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ヴィレヴァンの怪奇・恐怖マンガよ、何処へ……

※この後の文章には多くの偏見と冗談が含まれています。断定系の文が登場しても、それは何らかの証拠に基づくものでない可能性があること、また、特定の何かを攻撃する意図はないことをご了承ください。半分くらいフィクションの可能性もあります。

※ヴィレッジヴァンガード店内の表現が出てきますが、全ての店舗に当てはまる状況とは限りません。たとえば、下北沢店などは明らかに本文の限りではないでしょう。


初めて楳図かずおの作品と出会ったのは、ブックオフだったと記憶している。105円ではない大判マンガのコーナーに、小学館から刊行のUMEZZ! PERFECTIONシリーズの「おろち」が並んでいた。いかにも高級そうな背表紙に惹かれて手に取りパラパラとページを繰る。それまで読んだこともなかったような絵柄に衝撃を受けた。

少年の私にとって安い値段ではなかったが、迷わず買った。家でじっくり読むと、話の内容にも衝撃を受けた。怪しげな雰囲気の中淡々と運ばれていく序盤。徐々に人が日頃秘めている執着やずるさ、ねじれた愛情などがあぶり出され、一気に破滅へ向かう終盤。怖さにリアリティを感じ、震えたことを今でも覚えている。リアリティのある怖さと並立する、ミステリアスでどこかファンタジックな女、おろちの存在もまた魅力的であった。私は、怪奇・恐怖マンガの世界に自ずから足を踏み入れていった。


私の初期の怪奇・恐怖マンガライフを支えたのは、誰もが知るサブカル・ショップの代表格ヴィレッジ・ヴァンガードであった。当時通っていたイオンの中にあった英会話教室。授業の前後で同じくイオンの中にあったヴィレヴァンに通い、まだ見ぬマンガの表紙を眺めた。月に数冊、小遣いはほとんどそこに並んだマンガに注ぎ込まれた。

マンガの棚の一角を、名だたる怪奇・恐怖マンガたちの作品が埋めていた。伊藤潤二、高橋葉介、諸星大二郎、丸尾末広、花輪和一、駕籠真太郎……全て出会いはヴィレヴァンだった。だった……そう、すべては過去のことなのだ。


私がヴィレヴァンをめちゃくちゃ怪しい人が作った悪の組織の直営店か何かだと思っていた頃、怪奇・恐怖マンガはメインのマンガの棚の中に堂々と居座っていた[図1]。その中でも下半分くらいのかなりのスペースを楳図先生のマンガが占めていた。

VV本棚図-02

この頃、ヴィレヴァンの照明は今より暗かったような気がするのだが、この話をしても、そうだよねと共感してもらったことがない。私の勘違いなのだろうか。

私の記憶でヴィレヴァンの照明が明るくなったあたり(何年のことだったかは定かではない)から、怪奇・恐怖マンガゾーンは徐々に縮小していく。どのマンガ家の作品も品揃えが段々と薄くなり、やがて店頭で見かけなくなる作家も出てきた。ヴィレヴァンにもついに資本主義の波が押し寄せ、クリーン化の時がやってきてしまったか、と少年の私は思った。

しばらくすると、怪奇・恐怖マンガのコーナーはメインの漫画の棚から切り離され、店舗の隅へと追いやられた[図2]。よく見かけた所在はBL作品の棚の付近。神よ、これがゾーニングというやつなのか!少年の私は心の中で叫びながらも、隔離により一気に売り場面積の縮まったゾーンにすがり続けた。

VV本棚図-04

狭くなったゾーンには、もはや数人の作家の作品しか並ばなくなっていた。今日までこの状況は続いている。古屋兎丸と伊藤潤二、丸尾末広の3人体制で並んでいることが多い気がする。かつての圧巻の光景はそこにはなく、怪奇・恐怖マンガゾーンを見ると少し寂しさすら覚えるようになってしまった。そのうち、私の足はあまりヴィレヴァンへは向かなくなった。サブカルの世代交代じゃ、と微かに残った少年の私は呟いて、それ以来なりを潜めてしまった。


本日、久々にふらりと立ち寄ったヴィレヴァンで予想もしていなかった光景に出くわした[図3]。

VV本棚図-03

ゾーンの中心に、それまでこのゾーンで見たことは一度もなかった萩尾望都の「ポーの一族」が並んでいるではないか!これは一体どういうことなのか……やや仏壇のようにせり出した「ポーの一族」コーナーは、伊藤潤二のマンガをやや覆い隠してもいた。

久々に心の片隅に現れた少年の私は、やれやれと両手を広げてみせると、また消えていった。


【余談】

今回出会った光景もなかなか衝撃的だったが、少し前にさらに衝撃的な光景に出くわしたことを思い出した。人が一人通れるかくらいの狭いスタッフ通用口を半分塞ぐような形でいる本棚。わざわざ覗こうとしなければそこに何が並んでいるかは見えない。そんなところに、ポツリとあったのである、楳図先生のコーナーが[図4]。

VV本棚図-01

特にここまで通して言いたいことは何もない。読んでくださった方はありがとうございます、そして、すみません。とりあえず、楳図先生のマンガは大変におもしろいので未読の方は読んでくれ。あるいは、一怪奇・恐怖マンガファンの作る「怪奇コント」を1月18日、福岡市はkonya-galleryまで観にきてくれ!


【公演情報】

イッテルビウムとがらくた宝物殿 新春怪奇コント祭り「ちょっと人面犬」

2020年1月18日(土) 15:00/19:00

会場:konya-gallery (福岡市中央区大名1-14-28 第一松村ビル201+202)

料金:500円

ご予約→ https://forms.gle/CcsLCFeGsfCpembT6

ちょっと人面犬HP-01

ちょっと人面犬HP-02



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