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【娘の出産】
臨月の娘に遂に陣痛がきた。
病院に連絡するとオミクロンのクラスターが発生したとのことで、急遽、紹介された別の病院で診て貰うことになった。
直ぐに電話を掛けて状況を説明すると、空振りでもいいから来てみて下さいとのことだ。
家内は午後から仕事に出たので、僕1人で病院に連れて行かなければならない。娘が予め準備していた入院用の荷物をクルマに積み込んで出発した。
午後3時ころに病院の救急通用口に到着する・・暫く待っていると、1人の女性看護師さんが娘を迎えに出てきて下さった。
クルマを駐車場に移動した後、入院用の荷物を抱え、娘を追って3Fの産婦人科に向かう。
3Fに着き、ナースステーション前で看護師さんに荷物を預けたのだが、既に病室に入っているのだろう、娘の姿は見えなかった。看護師さんが言うには、子宮口が3cm開いているとのことで、このまま入院して頂くことになるという。
「僕はどうさせて頂いたらよろしいんですか?」
そう訊ねると、実はこの病院もオミクロンの感染の問題から面会を謝絶しているとのこと・・・
「申し訳ありませんが、お父様にはご自宅で待って頂くようになります。赤ちゃんが生まれたら連絡させて頂きますので・・」
ということなので、後のことをお願いして、僕は仕方なく家に帰ったのである。
・・・・・・・
自宅では、駆け付けてきた娘の夫君と、我々夫婦と息子の4人で出産の連絡を待つことになった。
「父さん●●ちゃんどうなんだろ、陣痛が酷くなってきたのかなぁ?」
家内が心配している。
「そうだよなぁ、病院から帰る時は子宮口が3cm開いてるってことだったけどなぁ・・長くなるのかどうかは分からんよな」
皆んなソワソワとして落ち着かない。
すると夫君のスマホに娘からメールが入った。直ぐに状況を説明してくれた。
「お義父さんお義母さん、今、陣痛室に入ってるみたいですよ。子宮口が5cm開いてるそうです」
「そうなんだ、なんか展開が早いなぁ」
「そうね、しかし陣痛が始まってるのに、●●ちゃん、よくメールなんて打てるわねぇ」
それから 2・30分置きに経過報告の実況メールが入り続ける。
夜10時過ぎ・・・
〈子宮口が8cmになった。陣痛がムチャクチャ厳しくなってきたんでもうソロソロかも・・〉
というメールを最後に娘からの連絡が途絶えたのである。
時刻は11時を回った。
もう分娩室に入ったんじゃなかろうか、とか、分娩室に入ったのは間違いないだろう、とか、赤ちゃんは満ち潮の時に生まれるんだ。今は満ち潮の時間帯だから、ボチボチ生まれるんじゃなかろうか、とか、皆んながそれぞれに心配をした。
時間は12時になろうかとしていた。
「チョッとこっちから電話してみましょうか?」
夫君がそう言った直後に彼のスマホにビデオ通話が入る。
それは娘からだった。
スマホの画面には、生まれたばかりの赤ちゃんを横に寝かせ、少しばかり疲れたような顔をした娘が映っているのだが、元気いっぱいである。
「生まれたよぉ~元気な女の子~」
緊張していた我々の心が、その一言で一挙に解れて、部屋中に感動の波が押し寄せてきた。皆んなで肩を叩き合って喜んだ。
「おめでとう❗️」
「よかったな❗️」
「●●ちゃん、頑張ったね❗️」
なんと、分娩室に入ってから1時間で出産したという大安産だった。
娘は家内に言われた通りに、どんなに痛くても大きな声を出さなかったという。大腸癌とお産を一緒にしたら怒られるかもしれないが、大腸癌手術のあと、痛みを我慢し過ぎて「痛い時は痛いって言ってくださいね」などと叱られた僕に似たのに違いない。娘も痛いと言わなかったようである。
だから、陣痛室からメールで経過報告をしてくれたことや、いくら1時間の安産だったとは言え、細身の娘が、しかも初産にも拘わらず、声も出さなかったというシッカリとした態度に、「近代稀に見る冷静な妊婦さんですねぇ」と言って看護師さんに褒められたんだという。
なにはともあれ、こうして娘のお産が終った。
・・・・・・・
蛇足になるが、今日のイラストである。
・・SNSで送られてきた、生まれたての写真を見て忠実に描いたつもりなのだが、こんなに不細工じゃないよ!忖度はないの!?って娘に叱られそうである・・・いや、叱られるな・・
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