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キーパーソンは作家の遺族

古美術は別ですが、近現代美術の展覧会を企画する上で、無視できない存在が作家の遺族です。
今日は、芸術家の家族と学芸員のつきあいについてサクッと語ります。

作品の所蔵者として

作家が現役で活躍されている場合は、当然その作家本人とやり取りをするわけですが、物故作家の場合、作家の遺族とのやり取りが大事な仕事となります。

なぜなら、その作家の作品を遺族がまとめて所蔵しているケースが多く、作品をそこから借用できないことには展覧会が成り立たないからです。

作品の管理のために法人化していたり、縁のある市町村に一括寄贈して記念館や美術館ができていたり、といった例もありますが、たとえそうなっていたとしても作品の運用については遺族の意見が強く反映されるので、やはり遺族との交渉なくしては話が進まないということになります。

作品の著作権者として

作品自体は美術館が所蔵している、という場合でも、作者の著作権が関わってきます。

著作権については、以前くわしく書きましたが、作者の没後70年間は著作権保護期間にあたります。この期間中は、たとえ美術館が所蔵している作品であっても、その画像をポスターや図録に使うためには著作権管理者の許可が必要になります。

で、たいていの場合、著作権は遺族に譲渡されるので、図版使用の許可を遺族に申請しなくてはいけない、というわけです。

著作権使用料やクレジット表記など条件がきびしい遺族との交渉も気を使いますが、家族関係・姻戚関係がややこしく(奔放な人生を作家が送った場合にありがち)、遺族の誰が著作権管理者なのかフワフワしている場合もあり、それはそれで交渉相手が定まらず苦労します。

まとめ

いろいろ言ってしまいましたが、作家遺族とやり取りして感じるのは、作家への強い尊敬の気持ちです。配偶者→子→孫と代が移るにつれて、遺族の対応もビジネスライクな方向にいく傾向はありますが、作家を伴侶として支えた奥様などは、並の人間は立ち入れない強い想いがあります。

生涯をかけて夫の創作活動を支え、夫が亡き後も世間から正当に評価されることを求めて、活動を続ける。今時の感覚からしたら考えられない関係性ですが、それぐらい作者と一心同体となっているんですよね。

だから、こちらも作家本人と交渉するのと同じぐらい気を引き締めて、遺族とやり取りをするのです。


バックナンバーはここで一覧できます(我ながら結構たくさん書いてるなぁ)。


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