【お兄ちゃんと弟 ③終章】
お兄ちゃんの問題点は胆嚢に関するものだった。
胆汁が胆管から正常に肝臓に送られていない。このままだと肝硬変を併発してしまう。そうなると救からない。最悪の場合は肝移植しか救かる道はない・・と、そういうことであった。とにかく開腹手術をしなければならないのだという。
弟の退院で少しは希望が見えてきた矢先のことだっただけに、家族のショックは大きかった。
・・・・・・・
2日後、とうとう手術が始まった。我々夫婦は固唾を呑んで結果報告を待つばかりである。
・・・・・・・
未熟児の小さな身体にメスを入れて開腹手術をしなければならないなんて、考えただけでも不憫でならない。
長い時間が経過した・・・重苦しい空気の中、家内のスマホが鳴った。
「もしもしっ❗️どうだった❓️」
〈・・・・・・・〉
「ふんふん・・・」
〈・・・・・〉
「うん❗️あぁそうなの・・・」
果たして長男からの電話の内容は以下のようなものだった、
胆管にゴミのようなものが詰まっていたので、それを綺麗に取り除いた。心配した最悪の状態ではなかったので、肝移植の必要はないという有り難い報告だったのである。
「父さん❗️肝移植しなくていいんだって❗️よかったね❗️よかったね❗️」
「そうか❗️胆管が詰まってたんか❗️よかったなぁ~」
家内と僕は胸を撫で下ろしたのである。
・・・・・・・
過日、退院したお兄ちゃんのほうには、お腹に手術の傷痕こそ残ってはいるけれども、生後3ヶ月を過ぎた2人の赤ちゃんは、現在、長男夫婦の元で健やかに育っている。
先日、お嫁さんから電話があり、お兄ちゃんの肝臓の数値がほぼ正常値になったので、肝臓の薬も飲まなくてよくなったという報告があった。
送られてくる写真を見ると、お兄ちゃんと弟の体格が同等になり、もう健常者と同じくらいに成長している。
一卵性双生児の2人の体格が同じになったので、並んで写っている写真を見ても、どっちがどっちだか判らなくなってきた。
そのことを長男に伝えると・・
「父さん、俺でも間違えることがあるから大丈夫❗️」
と、返事が返ってきた。(結)
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