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19.休息 ザ・バンド

学芸出版社営業部の名物社員・藤原が、書店での何気ないやり取りを手がかりに、自らのロック遍歴にまつわる雑感をつづります。

営業という仕事はとにかく歩く。
書店から書店へテクテク。
ターミナル店ならいいのだが郊外の書店の場合、駅から2キロ以内だと歩く、2キロ以上だと行かない。往復4キロは結構きつい。平均して一日の歩行距離は10キロ~15キロといったところだろうか。当然のことながら休息が必要になる。

先日は「アビーロード」というカフェで休憩。店名どおりいつもはビートルズが流れているのだが、その日はザ・バンドだった。
「あれ?ザ・バンドも聴くの?」
何度か店を訪れているうちにレコード店に勤めていたという店主と言葉を交わすようになった。
「昨夜、ラストワルツを見ていたので今日はこれに・・。カッコいいですよね。あの映画」
僕は頷いた。ゆっくりと「ウエイト」が流れ、一瞬時が止まった。

THE LAST WALTZ/THE BAND(1978)

1976年のザ・バンドの解散コンサートの模様を収めたこのアルバムは、ひとつのバンドが解散するという事実以上に、1976年がロックのひとつの時代を終えたことをも意味する。
1976年に発売されたイーグルスの「ホテルカリフォルニア」同様、ロックを生き方だと叫んできた時代が方向転換したことを象徴するものなのだ。
当時僕は大学を卒業する前で、長い髪を切って企業の面接に向かっていた時でもあるのだ。

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