見出し画像

【似て非なるもの】

〈フランチャイズチェーン〉というシステムは、今や世界中に浸透している。

片や、日本には古くから〈暖簾分け〉という、一見〈フランチャイズ〉とよく似た慣習があるのだが、それらは、実は似て非なるものであると言わなければならない。

そして、日本には〈スーパーマーケット〉や〈ディスカウントストア〉といった、何でも扱う商業形態も無かったのである。

昔の日本はと言えば、例えば〈薬局〉〈煙草屋〉などは同じ地区に固まらないように「認可・許可制度」が敷かれていて、其々の店舗を行政が守っていたのだ。

同時に、〈八百屋〉は〈八百屋〉、〈金物屋〉は〈金物屋〉、〈豆腐屋〉は〈豆腐屋〉というように、市場を分けて共存していた。

ところが、金にものを言わせる、西洋式の商売が幅を利かせるようになってからは、あらゆる業種を1社が扱うという、所謂〈スーパーマーケット〉等が台頭するようになる。当然、個人商店が太刀打ち出来なくなって、商売を諦めなければならなくなった商店も少なくない。

更に追い討ちをかけたのが〈フランチャイズシステム〉の登場であるが、如何にも西洋式だと思わざるを得ないようなシステムになっている。

要するに、極端なところでは同じチェーンのコンビニですら、目と鼻の先に作って双方を苦しめ、ロイヤリティはしっかり取るという、凡そ人情の欠片も無い商法が大手を振って罷り通るという、誠に下品な時代になってしまったということなのである。

翻って〈暖簾分け〉である。〈暖簾分け〉とは、長年奉公してくれた従業員に、屋号と技術・ノウハウを自由に使うことを許して独立させるという慣習であり、成長した子供を、商売仇になるかもしれないことは承知で独立させる訳であり、そこにロイヤリティなどという薄汚い〈決め事〉は無い。

〈フランチャイズ〉と〈暖簾分け〉は、実は、似て非なるものなのである。

他業種の市場を土足で踏み荒らし、同業者を競争させ苦しめて〈しのぎ〉をふんだくる、自分さえ良ければいいという「西洋式商売」と、他業種を尊重し、従業員を我が子のように育て上げる「日本式商売」の、どちらが素晴らしいのかは、較べるまでもない。

日本の〈和の精神文化〉は人を生かし、〈西洋の文化〉は人を支配し搾取するのである。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?