園長は頑張っていないのか?
保育士が中心のSNSグループやネットの記事には、自園の人間関係や、園長への不満が溢れている。
公開されているものでこの状態ということは、LINEグループや仲良しの集まりでは、一体どんな言葉が並んでいるのだろうか。
人に言えないから、ネットで。という反論もあるだろうが、一時的なスッキリ感は得られたとしても、目の前の現実が変わることなど、そうそうあり得ない。
かつて園長だった頃、園から5kmほど離れた居酒屋の個室での出来事。食事中に、薄い壁越しに、噂話が聞こえてきた。
同席していた客人に気を使わせぬよう、当たり障りのない話で、壁越しの声を遮りながら、噂話の流れに神経を集中させていた。
そんな下世話なことをしてしまうのは、うちの園の噂をしているから他ならない。
ママ友らしき2〜3人。聞こえてくるところによると、また聞きのまた聞きレベルの内容で、幼稚な相槌が響く。
え〜、こわぁい!
なにそれ〜!
私だったら、むりー!
こんな感じで、真相とは全く違うことが実しやかに囁かれる。誤ったフィルターで見られた物事は、まるで真実のように広がっていくのか。と呆れつつ、聞いていたのが私でよかったと、安堵する。
話題に上がっていたクラスの保育士が聞いていたとしたらと思うと、腹が立つ。客人がいなかったら、もしくはあと5歳若かったら、私は隣の部屋に押しかけていたかもしれない。
その一方で、こんな下品な噂に負けるほどの保育はしてはいないと、奮い立つ気持ちもあった。
さて、本題の"頑張っている"という言葉。
私が生きてきた中では、自分がどう見られているか、どんな人間かを確認する一つの指標であったと認識している。
"何を"や"どのように"、そして成果はともあれ、誰かが勝手に評価する時に使うか、自分で慰める時、もしくは言い訳の一つとして登場させることもあった。
頑張っていると言われれば、一時的に安心し、頑張れと言われたらがむしゃらに動く。はたまた、これ以上は無理と落ち込む。まるで、考えない。日本人にとっては、素早く条件反射してしまうスイッチのような言葉だ。
その点で言えば、園長の頃の私は、かなり"頑張っては"いた。
どんな時も仕事のことで頭がいっぱい。
園長会では楯突き、児童相談所や市の担当課に抗議し、児童発達支援の心理士に異論を唱えることもあった。
学会や政治の場でも発言し、20代にして団体の役員もやっていた。
いつも心には"子どもにとって"という信念をおき、それに従っていたつもりだが、そのことで園の保育士や家族に負担を強いていたことは、今になってわかる。
保育園で園長をするということは、決まった枠組みの中で、一緒に働く人たちの幸せを願い、よりよくマネジメント機能を働かせさせることで良かったのだ。
それ以上でも、それ以下でもなく、そもそもそれはすごく難しいことなのだ。
園長時代を思い起こすと、数えきれない苛立ちと数々の無礼、そして挑戦もしてきた。
一般的な常識に照らすと、何でそこまで?と嗜められることも多々あった。それは、保育園の制度の中で出来る"福祉"も"教育"も、あまりにも限定的だと感じていたことに起因する。
しかし、当時の私が園長として望んでいた"福祉"と"教育"は、"保育園"としての役割を超えていただけなのかもしれない。
だからこそ、今の私は園長が"頑張っているかどうか"よりも、自分の置かれた環境での仕事を"全う"することの方が、結果"みんなを幸せにする"ということを、改めて感じている。
きっと、どこの園の園長も"頑張って"はいて、ただそれが保育士の望む方向性や価値観に合わないだけなのかもしれない。
勉強したいと願う保育士にとって、園内研修は感謝の対象であっても、現実を変えたくない、学びたくない保育士にとっては、不満になる。
休みを多く取れる工夫をしたにも関わらず、保育にあたる人が足りないと嘆かれる。
現場では大した工夫もないままにもっと人を増やして欲しいといわれる。増やしたら増やしたで、即戦力にならないとか人見知りをするとかいわれる。
どの例をとっても、園長が頑張ってないとは、私は言い切れない。
私が園長だったとき。
全員が仕事を辞めてしまっても、最後の1人になっても、子どもを見る覚悟でいた。きっと、ほとんどの園長はそう思っているはずだ。
園長としての頑張りかたは、どこでも学べない。そして、今頑張るべき方向性は、園のステップやタイミングによって千差万別だ。
どんなにいい研修を受けてきても、自園の課題に反映できないのなら、熱があるのに腹痛の薬を飲んでいるようなものだ。
だから園長には、やみくもに頑張らないでほしい。
園長は頑張っているし、もっと賢く頑張れる。
そのことを、もっと知って欲しいし、保育士が幸せになる保育園を育てられる、園長になって欲しい。
2023.10.08 がじゅまる学習塾
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