティング,営業活動の実績データを時系列で分析することで、今後のリード獲得ペースの予測や、事業計画策定の材料作成などを担当しています。

マスマーケティングに向けた市場調査とデータベース構築
今年は地方都市で初のTVCMを実施したので、メッセージング検討のための事前調査を設計し、施策担当者と解釈を擦り合せながら方針を定めました。
また、定期的に行っている認知率調査の結果を集約しデータベース化することで、グレーブヤードモデルに則った時系列×地域別でのブランドポジションニング分析の土台を構築しました。

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toC事業とtoB事業の分析アプローチの違い
自分がスマホゲームの分析をしていた時は、分析データとしてはゲーム内ログが8割以上を占め、仮説出しやログ分析補強に市場データを使うというのが主なアプローチでした。

一方SmartHRでは、集約されたビッグデータを深掘るというよりは、
①課題や目的に基づいて、意思決定のために必要な情報を設計する
②社内外問わずデータを取得し、分析可能な形に前処理
 
※相談のうえ、データ取得のために営業オペレーションを一部変更してもらうこともあります。
③それらのデータをつなぎ合わせて、意思決定の支援材料を紡いでいく
というアプローチが主になる印象です。

あくまで経験論なので当てはまらないケースはあると思いますが、toB事業はtoC事業と比べデータ量が少ない代わりに、多種多様なデータソースを跨いで示唆を導き出す「パッチワーク」的な動きが求められると感じており、そこに好奇心を持てる人にとっては非常に魅力的な環境だと思っています。

■これからやっていきたいこと

分析を広げる,深める(+高度化する)
データアナリストが日々の業務で事業貢献度を高めていくには、大きく分けて
分析領域(解決できる課題範囲)を広げる
施策提案,実行支援まで入り込む(深める)
という2つの取り組みが必要になります。

「広げる」
SmartHRのBiz組織は、SaaSでお馴染みの「THE MODEL」というスキームに則りグループを分け、効率的かつ精度の高い営業プロセスを構築しています。
一方で、市場が成熟してきた現在は、グループを超えたコラボレーションの必要性も増してきており、分析機能においてもマーケ範囲(MQL獲得や商談化)だけでなく、受注やMRR最大化も対象に含めた、Biz領域全体に貢献できるようなアウトプットが求められます。

BtoB事業の難しくも面白いところは、受注までに人と人のやりとりが介在するという点なので、インサイドセールス・セールスなど、お客様と直接コミュニケーションを取っているグループと深く関わりながら、各ファネルで筋の良い仮説を立てて検証していく動きが重要になってきます。


「深める」
= 数値の可視化,データ整理にとどまらない、施策提案,実行支援まで入り込んだ動きの徹底。
一般的に、データ分析の手順は以下のように分けられます。

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データアナリストとしては、0.課題定義~9.実施と検証 までを一貫して行い、組織の意思決定,行動変化につながるアウトプットを常に提供するべきですが、実際問題として日々の業務の中では、
・抽出,集計のみの作業
・工数不足や、分析者の課題理解が足りず、施策提案まで踏み込めないケース

などが発生します。

分析組織がアウトプット効率を高めていくためには、①,②を減らすことが必要で
・【抽出,集計のみの作業
  →集計マニュアル整備,勉強会実施などによる施策担当者への権限移譲
  (Looker導入によるデータガバナンス強化も含む)
・【施策提案まで踏み込めないケース
  →【事業ドメイン,自社課題の深い理解 → 日々のアウトプットを通じた信頼獲得→意思決定者との密なコミュニケーション】  という循環を回す
ことを重視し、取り組みをいっそう強化していきたいと思っています。
※具体的な取り組みは @katzの記事 で紹介しています!

「高度化する」
また、上記に取り組むにあたって、高度な分析手法が求められる場面も出て来ます。
ログ,トランザクションデータ分析はもちろんですが、プロセスマイニングや、機械学習を用いたリードスコアリング,セールストーク分析など、手法の高度化によって事業貢献できる領域は多々あると思っています。
分析を高度化すること自体は目的となりませんが、課題解決手法の引き出しを増やすということは、チームとしても取り組んでいきたいトピックです。

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※このnoteを機にTwitterも始めました!(@genbo_00)






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