名画ってなんだ? 序章
「名画」と言われて、あなたは何を思い浮かべますか。
なかには古い名作映画を想像する人もいるかもしれませんが、ここで言っているのは名高い絵、優れた絵という意味で使われる「名画」という言葉の方です。
「うーん、急にいわれても」ととまどう人もいるでしょう。ではいくつか実際の作品を挙げてみるので、それぞれの作品が名画といえるかどうか判断してみてください(すべてパブリックドメインとなった作品画像を使っています)。
宗教画でありがたい感じはするけど、名画かと言われるとちょっと迷うかなぁ。でも名画だろうなぁ。
ダヴィンチ!名画!文句なし!
名画っぽい!うまいし。
名画かなぁ、なんとなく。クールベは聞いたことあるし。
うん、名画!
これも、名画!
名画?うーん。ゴーギャンだし、名画になるのかな。
名画とは違う気がする…。
これも名画とは違う気がする…。
すいません、勝手にみなさんの反応を予想してコメントを書いてしまいました。意見が違う人もいるでしょうが、当たらずとも遠からずでは?
この結果から、なんとなく推測できる「名画」の条件は
ヨーロッパ美術
イタリア・ルネサンスから近代の印象派あたりまで
著名な作家であること
写実的な描写技術が高いこと
このあたりではないでしょうか。
さて、過去現在タイトルに「名画」と付く書籍は、山のようにあります。
例えば1951年に、画家であり美術評論家でもある大久保泰が著した『西洋名画の話』(美術出版社)では、16点の名画が紹介されています。その作家を見ると、ジオット(ジョット)、ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエル、ティチアン(ティツィアーノ)、ヴェラスケス、レンブラント、ダヴィッド、ドラクロア、コロ―、クールベ、モネ、セザンヌ、マチス、ブラック、ピカソ。
また、現在刊行されているものとして『世界の名画 名画にまつわるエピソードから巨匠たちの生涯まで。』(メイツ出版、2010年)では、「これだけは見ておきたい、知っておきたい世界の名画&画家」として、ゴッホ、モネ、ルノワール、マネ、セザンヌ、ミレー、ダ・ヴィンチ、ルーベンス、フェルメール、ドガ、ピカソが挙げられています。
子供向けの本で言うと『小学生のための「世界の名画」がわかる本』(メイツ出版、2018年)では、「誰もが知っているこの画家・この名画」として、ダ・ヴィンチ、ゴッホ、ルノワール、モネ、セザンヌ、マネ、ミレー、ピカソ、葛飾北斎、歌川広重の名前が並んでいます。
きりがないので、ひとまずこれぐらいにしましょう。
やはり名画と言われて私達がしっくりくる条件としては、先ほど挙げたうちの
ヨーロッパ美術
イタリア・ルネサンスから近代の印象派あたりまで
著名な作家であること
が多くの場合、あてはまるということになります。また「写実的な描写技術が高いこと」は、絶対条件とは言えないようです。
私達が絵を見て、その良し悪しを判断する基準には、どうやら西洋美術史の価値観が影響しているようだ、ということが何となく分かりますね。
なぜ、東洋の島国に住む私たちの美の基準に、西洋の価値観が入り込んでいるのか。次回、掘り下げてみたいと思います。
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