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【読書記録】アレクサンドル・デュマ・ペール『三銃士』

アレクサンドル・デュマ・ペール(1802~1870)は『三銃士』、『モンテ・クリスト伯(巌窟王)』などを代表とする、生涯500を超える作品を送り出したフランスの作家です。

息子はオペラで有名な『椿姫』を書いた作家のアレクサンドル・デュマ・フィスで、名前が同じであるためフランス語でそれぞれ「父」と「息子」を意味する「ペール (père)」「フィス (fils)」を付けて区別されます。「大デュマ」、「小デュマ」と呼ばれることもあります。

『三銃士』は1844年に新聞で約5か月にわたって連載された長編の冒険小説で、それまで劇作家として活躍していたデュマを人気小説家としての地位に押し上げた作品でした。

舞台は17世紀初頭のフランスで、ルイ13世と宰相のリシュリュー枢機卿が対立を続ける一方、宗教革命によって立ち上がった国内の新教徒(旧教のカトリックから改宗した人々)たちはイギリス王権の勢力と結託し、フランスの秩序を脅かしつつあるという状況です。田舎から立身出世を志して旅立った主人公のダルタニャンは、国王側の近衛銃士であるアトス、ポルトス、アラミスと出会って熱い友情を交わし、ともに枢機卿の仕掛ける様々な陰謀に対抗するというのが大まかなストーリーです。

私がこの作品に興味を持ったのは、以前に『カルメン』の読書記録(以下のリンクです)を書いている際に、どなたかのブログで「カルメンの悪女ぶりは『三銃士』のミラディーと比較して云々…」という記述を見たことがきっかけでした。

カルメンはとても不思議な魅力をたたえている女性で、夢中で読んだ作品だったので、そのブログをきっかけに『三銃士』にも興味を持った次第です。

新聞に連載された作品ということもあり、ストーリー展開や文章のテンポがよく、非常に面白く且つ読みやすくて、こちらも一気に読破してしまいました。件のミラディーの悪女ぶりも見事なもので、自身の美貌と知略に絶対の自信を持っており、保身のために人を欺いたり殺したりすることに全くためらいがありません。ダルタニャンと三銃士の友情と活躍ぶりも素晴らしいものですが、ここまで悪に徹した人間を描ききったことも人気を博した要因の一つでしょう。

『三銃士』はオペラや映画、マンガなどの二次作品も多く、原作とは別の形で触れられた方も多いと思います。が、派生作品にはよくあることで、原作と展開が違うものもあります。特にミラディーを巡る結末部分が見どころなので、原作を読んだことがないという方にはぜひお勧めしたいですね。

主要人物は皆キャラクターが立っていますし、友情、恋愛、成長、宿敵といったヒットする作品に共通する要素が揃っていて大人が読んでも十分に面白いです。

『三銃士』には第二部の『二十年後』、第三部の『ブラジュロンヌ子爵』という続編があり、併せて『ダルタニャン物語』三部作と言われているようです。まだ手をつけていないので、読んでみてまた機会があればこちらでご紹介したいと思います。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

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