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読書の秋にむけて選書した書籍をまとめてみました!(GAMABOOKS)

はじめに

こんにちは、GAMABOOKS運営事務局です。GAMABOOKSでは二ヶ月前のオープン+書店員デビューにあわせて、ご参加者様にざっくばらんに1冊を選書してプレゼントするtwitterキャンペーン【ざっくばらん選書】を実施しましたー。

当時のリリースはコチラ!
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000091256.html

さまざまな属性のかたにご参加いただけて、選書自体もとても楽しかったです。さて、選書した書籍は順次発送中なので近日中にご参加者様の手元に届くわけなんですけど、ざっくばらんとは言えせっかく頑張って選書しましたので、このnoteに選書リストをざくっとまとめておこうと思います。みなさまのご要望にあわせてエンタメ~純文学まで幅広く選書しましたので、本キャンペーンに参加できなかったみなさまにも公開することで、読書の秋に向けた本選びの参考にしていただければと思った次第です。ではさっそく本題に参りましょう。

選書した書籍の一覧

ペドロ・パラモ / フアン・ルルフォ

こちらは結構な本読みと思われるかたに選書した一冊です。ご要望はアフリカの作家だったんですけど、アフリカ文学だと手元にやし酒飲みしかなくて、これはちょっと人を選びすぎるな…と感じたので、アフリカと同じく熱帯のムッとした空気感があってかつ読みやすさもある本書を選んでみました。メキシコ出身の小説家であるフアン・ルルフォは、歴々たるラテンアメリカ文学の巨匠たちに絶大な影響を与えている最高にマジックリアリズムな小説家です。ご要望のアフリカ文学ではないものの、日本人とはまったく異なる想像力とリアリティを楽しんでいただけます。

恋愛論 / 吉行淳之介

こちらは作家として活動されているかたに選ばせていただきました。ご要望はビジネス書を読むことが多いので新しいジャンルに挑戦したいとのことだったので、この作家さんが活躍されているジャンルを踏まえ、吉行淳之介の『恋愛論』を選んでみました。吉行淳之介は、その軽薄さがまるっと文体に現れていて、なのにその奥に品があってかつ優しさも感じられる…まさにプレイボーイの権化のような小説家です。作家として常にネタ探しをされているとのことだったので、作品しかりプライベートしかりネタに事欠かぬ吉行淳之介を選んでみました。

人間の建設 / 小林秀雄・岡潔

このかたのご要望は名前は聞いたことがあるけど詳しくは知らない人物のエッセイでした。ラノベから哲学まで幅広く親しまれる知識欲に溢れたかたとお見受けしたので、知の巨人小林秀雄と大数学者岡潔の対談本『人間の建設』を選んでみました。対談本なのでサクッと読めちゃう一方、ちゃんと読み込めば地球の裏側まで行けちゃうレベルの深さを感じられる一冊です。小林秀雄を読んでいると「Webでどんな知識にも自由にアクセスできる時代に生きているのに自分はなんて無知なんだろう…」と不甲斐なさを感じると共に身が引き締まります。

図南の翼 / 小野不由美

このかたのご要望は冒険譚だったので小野不由美先生の『図南の翼』を選んでみました。本書は古き中国を模した異世界を舞台にしたファンタジー小説『十二国記シリーズ』のひとつです。王になるべく旅をする向こうっ気の強い少女の冒険譚はシリーズ屈指の名作だと思ってます。ライトノベルを中心に読まれているかただったのですでに読まれているかもですけど、まあ何度読んでも楽しめる作品なのでいいかなと。大人になって再読するとガチガチに老荘思想が入っているなど新たな発見もあって楽しかったです。せっかくなのでホワイトハート文庫版(初版)にしてます。

夜のプロキオン / 長野まゆみ(画:鳩山郁子)

世界観に没入できるファンタジーというご要望をいただいて選んだのがコチラ、長野まゆみさんの『夜のプロキオン』です。長野まゆみさんの宮澤賢治や稲垣足穂に通ずる(と個人的におもっている)日本人離れしたファンタジックな文体だけでも世界観がスゴイのに、本書はそれに加えて漫画家の鳩山郁子さんの繊細なイラストが長野まゆみさんの世界観にバチッとハマっていてより没入感の高い作品に仕上がっています。

第一阿房列車 / 内田百閒

GAMABOOKSの書店員がよく話題に上げる文豪作品を読んでみたいというご要望にあわせて選んでみたのが内田百閒先生『第一阿房列車』です。これまで文豪作品はあまり読んでこられなかったとのことだったので「近代文学っておもしろいじゃん!」と素直に感じられる一冊を選びました。個人的にですけど、内田百閒は近代文学者の中で特に自由な小説の読みかたを許容してくれる作家だという気がするんですよね。この阿房列車は鉄オタの百閒先生が無目的に電車に乗って駅弁を食べながら同乗者にグダグダと文句を垂れ続けるだけの小説なんですけど、ゆえに普遍性があります。まったく古びません。

ラブという薬 / いとうせいこう・星野概念

ストレス解消にスカッとする本をというご希望をいただいたんですけど、そもそもスカッとする本を求めたくなるほどにストレスフルな日常を強いられているのが(このかたに限らず)いまの日本人の問題ですよねとしみじみ感じたので、少し視点をずらしていとうせいこうさん×星野概念さんの『ラブという薬』を選ばせていただきました。二人の緩くも芯のある対話を読み進めるうちに、無意識に凝り固まっていたこころをゆっくりと解きほぐされていきます。

日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか / 内山節

妖怪に関する本というご要望にあわせて選ばせていただいたのは、哲学者の内山節先生が書かれた『日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか』です。タイトルそのまま、日本人がキツネに騙されなくなったワケ、キツネと日本人の関係性、日本人がキツネに騙されることで解決してきたことを史実を元に明らかにしています。そもそもなんでキツネや妖怪が必要なのか?現代に生きるわたし達こそキツネに騙されることが必要なのでは?など、根本的な議論が展開されるパワフルな一冊です。

路上探検隊 新サイタマ発見記 / 路上観察学会編

こちらは文化のなりたちに興味があるというかたに選ばせていただいた一冊です。赤瀬川原平・藤森照信・南伸坊などの各界の大御所が集って東京のベッドタウンに位置付けられる埼玉の新たな一面=ヴァナキュラーな形態を深堀りしていきます。いつもの日常をつぶさに観察することで文化のなりたちがみえてくることを教えてくれます。今和次郎の考現学をルーツにした活動だと言えます。

甲賀忍法帖 / 山田風太郎

こちらのかたのご要望は群像劇でラストがわーっとなるだったので、山田風太郎の『甲賀忍法帖』を選んでみました。アニメ化されたので内容をご存じのかたは多いかもしれません。甲賀と伊賀に分かれてさまざまな忍法使いが戦う異能力バトルものです。半世紀以上前に書かれた小説であるものの、恋愛あり・熱血あり・お色気ありとジャンプ漫画顔負けのエンタメをやってくれてます。

グレート・ギャツビー / フィッツジェラルド

こちらは村上春樹のお洒落な文体が好きというかたに選ばせていただいた一冊です。村上春樹訳のグレート・ギャツビーです。ど直球で勝負してみました。村上春樹訳を読んでから原文を読むと「あれ?違う作品?」って思わせるレベルで村上春樹さんが顔を覗かせていますので(褒めてます)、村上ファンであれば安心して読めると思います。このあとに村上春樹さんが絶大な影響を受けたと公言しているヘミングウェイなどのアメリカ文学を開拓していくのもアリです。

社会的共通資本 / 宇沢弘文

株式取引の参考に世界経済の変化を予測した本をとのご要望をいただいたので、いまの世界的なESG投資のながれを社会的共通資本という形でいち早く提唱していた日本の経済学者宇沢弘文を選んでみました。経済を突き詰めた大天才が出した結論が「人間は自然とともに生きるべき(※個人的な意訳です)」だと考えると、未来の人間が行きつく先にあるのは貨幣ではなく自然なのかもしれません。

くっすん大黒 / 町田康

このかたのご要望は語りの面白さだったので、町田康さんのデビュー作『くっすん大黒』を選んでみました。音楽に詳しい方はパンクロッカーの町田町蔵名義で覚えているかもしれません。まさに音楽を奏でるような軽妙な語り口でしっかり文学をやってくれます。パンクロッカーの自堕落さと純文学の繊細さが絶妙な融合を果たしています。家でゴロゴロしている無職の男がたまたま家に転がっていた大黒様の薄ら笑いがむかついて大黒様を捨てにいくというお話です。

鋼鉄都市 / アイザック・アシモフ

ふだんSFを愛読されているかたに選んだ一冊です。いつも読んでいるタイプの本をというご希望だったので、SFの古典中の古典であるアシモフの「鋼鉄都市」を選んでみました。ロボット工学三原則の盲点をついたあっと驚くSFミステリはなんど読んでも「これよこれ!」感があります。本書の『無感動なロボットと人間の刑事のバディもの』という設定はいまもさまざまな作品に踏襲されています。

ママは何でも知っている / ジェイムズ・ヤッフェ

最近ミステリを開拓し始めたので明るめのミステリをというご要望にあわせて選ばせていただいたのは、ジェイムズ・ヤッフェ『ママは何でも知っている』です。こちらはミステリ大好き書店員である諸星めぐるのセレクトになります。いわゆる安楽椅子探偵のママが小気味よく事件を解決してくれる短編小説です。ほかにも軽めだと『流れ星と遊んだころ/連城三紀彦』や『さよならバースディ/萩原浩』などがおすすめです(諸星めぐる談)。

文芸漫談 / 奥泉光・いとうせいこう

作家志望と思われるかたより小説執筆に関する本をというご要望をいただいたので、奥泉光×いとうせいこう『文芸漫談』を選んでみました。タイトルそのまま、漫談形式で文学を語ってくれる一冊です。新人賞をとるための○○○みたいなテクニカルなお話は出てきませんが、文学に限らずものづくりをする上で大切な要素をおもしろおかしく語ってくれます。ちなみに奥泉さんがボケでいとうせいこうさんがツッコミです。

プレーンソング / 保坂和志

ふとした時に読み返したくなる本をというご要望だったので保坂和志さんの『プレーンソング』を選んでみました。殺人事件もなければ恋愛もなく、ほんとに何も起きない小説なんですけど、不思議なものでこれがめちゃくちゃおもしろいんです。個人的になにか考えが詰まったときなどにこの小説をパラパラとめくって考えを整理したりするので、かなり個人的な好みによった選書になっています。

殺戮にいたる病 / 我孫子武丸

このかたのご要望は大どんでん返しのある本だったので、ミステリの名手である我孫子武丸さんの『殺戮にいたる病』を選ばせていただきました。こちらもミステリ大好き書店員の諸星めぐるによるセレクトです。まさに最後の最後で大どんでん返しが待ち受けている一冊です。多くの方が記憶を消して再読したいと切望するほどの衝撃が待っていますので、是非最後までお読みいただけると嬉しいです。

百年文庫57『城』(短編アンソロジー)

ふだんは小説を読まれないかたより小説が得意ではないので短編集をというご要望をいただきましたので、テーマに分けて世界中の短編を集めた百年文庫の『城』を選んでみました。ムシル、A・フランス、ゲーテと、名作家の城にまつわる短編小説収録されています。はじめから読まなくても大丈夫です。パラパラと捲って読めそうな短編から読み進めてみていただければと思います。

和辻哲郎随筆集 / 和辻哲郎

VTuberが好きなかたよりyoutubeの分析に関する本をとのご要望をいただいたのですけど、最新技術に関する本となるとあまり気の利いたものが提供できそうになかったので、個人的に日本文化とVTuberの関係性を語る上で大変示唆に富む随筆『面とペルソナ』が含まれている『和辻哲郎随筆集』を選んでみました。和辻哲郎の歌舞伎・浄瑠璃・能に関する日本文化に関する横断的な分析は、VTuberの黎明期に盛んに言われた「VTuberは現代の操り浄瑠璃だ」という言葉に説得力を与えます。VTuber好きの方であれば興味深く読める一冊です。ちなみに『面とペルソナ』は青空文庫でも読めます(…たぶん)。

数学の贈り物 / 森田真生

SFを愛読されるかたより新たな考え方を知るために普段読まない本をとご要望をいただきましたので、独立研究者の森田真生さんの随筆集『数学の贈り物』を選んでみました。研究テーマである数学をきっかけに著者が生の豊かさを再発見していく過程を記しています。19の短編にわかれているので読みやすい。なのに数学に限らずさまざまな学問を横断的に語っているので得るものは大きいです。

急行「北極号」/ C・V・オールズバーグ

癒しで本を読むけどだんだんと文章を読むのがしんどくなってきたという方に選ばせていただいたのは、アメリカの児童文学作家C・V・オールズバーグの『急行北極号』です。暗い夜空にぼうと浮かぶ汽車のあかりが不思議な落ち着きを与えてくれます。子供向けの絵本ですが村上春樹訳の文章も気が利いていて大人も十分愉しめます。

プラットフォーム / ミシェル・ウェルベック

純文学をよく読まれるかたに知る人ぞ知る本をとご要望いただいたので、海外文学を読まぬひとにとってはマイナー、海外文学が好きなひとにとっては超メジャーなフランス作家であるウエルベックの『プラットフォーム』を選ばせていただきました。もしかしたら既読かもですけど…まあこの本であれば二冊三冊あっても損はないでしょう。今後ますます世界的な注目度が高まっていく21世紀を代表する小説家のひとりだと思いますのでこれを機に是非お読みいただければと。

アーサー・マンデヴィルの不合理な冒険 / 宮田珠己(画:網代幸介)

装丁が美しい本をというご要望だったので、宮田珠己さんの『アーサー・マンデヴィルの不合理な冒険』を選んでみました。30才から絵を書き始めたという網代幸介さんの摩訶不思議な装丁デザインは2021年に出版されたとは思えぬ豪華さです。もちろん小説自体もめちゃくちゃ面白いです。主人公は ペテン師の亡き父が書き残した嘘っぱちの王国を探し求めて無能な仲間と魔法の指輪(蠅を遠ざけることができるだけ)とともに旅に出るというストーリーです。

儚い羊たちの祝宴 / 米澤穂信

ホラー要素とミステリー要素がある本をというご希望だったので米澤穂信さんの暗黒ミステリー『儚い羊たちの祝宴』を選んでみました。こちらはホラー大好きな書店員萬金丹チカ子によるセレクトです。初期の米澤さんは古典部シリーズなどライトな青春ミステリを得意とする作家のイメージがついていますが、本作は本格派の古典ミステリを彷彿とさせる重厚感があってこれまた最高な一冊です。

昔話の深層 / 河合隼雄

森見登美彦さんの小説をよく読まれるかたから自分では買わないようなものをというご要望をいただいたので、臨床心理学者河合隼雄先生の『昔話の深層』を選んでみました。副題にあるようにグリム童話を題材にして物語の奥に潜む心理を浮彫りにするとともに「じゃあ自分はどうなんだろう?」と自分の中に潜む深層心理まで明らかにしてくれる一冊です。また物語を読む解像度も上がります。

選書をやってみた感想

いかがだったでしょうか?この中で一冊でも興味の湧く本が見つかったようであれば幸甚です。選書をやってみた感想は、とても面白かった半面、自身の引き出しの少なさを痛感してちょっと落ち込みました。これからも精進を重ねて次はちゃんとした選書を実施できればと思っています。で、最後に営業です。弊社の書店員はyoutube上で書籍に関する配信を行っています。文豪入門・名著朗読・SF特集などいろんな切り口で配信していますので是非お気軽に遊びにきていただけると嬉しいです。以下に各書店員のyoutubeチャンネルのリンクを貼っておきます。それではみんなで読書の秋を楽しみましょうー!

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