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【家族葬と香典】

「ねぇねぇ、お従兄にいちゃんどう思う❓️聞いてくれるぅ❓️」

従妹が憤懣をあらわにそう言った。

聞けば、知り合いの父親が亡くなったという知らせを聞き、遠方だったので香典を郵送したのだそうだ。

実は、今回の葬儀は〈家族葬〉で行うということで、香典も辞退されていたのだが、故人にはお世話にもなったし、自分の父親の時には亡くなられたその方から香典も戴いているということもあったので、敢えて香典を送ったのだという。

ところがである。葬儀が終った日の夜であった。喪主の奥さんから電話が掛かってくる。

「もしもしぃ・・■■さんのお宅でしょうか?●●でございますが・・」

「あっ!はい。■■でございますが・・この度はどうも御愁傷様でございます・・」

「あっ、どうもありがとうございます・・・それでぇ・・せっかく送って戴いた香典の件なんですがぁ・・皆様に辞退して頂いておりますので、受け取れないんですぅ」

「えぇ、私もそのことは承知していたんですが、ウチの父の時にはそちら様から香典を戴いておりますし、生前●●さんには大変お世話になっておりますので、どうぞお受け取り頂きたいんですが・・

「いえいえ、そういう訳にはいかないんです。明日にでも戴いた香典をお送りしますのでよろしくお願いします」

「いえいえ、こっちも一旦お出ししたものを今さら受け取る訳にはいきませんので、どうぞお納め下さい」

「いえいえ、そういう訳にはいきませんので❗️」

すったもんだの押し問答が暫く続いたのだが、先方が頑として送り返すと言って引かないので、従妹は頭にきてしまって、とうとう切れてしまったのだった。

「はいはいっ❗️分かりました❗️どうぞ勝手に送り返して下さい❗️」

・・・・・・・

いくら家族葬で香典を辞退しているからといって、せっかく送ってきた香典をつっ返すとは・・

家族葬と共に香典を辞退することが最近の流行りだとは言え、人間の繋がりをここまで断ち切る風潮なんて、絶対に日本が壊れていくに違いないと思わざるを得ないのである。

・・・・・・・

そんな遣り取りがあった2日も経った頃、現金書留で香典が送り返されてきたという。


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