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出光美術館「若冲と江戸絵画」を10倍たのしむヒント

こういう釣りタイトルはいけませんね、反省。「1.5倍」くらいにしておいた方がよかったかな。

さて、現在出光美術館で開催中の展覧会「江戸絵画の華」(第1部・若冲と江戸絵画)が話題ですね。

なぜかといえば、出光美術館が一括して譲り受けたプライスコレクションの初お目見えとなる展覧会だからです。
わざわざこの記事を読もうとしてくれている人に「伊藤若冲とは」「プライスコレクションとは」という説明はいまさら必要ないかと思うので、さくさくいきます。

日本美術、とくに若冲を中心とする江戸絵画の一大コレクターとして知られるアメリカ人のジョー・プライスさん(御年93歳)。若冲を愛し、日本文化をリスペクトし、奥様とともに生涯をかけて作品の蒐集を続けてきたことで有名です。

プライスさんと言えば、記憶に新しいのは3.11の震災の時ですね。

アメリカ・ロサンゼルスに住むプライスご夫妻でしたが、震災で深く傷ついた東北地方のために何かできることはないかと考え、珠玉のコレクションの中から100点の美術品を東北の美術館・博物館に貸し出し、被害にあわれた方を勇気づけようとしました。
それが仙台市立博物館、岩手県立美術館、福島県立美術館の3館を巡回した展覧会「若冲が来てくれました/プライス・コレクション/江戸絵画の美と生命」です。この時は、プライスさんの呼びかけに応じた、各国立博物館や宮内庁、MIHO MUSEUMの美術品が東北に集結するという胸熱の展開となりました(裏で動いたのは日本経済新聞社)。
そして作品を貸すだけでなく、プライスさんご夫妻も来日し、各会場でサイン会など行っていました。そういうことって、忘れられないですよね。

プライスさんが一代で築き上げた日本美術コレクション。ご高齢となったプライスさんは自分のコレクションの行く末を案じていたと聞きます。
できることなら日本のしかるべきところに譲り、作品達を日本に里帰りさせるべきだと考えていたとか。作品の価値を正当に評価し、また保存技術という点でも信頼できるのは、やはり日本だということもあったのでしょう。
美術館業界内では、「プライスコレクションの行き先は、関係の深い○○では?」「いや、財力がある○○の可能性も」みたいな噂が飛び交いましたが、蓋を開けてみればノーマークだった出光美術館でした!(プライスコレクションのうち190点が出光美術館へ)
なんでもクリスティーズジャパンが仲介したそうですね(出光に作品が落ち着くまでには色々な駆け引きがあり、現在裁判沙汰にもなっているようですが、まぁ作品には関係ありません。やっぱり巨額が動くとなると、庶民には分からぬ苦労がありますね…)。

出光美術館では、新収蔵のプライスコレクションを披露する展覧会を、もともと2020年に開催予定でしたが、コロナ騒ぎで中止を余儀なくされていました。
それがようやくいま!晴れて開催となったわけですね!

若冲がいまのような大人気絵師となるはるか前、研究者たちからも色物的な存在として軽視されていた時代から、おのれの直感を信じて作品を買い集めたプライスさん。
プライスさんがそうやって蒐集していなければ、その大半は間違いなく散逸して、所在不明になっていたはず。わからないものですね。

数奇な運命をたどって、日本に戻ってきた江戸絵画の傑作たち。
そう考えると、この展覧会ワクワクしてきませんか?

いかん!
作品の見所を語ろうと思っていたのに、プライスさん話で引っ張ってしまいました…。
長くなってしまったので、次回、若冲のあのモザイク画(升目描き屛風)についてだけもう少し語らせてください。今度こそきっと1.5倍ぐらいは展覧会が楽しめるようになるはず(笑)。

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