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Gastronomy Tourism‐インバウンドの課題である地方誘客・消費額向上へ‐

 日本は観光先進国に向かい進んでいます。2023年3月31日に閣議決定された観光立国推進基本計画の中でも、観光は、成長戦略の柱、地域活性化の切り札と改めて明記されました。特にインバウンドは日本の魅力を再発見し、新たな価値を創造することができる重要な施策です。

 JNTOの発表によると、訪日外国人旅行者数は、新型コロナウィルス感染拡大前の2019年の水準に向け早い回復を示しており、2023年2月の訪日外国人旅行者数は147万人を超え、早期のインバウンド回復が期待されています。私の友人である台湾人は、2月に日本を3年ぶりに訪れることができ、日本のレストランや観光地を子供のようにはしゃいで楽しんでいました。日本人である私のほうが嬉しくなったほどです。日本は彼らにとってそれほど魅力がある国であり、今後も多くの訪日外国人旅行者が日本ならではの魅力を求めて日本を訪れるでしょう。
 一方、日本のインバウンドの課題として挙げられているのが、地方への誘客と旅行者の消費額向上です。訪日外国人の消費額を見ると、2018年の4兆5189億円に対して、2019年は4兆8135億円に留まっており伸長していません。日本政府は2030年の目標として、訪日外国人の消費額15兆円を掲げていますが、消費額向上への具体的な施策が必要です。私はガストロノミーツーリズムが観光における地方誘客、消費額向上に大きく寄与できるツーリズムの一つだと考えています。なぜなら、ガストロノミーツーリズムは地域の食文化を楽しむ体験であり、まだまだ発展途上だからです。
 訪日外国人の消費額の内、飲食費に注目をしてみると、2018年は9,783億円、2019年は1兆397憶円であり、全体の訪日外国人消費額の21.6%を占めています。私は、2013年より飲食店のインバウンド施策を取り組んできましたが、訪日外国人の飲食費および食における消費額は、今後大きく向上させる余地が十分にある、と思っています。(理由や具体策は次回)

 UNWTO(国連世界観光機関)は、世界的にガストロノミーツーリズムを推進しており、2015年より毎年「ガストロノミーツーリズム世界フォーラム」を世界各国で開催してきました。2022年12月には日本で初めて奈良県でガストロノミーツーリズム世界フォーラムが開催されました。日本には地理的・歴史的・文化的背景が十分にあり、ガストロノミーツーリズムを推進する素地が十分に備わっています。そして、長い歴史の中で各地域の伝統や習慣、郷土料理などが今も受け継がれています。地域の食文化を楽しむ体験、ガストロノミーツーリズムは、日本各地域への誘客を促進するツーリズムです。
 また、ガストロノミーツーリズムは、単に飲食店でのメニューの提供だけではなく、生産者(農業、漁業)、加工業者、飲食店や食関連企業、お土産などの小売業が関係するツーリズムとされています。地域において、食や食文化に関わる関係者と協力、連携することにより拡がりや、新たな価値を創造することができます。日本各地域の食文化を楽しむ体験は、多くの訪日外国人旅行者に忘れられない思い出を提供することができるのではないでしょうか。

次回; Gastronomy Tourism -国立公園・国定公園でガストロノミー体験

Gastronomy Tourisim Institute
ガストロノミーツーリズム研究所 CEO 杉山尚美

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