【商売のタネ】非合理な行動に意味を持たせる
昨日の現場での話。
熟練の職人による作業であったため、想定より早く完了できた。その際に職人の経験による知恵を垣間見ることができたのだが、わたしとってそれはその日の作業による利益より大きな収穫となった。
ちょっとした知恵であるのだが、それを商売のタネとして転用すれば、今以上に仕事の幅が広がる可能性が想像できたのだ。こうした発見はいつだって現場に転がり落ちていることが多い。
それゆえ、わたしは時間が許すかぎりわざわざ行く必要のない現場に足を運ぶのだが、それを生産性の観点から見て「非合理」と決めつけてしまう風潮が商売の世界にあるのだ。
単純な理想として、経営者であるわたしがもっと経営にたずさわる業務にコミットした方が合理的である。しかしながら、一見して非合理でムダのように思える行動にも意味があとからついてくることもある。
大きな会社のように各パートに分かれて分業制の業務を行えるならまだしも、こちとらほぼ一人の微粒子企業である。商売にまつわるすべてことをほぼ一人で行う必要があるゆえ、ムダは徹底して削った方がいい。
だが、実際に利益の源泉となる現場を他人に任せて、経営者は会社でオペレーションばかり行っていては、発想や思考そのものが机上の空論になりかねない。
ゲーム感覚で駒を動かしてみても、うまくいかないケースが発生してしまうのは、圧倒的に現場感が欠けているからとわたしは思うのだ。会社の中にばかりいて、現場に足を運ばない社長を「穴熊社長」と称したのは経営コンサルトの一倉定氏であるが、社長の考える理想と現場とのギャップを埋めることができなければ会社は徐々に衰退していく。
現場の空気以外にも、冒頭の例のように、次の商売の柱になるかもしれないヒントは現場に落ちている。会社のとって一番の当事者意識をもつ社長だからこそ、現場での変化がヒントとなって目に飛び込んでくるのは常に商売のアンテナをたてているからこそ。
それは会社の中にいて自分の頭の中で妄想を働かせても得ることのできない成果のひとつでもある。頻繁にあるわけではないが、昨日のような1日があると、誰も気がついていない宝物を拾ったようで気分が高揚する。
それがその後花開くかは別として、こうした体験は「非合理も悪くない」と思わせてくれるのだ。
結局は生産性とのバランスになるのだが、軽視されがちな非合理な分野にもたまに目を向けることも重要である。
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