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危なっかしい計画

大都会。そこで暮らす若者たちが集まる渋谷の中心は日本中の喧騒が集められたのかと思うほどに騒がしい。

そのノイズに飲まれないように声を張り上げ、でも軽い口先から吐き出される声が聞こえてきた。

「ねぇ。お姉さん、いま暇?」

私は眼鏡越しにその気持ち悪い髪型をした男を睨みつけた。

「……忙しいですけど?」

「えぇ?そんなこと言わないでさ、こんな時間にこんなところにいるなんて暇でしょ?」

「ごめんなさい。急ぐんで」

それからもしつこく声をかけてきたがしばらくすると諦めたのか、去っていった。

「声かけんならもう少しイケメンになってからにしろよ」

私は舌打ちをしながら渋谷を進む足を速めた。

向こうの方でガードパイプに腰掛けていた男たちもこちらを見て何か話していたが私が睨むとすぐ目を逸らした。

高学歴家庭生まれ、進学女子校育ち。今年、18になった私は男たちにイライラしていた。

高校に近い有名な予備校がたまたま渋谷にあったというだけだ。それなのにそこを歩けば手当たり次第に声をかけられる。

「君、眼鏡外してみなよ。絶対可愛いよ?」

うるさい。メガネなんか外したらお前らの汚い顔がわかんなくなるからつけとかなきゃいけないんだよ。

「ポニーテールもいいけど下ろしてみたら?きっと似合うよ」

下ろしたら癖が出るから嫌なんだよ。それに似合うかどうかはこっちで決めるから。

あれやこれやと私を褒めてその気にさせようとするけど、あいにくこっちはプライドが高いのでその程度じゃ誘いには乗らない。

「無理やり連れてってくれないかな……」

別に遊ぶのが嫌なわけではない。ただ、ここらで有名な女子校の制服だからか、遊んでないおとなしそうな子に見えるからか、とにかく手当たり次第に声をかけるようなやつにはついて行きたくなかった。

私は駅のトイレに駆け込んだ。

しばらく経ってトイレから出てきた私はさっきまでのお淑やかな少女ではなく、お洒落に身を包んだかわいい少女になっていた。

鏡に向かって口角を少しあげると、私はスキップをしながらトイレを出た。

制服の入った紙袋を駅のコインロッカーに押し込んでいると後ろから声をかけられた。

「君、ひとり?」

振り返るとそこには顔の整った爽やかな青年がいた。

「え、はい」

「んー……海、行かない?」

「ふたりで?」

「うん。行こ?」

彼は私の手を握って渋谷の街に連れ出した。

どうなるんだろうか、これから。蝉たちは近づく終わりを嘆くように甲高く鳴いていたが、私の夏はこれからだ。

まだ始まったばかりだから、私の


危なっかしい計画。

〈完〉

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