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【のあ君の散歩】

家内と息子と黒ポメラニアンの〈のあ君〉が帰ってきた。〈のあ君〉を散歩に連れて行っていたのだ。

家内が嬉しそうに言った。

「ねぇねぇ父さん!散歩してたらね、雑種犬を散歩させてたおばあちゃんと一緒になってね、まぁ~可愛いワンちゃんですねぇって言われたのよぉ。それでね、もうひとり女の人がやって来てね、クルマから見てたんですよぉ~可愛いですねぇって言われたの。〈のあ〉ってやっぱり可愛いんだね」

息子も続けた。

「で、黒のポメラニアンは珍しいですねって言われたんだよね、母さん!」

「そうそう」

「そりゃ S子ぉ、当ったり前じゃないか❗️〈のあ〉はそんじょそこらの犬とは格が違うわぃ。綺麗な顔しとるし品がある美犬じゃ」

・・・・・・・

〈のあ〉は、実は娘の犬だ。

〈のあ〉と娘との出会いは、友達に付き合ってペットショップに行った時であった。女性店員が、まだ生まれて間もない、黒くて小さな〈のあ〉を抱っこさせてくれたのが最初だった。ペットを飼う気など全く無かった娘なのに、抱っこした瞬間にビビビビッ❗️と母性本能を直撃されてしまったのだ。

本気でペットを買いに来ている友達はそっちのけにして、真っ黒い小さな黒ポメラニアンの赤ちゃんにデレデレになってしまった娘は購入することを決めたのだった。

ところが〈のあ〉は血統書付きの由緒正しい犬だったので、価格が50万円もしたのである。それでも、もう欲しくて欲しくて仕方がない娘は、ローンを組んで購入することにしたのである。

後先を見ずに買い物をする性格は僕によく似ている。

そんな娘の〈のあ〉なのに、色んな他人ひとから褒められる話を聞くと、まるで飼い主のような顔をして悦に入る、厚かましい僕なのであった。


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