- 運営しているクリエイター
#日記
【短篇小説千本ノック10】融解する境界—―吉田知子「恩珠」
これまで読んだなかで、いちばん怖い小説を教えてください。
こんな質問をされたことがある。
怖い小説、なかなか難しい質問だ……とは思わなかった。なんとなれば、私は比較的、というより明らかに怖がりの範疇に入る性質の持ち主であり、怖い、と思ったモノ・コトは、この灰色の脳細胞に深く刻み込まれている。
試みに、これまで読んだ怖い小説を列挙してみよう。
内田百閒「青炎抄」、半村良「雀谷」、筒井康隆「
【短篇小説千本ノック8】究極の恋愛小説――アドルフォ・ビオイ=カサーレス / 高丘麻衣・野村竜仁訳「パウリーナの思い出に」
前回紹介したドノーソ「閉じられたドア」が収められている『美しい水死人――ラテンアメリカ文学アンソロジー』(福武文庫)にはラテンアメリカ圏の傑作短篇が惜しげもなく収録されており、斯界の入門にはもってこいの一冊だ。捨て作がない。
優れたアンソロジーは、その後の読書の指針になる。このアンソロジーがなければ、ホセ・エミリオ・パチェーコやフェリスベルト・エルナンデスといった優れた作家の名を知ることはなか