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【みんなの就活体験記 高機能自閉症(ASD)の先輩】

こんにちは、インターン生のかりえです!
GATHERINGでは障害学生のキャリアをみなさまにお届けするために、社会で働く障害当事者へのインタビュー記事や障害学生の対談記事を制作しています。

今回は、就活を終えた現役の障害学生(高機能自閉症)が実際にどのように行動してきたのかをインタビューしてきました!これからの就活に不安を抱えている方はぜひ参考にしてみてください。

川中さん(仮名)のプロフィールおよび就活概要

・都内の大学4年生
・精神保健福祉手帳所持
・大学4年の9月から就活開始→大学4年の11月末に終了
・オープンとクローズ半々で就活
・必要な場以外での日常生活ではクローズ


川中さんの障害特性について教えてください

私は高機能自閉症と診断されています。曖昧な指示や抽象的な指示が理解できない、臨機応変に動くことが苦手、暗黙のルールなどを読み取るのが得意ではないといった特性があります。

具体的には、スーパーの清掃のバイトで「物を早く綺麗に洗っておいて」と指示された時に、「早く」とは「今すぐやれ」なのか「スピード感をもってやれ」なのか、「綺麗に」とはどれぐらいなのかが分からなかったりがあります。綺麗にしようと思って丁寧に洗っていたら「そんなに丁寧じゃなくていいから早く終わらせて他の仕事やって」と言われたり。程度が分からなくて困るという感じですね。

大学では、レポートの課題などで「◯◯について書け」といった漠然としたテーマが出された場合、自分で問いが立てられなくて困るということが多かったですね。

入社する予定の会社について教えてください

通信機器のメーカーに就職予定です。プロダクトは多岐にわたっていて、企業用の電話やWi-Fiのルーターなどを作っています。最終的には三社から内定頂いていたのですが、一番最後に内定をいただいた会社に決めました。

最終的な決め手は、結局のところ雇用条件が良くて、将来転職する時に有利というところです。まだ新卒ですが、転職も視野に入れて将来のキャリアを想像したときに、自分の未来がはっきり描けるかという点を重視しました。

具体的な職種や業務内容は決まっていますか?

現時点では品質保証の仕事につくと聞いています。私の会社は通信機器を販売しているので、クライアントとの契約が成立すると工事が必要な場面が多くあります。そのような工事に関して、例えば法律や安全基準などが満たされているかをチェックしたりするのが業務内容です。また、従業員のために建設に関連した資格を管理する業務や、国に提出する書類を扱う業務もあるようです。あとは、新人のうちはやらないみたいですけど、ゆくゆくは工事の現場に行って、問題がないかチェックする業務もあるようです。

就活を始める大学4年の9月まではどのように過ごしていましたか?

大学3年の5月ぐらいから大学の支援室を通じて就活の情報が入っていたのですが、 セミナーや説明会に行くだけで、選考プロセスに関わる行動は特に何もしていませんでした。大学3年の2月に、やる気になったタイミングがあったのですが、結局そこから本選考に進むことはなく、就活に関してなんとなくの知識はあるけど何もしないまま4年生の8月〜9月になっていました。

就活を始めたきっかけは?

それまでは、公務員や大学院を受けるわけでもないし、卒業後もフリーターをしながら気楽に就活するか、と思ってました。しかし、(大学4年の)8月末ぐらいに支援員の方から発達障害の学生向けのインターンに行く機会を紹介され、それが転機となりました。

そのインターン先に行った時に、発達障害の社員がそれなりに楽しそうだったんです。オフィスにもドリンクバーがあって、「ドリンクバーを置いている会社があるのか」って感動しちゃって(笑)楽しそうな社員さんとオフィスの雰囲気を見て、「すぐには無理かもしれないけど、こういう企業で働きたいな」と最終的に想像できるようになりました。それを叶えるためには、「どこでもいいから今とりあえず企業に入って、そこから転職で入るのが一番早いのではないか」と考えて、就活に本腰を入れたのが大学4年の9月という感じです。

スタートダッシュが比較的遅かったこともあり、その時点ではそんなに選択肢があまりありませんでした。なので正直、手当たり次第受けていた感じではありますね。途中からメーカーを中心に見ていましたが、メーカーの中でも特例子会社や業種、職種などは決めすぎずにバラバラと受けていました

エントリーから面接まではどのように行動しましたか?

エントリーするために説明会出席を必須とする会社が多かったので、エントリー前提の説明会に参加することから始まりました。
また、自己分析は、就活に本腰を入れる前から支援員の方が手伝ってくださっていたので、その時の資料を利用させてもらってました。具体的には、支援員の方が調べて作成した就職で聞かれそうなことリストに答えるという感じです。学校生活、これまでの経験、人生で楽しかったこと、辛かったことなどのよくある質問に加えて、障害についての質問が並んでいました。

面接やエントリーシート対策は2つの場合があって、まず、障害者雇用専門のエージェント経由で申し込んだ企業はそのエージェントの担当者の方に内容を見てもらっていました。そしてそれ以外の経由で申し込んだ企業は大学のキャリアセンターの方に見てもらっていました。

面接の練習はしませんでした。最初に受けた面接はボロボロでしたが、場数をこなしたら分かってきました。受けたのは全部で12社ぐらいでしたが、3社から内定をもらうまではほぼ全部落ちていたので、そんなにスムーズに行ったという感じでもないのですが。

就活中に気をつけていたことはありますか?

面接は基本的に個人面接のみを受けていました。一度、みんなで共同して役割を決めて色々課題をこなしていくみたいな障害学生向けのグループワーク会に参加したんですけど、相性が悪かったんです。結局グループワーク最終日に「これは無理だ」と思って泣きながら「見学にさせてください」とお願いしました。この経験を経て他のグループディスカッションも無理だろうなと思い、避けましたね。

就活中不安になったことはありますか?

最初の会社に内定をいただくまで10社ぐらい連続で落ち続ける中で、なんで落ちたのかわからなくてモヤモヤしていました。エントリーシートを周囲に見せても「ちゃんと書けている」って言われるのに書類は落ちるし、当然企業からはフィードバックももらえないので、自分の悪いところを直そうにも直せなくてもどかしかったです。
ただ正直なところ、思ってたよりも苦痛ではなかったし、不安でもなかったです。内定がもらえなくても別にそこまで気にしない、ぐらいのメンタルで続けていたからだと思います。さすがにこのままだと全部落ちるかもしれないな、どうしようかな、ぐらいの軽い不安感はありましたけどね。

合理的配慮は内定先にどのようにお願いしていますか?

そもそも内定先の話以前に、就活中の合理的配慮として、特性的に苦手だと思われる職種に配属されないようにしていました。具体的には、営業やシステムエンジニアです。面接で聞かれても事情を説明して「多分無理だと思います」と伝えました。ただ、就職先の企業など、自分で希望する職種を選んでエントリーするタイプの選考では、特に伝える必要はなかったですね。

また、業務の配慮に関しても、面接の段階である程度話をすり合わせてもらいました。自分の特性として「抽象的だったり、曖昧な指示が苦手なので、できれば具体的に話してほしい」とか、 「暗黙の了解を汲み取りづらかったり、周りのことを察するのが苦手なため、気を使いすぎる」という話を事前にすることができました。その他にも「業務の指示は、何のための業務なのか、どういう目的があるのかをはっきり示してほしい」ともお願いしました。その上で、「川中さんが求める配慮内容であればこういうことができます」とお伝えいただきました。

就活を振り返ってみてやらなくてよかったなと思うことはありますか?

「9月までやらずにいた」ということが、一番やらなくて良かったことかなとは思います。さっさとやっとけばよかったですね。

あとは、マイナビのように自分で会社を検索してエントリーしていく方式の応募はやらなくてもよかったかなとは思いますね。場数を踏んで練習するっていう意味では、無駄ではなかったと思うんですけど、就活を始めたのが4年の9月なので、練習ばかりに時間をとられたらもったいないんですよね。その時点でエントリーできる枠も限られているし、雇用条件がいいところも少なくて選べないタイミングなので。それに、私自身、コミュニケーション能力が高いなどといった分かりやすくアピールできるものがあるタイプでもないし…今思えばやらなくてよかったかなと思ってますね。

就活を経験してみて、未来にどんな就活の仕組みや考え方があったらいいなと思いますか?

「働くことは自己実現で、成長できるから良くて、就活を通して自分のことを見つめ直せる!」みたいな自己啓発が強すぎる気がしています。そういう考えの人もいると思いますが、もっとフラットに、ただの通過点くらいの温度感のものがあったっていいと思うんです。「パッと、こうやっとけば通るから」みたいな、ある意味で雑で気負わないような語り口のサービスがあれば、もっと早く始められたのかなと思いますね。

最後に、これから就活をする学生や就活中の学生に向けてのアドバイスをお願いします!

とにかくまず始めてみる。とりあえず1社エントリーシートを書いて面接にチャレンジする。そこからだんだんエントリーシートの数を増やす。そうすると締め切りがいくつか出てくるので、そのスケジュールを見ながら、自己PRをまとめるなどのタスクの締め切りを自分で作っておくとよいと思います。

ASDのある人だと、私も含めてコミュニケーションが一部苦手なゆえに、「就活では不利になるかも」とか「自分は一生働けないな」みたいなことを思って動き出せない人もいるのかなと思うんですよね。そういうときに焦って複数社にエントリーしようとせずに、まず一社面接行くなりエントリーシート出すなりしてみる。そこで「こんなもんか」という感覚から入るパターンもあると思います。経験を積んでおくためにも、とりあえずまず「落ちてもいいので1社受けてみる」ってことなのかなと思いますね。

結局、なんで不安な気持ちになるかっていうと、何もしてなくて先行きが見えないからなんですよね。就活は具体的に何をやるもので、どういうプロセスを得て、どういうふうに終わるのか分からないから不安や恐怖を感じてしまう。なのでまずは1度、なんとなくの流れをつかむためにやってみるのがいいと思います。


まとめ

川中さんのお話を聞いて、まずは軽い気持ちで1つだけエントリーしてみることの重要性を感じました。同時に、全て1人で気負いせずに時には支援室や障害学生向けの就活エージェントに頼ることも大事なのではないかと感じました。正解のない就活だからこそ、障害がある学生にとっては悩んでしまいがちなので、少しでも不安を感じたら誰かに相談をしてみたり、川中さんのようにとりあえず1社エントリーしてみる、というところからチャレンジしてみてはいかがでしょうか。川中さん、お忙しい中インタビューにご協力していただきありがとうございました!


GATHERINGでは障害のある学生のキャリアを応援するプロジェクトを進めています。それに伴い、障害学生のキャリアに関する実態調査としてアンケート調査およびインタビューに協力してくださる障害学生を募集しています!インタビューでは、インターン学生から就職活動の経験や将来のキャリアについてお伺いいたします。詳細は下記のフォームをご覧ください。

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この記事を書いた人✍️
(画像のプロフィール情報は2024年3月までのものです)

かりえ(インターン卒業生)画像内では中度の聴覚障害の大学4年生と記載しております。

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