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小説 SF・ホラー・恋愛

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玄が書く小説や物語を置いています。書き溜めたものを随時アップします。最後まで無料で読むことが出来ます。投げ銭形式です。
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記事一覧

Mr.Rain

Mr.Rain

長崎という街は雨が多い年間を通して3日に一回は降る。

港町の高台にはいつも霞がかかっていた。

オランダ坂の石畳が雨に濡れてロマンチックだなんて旅行者ぐらいしか思わない。

俺はそんな雨の街で生まれた。

それも6月、一番雨の多い月だ

一週間降り続けることもよくあった

生まれた日も雨

入学式も雨

卒業式も雨

大事なデートも雨

入社式も雨

結婚式も雨

新婚旅行も雨

野外イベントも

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「清洲城を守る鬼」

「清洲城を守る鬼」

「鬼ころし」という日本酒がある。以前、ブログ記事を毎日書くという懸賞にあたり鬼にまつわるブログ小説を毎日書くことにした。懸賞の景品は180CCの鬼ころし紙パック30個(一か月分)でした。それから鬼にまつわる話が大好きになって沢山書き始めたんです。
その第一回目が超短篇のブログ読み物でした。ちょっとしたCM動画になりそうなお話です。(このお話はフィクションです)

「清洲城を守る鬼」        

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七夕物語

           原作:古い中国のお話  脚色・脚本:森下進
はるかはるか昔のこと。
空の彼方にぽっかりと浮かぶ天空の国がありました。
時を司る天空の国の王は宇宙神(そらがみ)
宇宙神には、それはそれは美しいひとり娘がいました。
王女の名前は織姫と言いました。
宇宙神は遥か昔に妻を亡くしてしまいした。
妻の面影を宿す、美しく賢い織姫を心から可愛がっていました。

そんな織姫にはとても重要な任務

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般若ハンター

般若ハンター

「温羅(うら)一族」

鬼ノ山城は大和朝廷の兵で取り囲まれていた。
吉備の冠者(きびのかじゃ)と民衆に親しまれた温羅
吉備の国に製鉄技術と製塩技術を伝えた温羅
勇敢で身の丈2メートルを越す巨漢の温羅
燃えるような赤い髪 薄い色の瞳で南方系の顔を持っていた温羅
頭もよく気さくで笑顔が爽やかな大男それが温羅

 大和朝廷は事実と180度違う嘘でかため、温羅を民を苦しめる鬼に仕立てた
製鉄技術と吉備の山

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般若ハンター

悪 夢

梓は草原に仰向けになり、穏やかな空を見上げていた。瑞々しい若葉の匂いのする空気を、胸いっぱいに吸った。形の良い乳房が大きく膨らみ、どこか誇らしげに見える。新也から貰った金色のネックレスが、丘の上から谷間に滑り落ち涼やかで小さな音を立てた。梓は懐かしい安曇野「癒しびとの里」にいた。

その時だった空の一角が大きく裂け、轟音ともに赤い激流にも似た炎がなだれ込んできた。続いてミサイルらしき高速

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般若ハンター

絶体絶命
ここは桜の紋所、警視庁本部庁舎、正面に皇居を見据え、右手には国会議事堂を望む。いまや般若ハンターとなった捜査一課の橋本泰三にとっては、敵の腹の中にいるようなものである。なんとも居心地が悪い。最近、署内の雰囲気が変わったような気がする。それとも泰三自身が変わってしまったのか?
捜査一課内の刑事の中にも明らかに別人になったと感じる者がいる

五井商事の悠木慧子殺人事件で突然エリート警視正「但

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原子力が大好き!

僕は幼い頃から原子力が大好きだった。
それは手塚治虫のアニメ「アトム」の影響がとても大きかった
原爆によって戦争に負けた日本が、恐ろしい程のエネルギーを手に入れた。
平和な時代を作るロボットヒーローの活躍として描かれたアニメだった。
僕は心躍らせワクワクしてテレビを見たものだ。
将来は科学者になってロボットを作りたいと本気で思った。

毎日のようにテレビや新聞では原子力や最新科学が最高のもの。

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ひまわり(君が好きだよ)

ひまわり(君が好きだよ)

僕は電車を降りるとメールを送る。
「駅に着きましたゆっくり歩いて帰ります」
毎日同じ時間に同じメールを送る。
暫くすると「お迎えイクマス」と返ってくる。
なぜか君は「お迎えいきますじゃなく・・イクマス」と打ってくる。

家への道のりはおよそ20分。
最終バスには、いつも乗れない時間だ。
僕は空を見上げながら、ゆっくりと歩く。
すると、いつもの場所でママチャリが猛スピードで走ってくる。

手を振る代

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日本版 ロミオとジュリエット

日本版 ロミオとジュリエット

采女伝説(うねめでんせつ) 原作:郡山地方 口頭伝承 脚本・脚色:玄庵
オリジナルテーマソング:花かつみ
作詞:玄庵 作曲:fusae 演奏:BrownRice(玄米)

時を遡ること千三百年ほど前、陸奥の国(みちのく の くに) 安積の里(あさか の さと)を治める郡司は安積の臣虎麻呂という人物でありました。

虎麻呂には一人娘がおりました、名は春姫。
肌の色はわた雪のように白く、切れ長の黒い瞳

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Moon

九州の美しい海にオレンジ色の夕日が溶けてゆく。そんな情景を見て頭に浮んだ詩。

酒呑童子

酒呑童子

鬼の棲む国 
「酒呑童子」
鬼の語源は「穏」(おん、おぬ)などと言われ、隠れて目に見えぬ物の怪を指すと言われている。鬼とは人の形をした悪鬼、心の闇もまた鬼なり。人に見え鬼の心を持てば即ちそれも鬼なり。

京都府丹後半島の付け根に位置する大江山。ここに遠く離れた朝廷すら恐れるほどの鬼が住んでいたと言われていた。その名は酒呑童子。
大陸の製鉄の文化を取り入れ、武器だけではなく、稲作など先進の技術を持っ

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化けた娘

化けた娘

むかしむかしのことじゃった。いまの栃木県に高原山という、それはそれは美しい山があったそうな。そこは修験者が水を汲み、身を清めた尚仁沢湧水という、神さまの水が滾々と湧き出す聖地があったのじゃ。

 ところがじゃ、ある日塩谷の里に江戸の役人が来て、その聖地に、ゴミをた~んと捨てると言い始めたそうな。庄屋さんの家に集まった高原山と尚仁沢湧水を愛する村の衆は怒ったんだと。返答によっては一揆も辞さないと江戸

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鬼の棲む国 鬼女紅葉伝説

鬼の棲む国甦る鬼女
長野県戸隠村に「紅葉伝説」と言う昔話があります。
紅葉という美しい響きのタイトルですが実は恐ろしい「鬼女伝説」なのです。
時は安和二年、今からおよそ一千年ほど前のことでした。

 万葉集にも名前を連ねる公家「大伴家持」の子孫「伴笹丸」が妻「菊世」との間に子がどうしても授からない。神仏に祈るが叶わず、遂には六天魔王に祈願したところ、それは美しい女の子を授かりました。名を「呉葉」と

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浦島太郎ものがたり

昔々丹後の国に浦島太郎という若者が住んでいました。老いた両親の面倒を良く見る優しい青年でした。浜辺の小さな家に松ノ木が立っています。幼い頃、太郎と一緒に大きくなるのだと父が植えてくれたのでした。
太郎はいつものように「えじまが磯」で漁をしていると大きな亀を釣り上げてしまいます。

太郎:なんと大きな亀だな~おぉぉ可愛い眼をしているな。亀よ、お前は長生きをするものだと聞いておる、ここで命を落とすは悲

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