見出し画像

冗談が言える余裕は場の空気をつくる

仕事場でのスパイスとしてジョークや軽いおふざけを挟むと場の空気が和み、円滑になる効用がある、という話

本日の現場で作業してくれた作業員は発注元からも人気が高い。仕事の精度やスピードも人気の要因ではあるが、それよりも現場の空気をマネジメントする能力に長けている。

現地に着くと、その人気作業員と見慣れぬ作業員の二人がすでに待機していた。聞くと、見慣れぬ作業員はこの4月から外注先の施工会社に入社した新人なのだそうだ。

簡単な挨拶を済ませ、早速作業に取り掛かる。人気作業員がまず現場の状態と作業工程をチェックし、下準備を整える。

そして新人に作業の説明をしているとき、人気作業員は彼が緊張から少し顔がこわばっているのことに気がついたのだ。2ヶ月の研修の終えてこの6月から現場デビュー、この日はさほど難しい作業というわけではなかったのもあり、新人をメインに仕事を進めてみる試みのようだ。

そこで人気作業員「大丈夫、ちゃんと見てるから」と声をかけ二カッっと笑顔で彼の肩を軽くたたく。

そこから本日の作業がスタートしたのだが、作業歴に20年の差があるにもかかわらず、人気作業員が敬語で彼に話し始めたのだ。「○○さん!まずこれを外せばいいっすか?」その瞬間、緊張もほぐれ新人も説明書を確認しながら手を動かし始めた。

その後も終始、逆転先輩後輩設定のコントのようなやり取りが続く、後輩のふりをした人気作業員は敬語を使いながらも時折サポートするようなヒントを彼に与え、場の空気はゆるいながらも作業は効率よく進む感じのいい雰囲気に包まれていくのであった。

ただでさえ緊張する場面で教えることもせず、ただ高圧的な空気を醸し出す先輩職人は多い。「仕事は見ておぼえろ」というスタンスなのだが、その過度な緊張感からケアレスミスを頻発する新人がほとんどだ。そして行く末は心が折れてしまい、辞めてしまうケースが多々あるが、それを厳しいふるいにかけていると勘違いしている人も多いのがこの業界である。

確かに、昔はそうであっただろうし、ある程度の緊張感の中、技術を磨くというメンタルも必要だろう。しかし、そのような圧を加えなくとも、技術を習得し、独り立ちした後には試練など勝手に向こうからやってくるのだ。

この人気作業員がどう考えているかはわからないが、トラウマを植え付けるより、自信や作業の喜びなどのポジティブな印象を植え付けて勝手に成長してくれる方が効率的であり、そして健全だと思うのだ。

休憩時、人気作業員は作業もひと段落し、ホッとしている新人に対して「○○さん、何飲みますか?」とリクエストを聞いた。恐縮している新人に「コーヒーでいいっすか?」と確認をとり、ダッシュでコンビニへ向かった。

笑顔で戻ってくるなり「こんな蒸し暑い日に間違ってホットを買ってきちゃいました!」と熱々のコーヒーを手渡す冗談は少しひどいな、と笑ってしまったが、これも後々の彼らの思い出話のネタになるかと思うとなんとも微笑ましい光景であった。

ヒヒヒっと笑う人気作業員のイタズラな笑顔と額に汗をかき、熱いコーヒーをすする新人の関係性が今後どうなっていくのかを楽しみに思う私であった。

緊張と緩和、本当に仕事ができる人は場の雰囲気を察知して、ムードをつくる


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?