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自分を主語にして語るナラティブ

こんにちは。GCRMパートナーズの杉山です。
前回の記事、『 ジレンマが浮き彫りにするナラティブの重要性 』の続編です。

「ナラティブ」って何?

皆さんは、「ナラティブ (Narrative)」という言葉を普通に使われていますか?
私自身は、あまり使うことがない言葉でしたが、ここ数年、コミュニケーション研修やグローバル系の研修、さらにグローバルリーダーの育成研修で、「ナラティブ」という言葉を聞く機会が、明らかに増えました。
 
日本の中学校・高校の英語の授業ではあまり習わない単語のため、最初に目にしたときには、こっそり Web 辞書で意味を確認したことを覚えています。すると、「物語」・「話術」・「語り口」などの意味が表示され、ふむふむ、そういう意味なのかと理解はしたものの、「それってストーリーテリングとは何か違うのか?」と、若干モヤっとしたことも記憶しています。
 
その後、さまざまな場面でこの単語に遭遇する機会が増え、その文脈から推察することで、この単語の意味(コンテクスト)を理解できるようになりました。

「それが自分の中でどういう意味をもつのか」が大事

ストーリーテリングナラティブの、最も大きな違いは以下のポイントではないかと、私は考えます。
 
ストーリーテリングは、「ストーリー」を読み伝えることが主となります。読み聞かせや朗読も、その一例です。ストーリーの内容も大事ですが、いかに上手く読むか、語るかが重要です。
 
一方で、ナラティブは、
・そのコンテンツについて、自分はどう考えるのか? それはなぜか?
・そのテーマと自分の価値観は、どのようにつながるのか?
・それは、自分にとって、どういう意味があるのか?
など、語る内容は、語り手が自分自身の想いや考えを伝えるものであり、語り方よりは、その内容に重きが置かれます。
たとえ語り方が訥々としたものであっても、その内容が人の心を打ち、語り手の想いが伝われば十分です。むしろ、美辞麗句で語っても、相手に伝わらなければ、それは成功したナラティブとは言えないことでしょう。
 
最も怖いのが、ナラティブを語ろうとしたときに、自分が本当に考えていないと、または、伝えたいことがないと、「言うべきことが見つからない」という状況に陥ります。また、それをなんとか繕ったとしても、語り手が表面的に語っているだけなのか、それとも、本気でそう思っているのかは、意外と聞き手に伝わってしまう、ということです。
 
自分の心に手を当てて聞いてみると、今まで、「コミュニケーション研修」として提供してきたコンテンツは、もしかしたら、ストーリーテリングの「語り方」の表面的なテクニックだったのではないか? ということに気が付きました。また、そこで感じていた、うっすらとした違和感の根源が何であったかも理解できたような気がしました。
もちろん、その「語り方」のスキルも重要なものではありますが、ナラティブが重要視されるようになれば、今後は、より「語る内容」に焦点が当てられていくようになるのではないか、と思います。

「パーパス」とのつながり

ナラティブという言葉が良く使われるようになった要因の1つに、「パーパス」が考えられます。
数年前に「パーパス経営」がトレンドとなり、多くの企業で「パーパス経営」が導入され、素晴らしい「パーパス」や「ミッション」などが作られたものの、それと現場との乖離は大きくなる一方。社員から見て、パーパスは、「自社のホームページにかっこよく書いてある何か」という理解では、せっかく作ったパーパスの意味がありません。
 
社員のひとりひとりにパーパスを自分ごとにしてもらうために、「あなたにとってのパーパスは?」、「あなたの価値観とパーパスはどのようにつながりますか?」、「あなたの仕事とパーパスのつながりは?」など、自分を主語にして語ってもらおう、という動きが出てきました。これは、上司が部下にパーパスを説明し語ることと、または、社員それぞれが自分で考え、語ることの両方を含みます。
 
理念経営2.0 の中で、佐宗邦威氏は、
『「ナラティブ」には、人の信念を変える力がある 』と語っています。
たとえば、完全に人ごとであったパーパスを、自分の上司が、自分なりの解釈で、自分ごととして、その部署の仕事に引き付けて、感情をこめて語ってくれれば(ナラティブ)、部下の共感を生み、その信念に影響を与えることができるのではないか、とも書かれています。

ナラティブの可能性

前の記事でも書いたように、語り方、語る内容、語り口を「ナラティブ」とよび、私たちは、それをこれからのリーダーの持つべき重要スキルの1つと考えています。
 
自分の想いを率直に語ることは、精神的に丸裸になるような感覚もあり、誰にとっても非常に勇気のいることだと思います。しかし、そのハードルを越えることで、今までには得られなかった成果につながる、大きな可能性を感じます。

 
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