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【めぐり逢った本】

歴史らしい歴史を習い始めたのが、中学の社会科からだったと思う。

当時の歴史授業では、何時いつ、誰が、何をしたのか、ということを教えていたように思う。

歴史の試験では、正にそれらの記憶を問うような問題が多かったのである。

ところが、年号と人名と物事を、ただ無機質に記憶させられる歴史の授業にはなんの魅力も面白さも感じなかった僕は、歴史の授業が退屈になってしまって、とうとう社会科の授業自体が嫌いになってしまった。

それでも、そんな歴史の授業が好きなヤツもいて、せっせと年号や人名を覚えているのだ。だから単に記憶力のいいヤツがテストでいい点を取っては悦に入っていた。

そんな訳で、全く歴史に興味がなかった僕なのだが、あるとき転機が訪れるのだ。

それは中学で歴史の授業に触れて以来、数十年も経ったある日だった。

僕は運命的なめぐり逢いをする。

その日、出張先での仕事が早く終った僕は、なんとなく本屋に入って行ったのである。

別に読みたい本があった訳ではないのだが、なんの気なく、ある分厚い1冊の本を手に取っていた。

その本は一般教養コーナーの棚に置いてあるにも拘わらず〈漫画〉だった。

ページを開いてみると、〈漫画〉にしてはやたらに文字が書き込まれている。

「戦争」につて真面目に論じられた内容で、幾つかの〈ギャグ漫画〉で一世を風靡した漫画家が描いているものであった。

取り分けて興味を持った訳ではないのだが、出張費に余裕があったので、¥2.000―近いその本を、僕は買ってみることにしたのだ。

さて、読み始めて驚いたことに、今まで聞いてきたような〈戦争の話〉の常識をひっくり返すような内容の〈漫画〉なのだった。

それは歴史の流れに沿って描かれていて、登場人物も血の通った人間として表現されているし、作者なりの斬新な解釈で歴史の真実を追求しているのである。

僕の中の、今までの〈歴史観〉が音をたてて崩れ落ちていくのを感じざるを得なかったのである。「目から鱗が落ちる」とはこのことであった。

〈そうかぁ❗️歴史を勉強するってこういうことなんだ❗️〉

新しい歴史観に目覚めた僕は、遅ればせながら〈歴史〉が好きになってしまったのだ。

爾来、ネット情報をチェックしたり本を噛り読みしたりして、自分なりに真実の歴史を求める日々を送っているつもりなのである。

何時、誰が、何をしたということを知るだけが歴史の勉強ではないはずだ。歴史とは人間の営みの記録であり、人間の喜び・悲しみ・憤り・恨み・陰謀・裏切り・策略・愛・死・出会い・別れなどが大きく渦巻く、壮大なドラマであり交響楽なのだろうと思うのだ。

捏造つくられた歴史よりも、血の通った真実の歴史を知りたいものである。

政治・歴史の話は、例えが適切ではないかもしれないが、週刊誌のゴシップ話の如く「あそこの誰が何をしてこうなってどうなったの❓️」というように、実は興味津々になるものなのかもしれない。

人や年号を憶えるだけの無意味な歴史の勉強なんて、やるだけ無駄だったのである。

〈あの漫画〉の著者の、昨今の変貌の是非は兎も角としても、それによって戦後の自虐史観から解放された僕なのである。だから還暦を過ぎた今でも心から感謝しているのだ。

もしも〈あの漫画〉に出会うことがなかったとしたら・・そう思うとゾッとする。


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