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【お兄ちゃんと弟 ①】

長男のお嫁さんは妊娠中であった。既に2歳の男の子がいるので、今回が2度目の出産ということになる。双子の赤ちゃんで、お腹の中には男の子が2人いる。

予定日まで1ヶ月チョッというある日、長男から電話が入った。

「父さん!今日、検診に行ったらさ、双胎間輸血症候群の疑いがあるんで、急遽、午後から帝王切開で赤ちゃんを出すことになったんだ」

青天の霹靂である。

双胎間輸血症候群という病気は、双子の赤ちゃんに送る血管のバランスが悪くて、血液が片方には流れ過ぎて、もう片方にはあまり流れないという難病で、血液を多く受けるほうの胎児は、高血圧・多尿・羊水過多を合併し、心不全が進む。

片や、血液を少ししか受け取れない胎児は、低血圧・腎不全・尿の減少・羊水過少となり、放っておくと80%の確率で胎児が死亡するという恐ろしい病気なのである。

・・・・・・・

午後から手術に入った。

・・・・・・・

3時間も経った頃だろうか、長男から取り敢えず赤ちゃんは出て来たという電話が入る。お嫁さんとも少しだけ話が出来たという。

手術は無事に終って2人の赤ちゃんは生まれたのだが、お兄ちゃんの方が1700g、弟の方が4000gという状態の赤ちゃんだったのである。

長男から送られてきたスマホの写真を見ると、ミイラのように痩せ細っているお兄ちゃんと、ボンボンに水膨れをした弟が写っていて、それは見るに忍びないものであった。(つづく)


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