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中国人に日本の塾事情を話した話

最近・・・というか、ここ数年僕が興味持っていることに民族性とか文化人類学的なテーマがあるんですよ。

なので、こういう本も好きです。

日本という国にいても、仕事で多文化世界に触れることは珍しくはなくなって久しいです。仮に日本人だけのコミュニティであっても、育ってきた環境が違う故のコミュニケーションのずれ、それに伴う幾重にもわたる擦り合わせはあちこちに存在していると思います。

ただ今回は、民族性とか文化がどーの…という話をしたいというよりは、思い出話に近いかもしれません。


【異国の人が教室へ】

前職で神奈川のエリア責任者をしていた時、当時の担当役員から唐突に面白そうな提案があったんですよ。

偉い人「曽我くんさ、ウチ、新入社員として事業開発部で3名中国人雇ったのよ」

ソガ氏「あ、そうなんですね」

偉い人「で、日本の塾ビジネスとか教室運営のコツみたいなものをそういう人にも面白く話せる人誰だろう?って役員会で話題になって、曽我くん推薦したのよ。」

ソガ氏「あ、そうなんですね」

偉い人「近々事業開発部から連絡いくから、中国からの来客よろしくね!」

ソガ氏「あ、はーい」

というわけで、ある日唐突に中国から日本にやってきた3人のビジネスパーソンに1日塾でのお仕事を教えるという、ある意味貴重な体験をすることになったのです。


【真面目にして勤勉なチャンピオン】

3人が訪問するその日。
僕以外の職員は、皆どこか緊張の面持ちでした。業界は意外と(?)閉鎖的なので無理もありません。

僕はというと、非日常にはなんとなくワクワクしちゃう性格なので(笑)、なんだか楽しい1日になりそう・・・とそわそわしてながら彼らがやってくるのを待っていました。

お昼の少し前くらいでしょうか、彼らが待ち合わせをしていた教室にやってきます。男子1名と女子2名(だったかな?ここは記憶が曖昧・・・)の計3名とお世話係の本部職員とご対面です。

中国の3名「本日は1日、何卒よろしくお願い申し上げます!!!」

・・・印象はですね、とにかく真面目。そして丁寧。びっくりするくらい。日本人もだいぶ見習った方が良いかも、と思うくらいでした。

最初の自己紹介的な話を聞くと、男子1名は母国中国で行われたビジネスコンテンストでグランプリ受賞をして日本に来たのだとか。

・・・チャンプやん。僕と一緒にいて大丈夫ですか?😂

が、チャンプの自信や驕りのようなものは一切感じさせない。それどころか謙虚そのものでした。真面目で、あらゆる会話を聞き漏らすまいとガンガンメモを取っていたのも印象的でした。日本の塾ビジネスのモデルからヒントを掴み、母国で新しい民間教育ビジネスを展開するのだ、と。

僕自身の経歴とか、それまでどんな仕事をして、教室運営でどんなことに気を配っているのか、過去の体験談で印象に残ったこと、彼らの質疑に応答するなどで1時間話をしましょう…と時間をとった時も、質問攻めにあいましたw
なるべく優しい言葉で説明しようとすると、

中国ビジネスマン「先生、漢字で書いて説明してください!」

と説明を遮られ、僕はその度に意味が通りそうな日本の漢字を考えて、黒板に書き連ねていました😂
(彼らは会話はある程度できるが、詳細説明は漢字のほうがイメージ湧くらしい)

とにかく真面目。真面目すぎて、なんでも

中国ビジネスマン「質問してよろしいでしょうか?」
中国ビジネスマン「これは何を意味していますか?」

と聞いてきます。挙句の果てには、

中国ビジネスマン「今からお昼ご飯に行こうと思いうのですが、よろしいでしょうか?」

と、メモを持ったまま聞いてくるので、ちょっと和ませようかなーと思って、

ソガ氏「どうぞ!参考までに『餃子の王将』という中華料理屋があるので行ってみると面白いですよ(笑)」

と、冗談で言ったら、それすらも真面目にメモを取ろうとするので、慌ててお詫びとともにメモをやめさせる、などという一幕もあったほどでした😂


【学び方・学ぶスタンスの違いに驚く】

夕方になり、ちびっ子たちがやってくる時間帯。
その日はちょうど僕の小学5年生向けの授業があったので、その授業を見学してもらうことになりました。

ビシッとスーツを着込んだ、明らかに雰囲気の違う3人が教室に入ってきたので、ちびっ子たちもただならぬ空気に興奮気味でした。

そんな彼らの気持ちは、わざと意に介さないようにして(笑)、いつも通りに授業を始めるわけです。

僕の授業スタイルは以下の二つを常に貫いていました。

①生徒の自立を支援する≒たくさん自分で考えてもらう
②そのために授業中にたくさん質問し、対話から板書を作り上げていく

そして見学に来た人も全員もれなく質問の餌食にされるわけですw
ちびっ子たちは質問がめっちゃ飛んでくることに慣れていますので、いろいろ頭は使っては大変ではあるものの耐性は出来上がっていて、楽しそうに質問を受け止めて対話のラリーが始まるわけです。

ただ、この「質問と対話による授業」が、後ろで見ていた3名にはあまりにも衝撃的であったみたいでした。1回だけ、答えというか意見的なものを聞くような問いかけを、ちびっ子の後に

ソガ氏「せっかくだから後ろで聞いてくださっている先生にも聞いてみようか!」

などと言って話を振ってみたのですが、かなり驚いた様子でうまく答えられる雰囲気は1ミリもありません。ので、そこは軽やかにフォローしつつ話を進めていきました。

授業後。

見学に来ていた3名は廊下を走ってきて、興奮気味にお礼を言うのです。
想像していた授業とあまりにも違っていて、それが衝撃的で、感動した、と。


【学び方を考えた1日】

中国ビジネスマン「まず、授業中に先生に話しかけることがあり得ません!」

え、そうなの?と思いました。普通に。いろいろと話してくださったのですが、その時印象的だった当時の彼らが記憶する中国の授業とは・・・

・基本的に先生が絶対の存在である
・講義中に質問などは厳禁
・先生の話に生徒がついていくスタイル。メモ必須
・先生から質問指名することもない
・わからなければ自分で調べてなんとかする

なんか、僕が苦手な授業を全部詰め込んだようなスタイルだな、と思ってしまったのを覚えています😂

ちなみに僕が質問を投げかけてうまく答えられなかったのも、どうやら上記のようなスタイルに慣れすぎていた&あまりのスタイルの違いに呆然としてたところで指名されて頭が真っ白になったとのこと。

中国ビジネスマン「だから、あの、先生様の質問を無視したわけではございません!大変失礼しました!!」

ソガ氏「いや、そんなつもりで質問したのではなく・・・むしろすみません」

中国ビジネスマン「いえ!とても刺激的でした!ありがとごじゃいます!」

ソガ氏「そうでしたか・・・😂」

先生が絶対的な存在と思い込んでいるからなのか、僕の質問をうまく受けきれなかったことを猛省している様子を見て、逆に胸が痛くなるのでした(笑)


学ぶとか教育って、ほとんどの国は国家の戦略ですからね。出発点も目的も、国の文化や政治的背景に大きく影響を受けるのは考えてみれば当然です。だからこそ、他国における学びはさまざまな文化の違いの中でも瑞々しい驚きに満ちている分野なのかもしれません。

学位や学歴によって収入や社会的地位、就くことのできる職業が大きく変わることは世界規模で見ても、まだ否めない事実だと思います。

ただそれが、技術の発達・オンラインでの繋がりによって、目的や出発点が変わったら・・・そもそもなんのために学ぶのか?も変わってきそうです。最近は技術の発達速度が異常なので、そう遠くない未来に学ぶ意味づけが変わる世界線も見え隠れしていますよね。実際数年前のclubhouseで、この辺のトピックを話している外国人部屋あったんですよね。。

今、あの中国の3人と「これからの教育」を語り合ったらどんな話をするんだろう?なんて、ぼんやりと考えたりもするのです。

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