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新人作家読み切り『根津』『矢野くん観察日記』同じ視点、別の世界!!

読み切りっていいですよね!私は好きなんです。
作家さんの世界観が盛り盛りに込められていて、どっぷり浸れる。
続きが無い、つまりこれ以上の描写・情報が無いからこそ
読後自分の中で何度も解釈を構築し直したりなんかして。
ぐあーーー楽しいww

そんな読み切りの中で、講談社「週刊モーニング」が毎月募集している新人賞「月例賞」で面白い2作品があったのでご紹介します。

【モーニング月例賞2020年7月期】佳作受賞作品 『根津』大野莉楠
【モーニング月例賞2020年10月期】佳作受賞作品 『矢野くん観察日記』
森町ようこ

どちらの作品も、主人公の女子高生がクラスメイトの不運orドジな男子を眺め、観察するというお話。

これが、似た設定ながら世界観と着地点が違っていて面白いんです!
ちなみに2つとも下記講談社の漫画サイト「コミックDAYS」にて読めます。是非!(2021年1月現在)

クラスメイトを観察する2人の主人公。その行動によって、それぞれの世界観が爆裂する!

この2つの作品の主人公達、どちらも黒髪ロング前髪アリの女子高生。
いつも生キズが絶えないクラスメイトの男子を、ひっそり観察するところまでは同じなのですが、それぞれキャラクターと行動が全く違います!

『根津』の女の子は冷静。
類まれなる不運体質である根津くんを、ひたすら眺めて分析・傍観。
そのあまり不運さに、何も起こらない時は物足りないとすら感じ、そのことにやや申し訳ないと思っています。
ただある事がきっかけで、根津くんを救おうと積極的に彼に関わるようになるんです。
隠密にですけど!

物語は終始、彼女のモノローグで進むのですが、このモノローグが面白くて!
目的遂行のための、現場状況の冷静な分析。思わぬ出来事での状況悪化によるうろたえ。危機に瀕した時の逸脱した妄想w
彼女の無表情さと相まってたまらんです。いや、武将かwww
このモノローグで、どんどん彼女の思考の中へ引きこまれていく感じがめっちゃいいです!

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『根津』(大野莉楠/講談社)より引用

対して『矢野くん観察日記』の女の子は心配症。
クラスの委員長であるという責任感と持ち前の面倒見の良さから、隣の席で日々怪我を増やす矢野くんを心底心配しています。

親友からの提案がきっかけで、その怪我の原因を隠れて探ることになるのですが、その彼女の表情がもうかわいくて!
真剣に心配している表情、でもそれがバレてキモイと思われたくなくて焦る表情・・・もう可愛いが過ぎる!

このお話は、登場人物たちの表情がとても魅力的なんです。
過剰な表現ではないんですが、コロコロと表情が変わっていって、途中でスッと冷める時の顔とかクスリと笑ってしまいます。
特に矢野くんが薄く笑った時の表情がいいーーー!

物語の中で少しづつ変化していく主人公の心情と、矢野君との距離感がめっちゃいいです!

やの

『矢野くん観察日記』(森町ようこ/講談社)より引用

それぞれの着地点に悶える!

ここからは完全に自分の感想になってしまうのですが、
話の着地点がそれぞれの主人公らしくていい!悶える!
(共感するのは『根津』、憧れるのは『矢野くん観察日記』でしょうか。『根津』の着地点に共感するのは、私がロクな青春時代を送っていないから・・・?くそう。青春野郎め!)

同じ視点で、こんなに違う世界を見せてもらえて本当に楽しい。
それぞれの作家さんが、さらにこの後どんな世界を見せてくれるのか、本当に楽しみでしかたがないです!

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