見出し画像

Greeners インタビュー 1

自粛要請の真っただ中、世間は静かに息を潜めじっと通り過ぎるのを待っていた5月のある晴れた日、ファーマーAkila氏の農場を訪ね、農業や不耕起栽培、コロナに揺れる世の中について氏の思いを尋ねた。有機農業から微生物、岡本太郎、量子力学にまで話題は広がり、気づけば日は落ち真っ暗闇の中、話が尽きることはなかった。インタビューの一部抜粋をお届けする。

話し手 Akila & Yu / 茅ヶ崎八一農園主宰。神奈川県茅ケ崎市出身。幼少期から音楽とサーフィンに触れ、地元の音楽仲間とメロコアバンド「No End Why」を結成。インディーズとして4万枚を超えるアルバムセールスを記録する。解散後はスリーピースバンド「Fly☆81」を経てソロ活動に移行。今は地元で農業と音楽、たまにサーフィンにいそしむ日々。
聞き手 安威 / FUZZBOXX

安威(I)今年は田んぼもやる?
Akila(A) 今2回の耕耘が終わって、6月から水を張って代掻きして田植えという予定。

I)田んぼの無農薬は難しくない?
A)無農薬の稲作しか研修で教わっていないっていうのと、 まわりの田んぼも有機農家さんばかりなので無農薬でやることに問題はないんだけど、自分の田んぼは初めてなので簡単ではないと思う。有機とか慣行とかよりも、田んぼも畑もきっと「毎日ここにいる」という姿が大切なんだと思うんだ。たまにしか来ない人がいきなり無農薬を始めるのはやっぱり気分は良くないと思うし。これってサーフィンも同じで、ローカルの人たちがいて、そこにたまたま現れた人が大勢でワーっとやられたらきっと怒るよね。だから毎日そこにいるって大事なんだ。毎日ここにいれば農法に関係なく仲良くなれる。そういうことなのかな、て思ってる。

I)どうして茅ヶ崎で農業を?
A)茅ヶ崎は海から離れてもされど茅ヶ崎なのでお野菜を売って家賃を払って行くのは結構大変な土地なの。だから最初は南房総とか引っ越そうかな?とかいろいろ考えてたんだけど、もしボクがどこかの地方に行ってこういう事を始めたら、結局それって田舎暮らししなきゃできないんだ、というメッセージになりかねないなって思ったの。そうじゃなくて、自分が住んでる町でもできるよっていうことを表現したかったし、挑戦したかった。ボクができるんだから誰でもできるんだよ、っていうメッセージを誰かが自分事化してくれたらいいなっていうのもあって。自分の出生地でもある茅ヶ崎の幼少の頃に暮らしていた芹沢という地域に就農したんだ。

I)本当にだれでもできる?アキラだからじゃない?
A)農を生業にする必要はないの。ボクが言ってるのは農業やろうよとか、農業を盛り上げたいという気持ちも全くなくて。純粋に農を纏った生き方、多様性のある微生物を纏った生き方のほうが自分にも環境にもいいと思うからみんなやった方がいいなって思ってる。自分で食べるものを自分で作るのがいいよね。そうすると現段階でしゃべってる今の自分のところまで簡単に来れる。

画像1

I)家庭菜園でトマトを育てるよりスーパーで買う方が安いよね?
Yu(Y)やっぱり自分で育てたらたとえ化学肥料を使ったとしても、それを食べるときに家族とトマトの話をしながら食べると思うの。でも買ったトマトはトマトの話しながら絶対食べないよ。そこが全然違って。食べるものって、動物もそうだけど今はなんでも簡単すぎて、目に見えないところで色んなことが行われすぎてて、すごく敬意が薄い。だから色んな問題が起こってて、コロナも。別にコロナも宇宙からビューンときてみんなを大変にしてる訳じゃない。それは、地球の生き物から出たものだから、もしコロナウィルスが地球にとってNGだったらもう存在してないけど、地球がOKしたものしか地球には存在できないのでコロナもヒトもOKどうしの関係としてとらえないといけないし、野菜や肉や卵を食べるときにもっと考えないといけない。例えばこの卵を生んだ鶏が何日生きられたのか知らないじゃん。このお肉は何カ月前に捌かれたかわからないじゃん。でも今の時代、知ろうと思えば知ることができてすごく嫌なものが見えちゃう。それって自分が今まで通りの生活をするのにすごく不都合なこと。それを知っちゃったのにまだそれをやるって自分のせいじゃん。それって悪いことだよねってわかってるけど食べちゃうって、自分に矛盾が生まれるでしょ。だから本当は知ってたり、知ろうとしなかったりするという意識的無知になろうとしてる。全員。わたしも。だから商品って売れるわけ。健康なお肉ですよ、って消費者が信じてくれるから毎日スーパーでいっぱいお肉が売れる。でもちょっとカーテンをめくればそうじゃないことが簡単にわかる。で、今まで通りの生活をしたいと思ううちはみんなそれを見ないようにするんだよ。でもそのカーテンをめくって、どこをめくるかは自由だけど、わたしたちはそれをめくってそれを有りってしない生き方ってどうだろう、って考えたときにやっぱり自分で土壌をまた豊かに戻して暮らしていくのが自分たちのためでもあるし、環境のためでもあるし、子供たちの未来、どういう気候になっていくかを考えると今やっとかないといけないな、って切実に思うの。だから今、やるべきことをやってる。でも車にも乗るし、ガソリンが環境に良くないってわかってるよ。でも乗るじゃん。そこは見えないふりをしちゃうの、わたしも。だから全部のカーテンはめくれないけど、ここは見とかなきゃ、ってところはめくってみる。

A)人って幸せになろうと努力してる気がするのね。で、豊かさや幸せを求めて良かれと思ってやってきてることが意外とそうでもないよ、って話なんだ。戦後の農業や価値観を否定する気持ちはなくて、その時々、必要な農業の在り方があったけど、今は食糧難ではないし、化学肥料を撒いて大量生産する時代ではない。だから今、僕らみたいな新規就農者に求められているのは既存の農業ではないと思うんだ。今の政治はバブルを経験している第一次ベビーブーム世代が主となってなんとかまたその時代に戻したくて一生懸命やってるようだけど、レコードを逆回転させるのと同じでなかなかうまくいかない。自然の営みってレコードみたいにゆっくりと回ってるの。そこに乗っかれば楽に回れるから、ってことをここ(畑)が教えてくれる。だからみんな乗っかったらいいのにな、やったらいいのになって思うんだ。なんでかっていうと豊かだから。すごく幸せだから。バブルを知らない僕ら第二次ベビーブーム世代は縄文も令和もコロナも関係なく変わらない本質と普遍的なものを見つめ続けることが大切で、この世代が変わることはとても大きな変化になると思うよ。色んなことが当たり前の流れの中で行われていて、健康や環境を無視して経済のために量産されたお肉を食べるっていうことも、逆回転の感覚があるわけ。で、それをやめることによって、なんだそれが幸せだと思ってたけど全然これでいいじゃん、という感覚にもなれる。

画像2

I)心配なことってないの?
A)未知なことって不安だよ。昨年、育苗ハウスの防風ネットを台風対策で建てたんだけど、台風直撃が2回もあったけど大丈夫だった。それで不安から解消された。もう大丈夫、って安心して。できる対策はやり尽くしたのでこれでダメなら仕方がないというい気持ちだったし、もしこれでハウスが飛んでたら僕には必要ないということだったんだな、と思うつもりだった(笑)。このハウスがなければ温床や育苗ができないんだけど。

I)温床って何?
A)江戸時代から伝わる踏み込み温床っていって、米ぬかと落ち葉と水で微生物の発酵の熱を使って真冬に50度ぐらいまで温度を上げるわけ。そうやって夏野菜の芽を出すんだ。

I)牛の堆肥は使わない?
A)使うのは米ぬかベースの自家製ボカシだけで僕らは動物性のものは何も使わない。一番の理由はお金にするために動物を大量生産するようなスタイルの畜産から生み出された堆肥を入れて生計を立てたいとは思わないから。 結果的にそのような畜産を応援しないという姿勢。成長促進剤の抗生物質が飼料に使われてたりもするし、動物性堆肥にも良いものもあれば悪いものもある。良くないのならやめていくのもいいんじゃないかなと思うし、それを土壌に施してまでお野菜を獲ることに抵抗があるんだ。入れなくても育つしね。

I)さっき畑の土を踏んだらとっても柔らかかったけどなぜ?
A)ミミズや微生物のおかげ。草を刈るとそれをミミズや微生物が分解するの。草を敷いてゆっくり肥やしていく。微生物は直射日光が嫌いだから、土をなるべくハダカにしない。で空気が好きで。好気性の微生物や菌って空気感染っていう言葉があるくらい空気中にもいるの。窒素もここにあるわけ。人間は窒素を直接取り込めないので、微生物が一旦分解して植物に与え、その植物を人間が食べることによって窒素がアミノ酸になったりタンパク質になるわけ。で、どうすれば空気中の窒素を土に取り込めるのかを考えたときに、空気って条件によって水になったり氷になったりする。だから草を敷いたり、朝の空気が露になったときに湿ったその水で微生物や窒素を土壌に入れていくイメージ。そうやって環境に対して条件をつくっていく。あとは僕たちの腸内と一緒で微生物がやってくれるの。やってくれてんの。そういう微生物のエネルギーに持ちた土壌を1反でも多く再生させて最終的に自分もこの土に還ればいいかなって思ってて。

今ここは3.5反で、基本的には機械を使わないで耕耘もしない、石油資源になるべく頼らないで、石油由来の化学肥料を使わないで、石油が枯渇したらできなくなる方法は避けてる。化学肥料は微生物ありきで作ってないし、窒素・リン・カリのような元素で作ってるから土壌に微生物の多様性がないわけ。そういうお野菜はすぐに腐っちゃうの。持ちが悪いのね。八一農園の畑では野菜自体が発酵食品になっていて、特に好気性微生物っていって空気が好きな微生物がわんさかいて、その子たちの呼吸で発酵していく。人間にとってよいものが発酵、都合の悪いのを腐敗と呼んでいるんだけどこの発酵のサイクルでつくられたものにはエネルギーがすごくある。発酵って微生物の呼吸だから。人間もそうで、腐敗した人間にはエネルギーがなくて、どうやって発酵していくかっていうと能動的に自分から一生懸命取っていくってこと。さっきの野菜みたいに。そういう生き方に切り替えることによって発酵のサイクルになる。あと、生物学的にはウィルスは人間がもともと解毒したタンパク質と言われていて、人間から出たものだから細胞は「お帰り」って受け止めてるのね。敵じゃないわけ。自然界ではある種が増えすぎると淘汰するのね。バランスをとるの。今はそういう時なのかなって思う。じゃあどうすれば淘汰されないの?というと、腸内と土壌を肥やすこと。腸内と土壌の環境は同じとも言われているから、土壌を再生するのは人間のためにも必要なこと。また、人間の細胞一つに対して微生物は9個ついていると言われているから、その細胞に纏った微生物の多様性を保つことが免疫なんだと思う。だから今日帰ってから何を食べるか、が大切なんだ。自分で能動的にエネルギーのあるものを摂ることによって発酵し始める。呼吸し始める。そうすると地球にとって必要な微生物として活かされていくと思う。必要のないものが淘汰されていくとすれば、必要のある微生物として働くべきだと思うのね。自分が微生物だということに気づくべきだね。それぐらい謙虚にいったほうがいいね。

画像3

I)岡本太郎の影響は?
A)岡本太郎ほど僕に影響を与えた人はいなくて、芸術家という言葉が好きになったのが岡本太郎からで、アーティストって万人な感じがするけど芸術家ってすごくいいなって。芸術家って食ってるとか関係ないわけ。さっきの僕の絵は芸術家として描いたの。だから究極の芸術って思う感覚がある。岡本太郎が言いたいのは本質的なこと、普遍的なことをすごくみてると思うのね。'70年の大阪万博で進歩と調和っていうテーマを与えられて、そこに対してアンチテーゼで太陽の塔をつくって、人間なんてちっとも進歩しちゃいない、調和なんていやらしい、馴れ馴れしい、日本人の調和って5対5で遠慮し合うって言われてるけど、本当の自分をぶつけて爆発してできたのが岡本太郎の調和じゃん。全人間的に生きろ、って彼は言うのね。僕が職業に固執しないっていうのは彼の影響もあって。職業を分化されることをすごく嫌がって、あなたの職業は何ですかって聞かれると「人間です」って答えるのね。人間ですってことなんだと思うんだ。全人間的に生きるっていうのは、絵も描くし、歌も歌うし、踊るし、喋るし、畑もやるし、これが全人間的な芸術家だと思ってる。彼がいなかったら僕はこうなってないな。

Y)人間も動物も地球に住んでて、感謝の対象がそれしかない縄文時代と違って、それに生かされてるってダイレクトに気づける生活って今はできないじゃん。だから色んな事に感謝できないかもしれないけど、生きてる地球は同じで、土のものが海に流れちゃう。薬つかって野菜早く育てて、野菜は安全でも雨が降って土の中のものが海に流れちゃう。それが雲になって雨になってまた帰ってきて、循環の中で現代人も生きてるわけで、じゃあどういう土壌だったら環境にいいのか、気温をこれ以上上げないで暮らしていけるのか。ちょっと考えたらこっちの方がいいな、って選択できるの。身体にすごくいい、とかそんなに心配しなくてもいいの。人のことだけ考えたら今は危ないことってそんなにないけど、自分の子供の子供の時代、80年後に2度気温が上がってて。海水や土壌が炭素を留めてられなくなって、植物は炭素でできてて、草を抜かないのはそういう理由もある。今は海が相当キープしてくれてるけど、海水温が上がると炭素が一気に出ちゃって、温度が上がっちゃう。それが80年後に2度上がるって言われてるけど、そうなったらノルウェー辺りに行かないと他は海水に浸かっちゃうのね。昨日まで平気で今日なった、とはなんないじゃん。わたしたちの子供があぁ子供生むのやめよう、って思わせたくないな。だから大人が今できることをやらなくちゃ。

A)今、僕は 45歳でベビーブームの末裔。分母が広いからこの世代が生活様式を変えるっていうのは、すごい影響があるわけ。だから責任もあるわけ。でも楽観的なところもあって、みんながやらなくてもいいとも思ってる。自分がやるかやらないかだけ。やだ面倒くさいしという人も、ちょっと頑張ってみようっていう人もいて、色んな選択があっていい。だけど追いつかないとも思う。一人じゃ。で、意味ないじゃんってクサる訳でもない。究極、ぼかーんってビッグバンみたいのが起きたら一瞬でみんな消えちゃうじゃん。僕の世界では、この身体が消滅しても自分の存在は残ってるわけ。そん時に思考の想念の世界が一瞬に開かれるの。そん時に地球上で自分を形成したものの世界がその瞬間に現れる。シフトする。瞬間移動する。自分の望んだ世界に。このままいったらどうにかなっちゃうんだけど、それでもいいの。それはさっき言った自分の世界をどう作るか、その世界がその瞬間に広がるから。例えば原発推進って言った人が原発が爆発したら、その原発に自分が破壊されるところで生きるわけ。その世界をOKにして作った世界に犯されるわけ。だからその人ことを別に止めない。いいの。その人が次の生でそれを学びに行くんだな、って思うわけ。たぶんここ(畑)が自分の思う世界なの。コロナの自粛で色んな人が来るの。僕がどこか遠い星で起きてる出来事のような感覚かなって言うと、帰り際に「確かにここは違う星にいるようです」って言うの。ここはシフトしちゃってる世界なの。想念がリアルタイムで現実になるから。宇宙のチカラって本当にあるから使って生きてるけどタイムラグがあって、このボディーを離れる瞬間にバーンって現れるから、それが想念、信念なの。何を信じてるか、確信してるかを自分で知っておいた方がいいよって思う。ちょっと一線を越えた話だけど。

A)量子力学的には観察者が観察した時に世界は生まれる。だからコロナの不安にはフォーカスしない。そういう人類で作った社会に生きたいなって思う。どうするかというと、みんなが自分の世界に没頭すること。それを伝えたい。そのために色んな事をやる。音楽や農業はそのための手段だから職業にこだわらないよって。そういうこと。すごく豊かで幸せな波動。そういうところを人は求めていくんだろうから、同じ地球の上で自分のレコードに乗ってやりたいことをやればいい。なんでだろう、なんでうまくいかないんだろう、というときは自然の回転と逆に進んでいるときで、それに気づいたら違う方に向いちゃってるんだと思ってちょっとチューニングしてあげる。今は1反1000㎡を3枚半、それを5枚やろうと思って。手作業で。手作業で5反もやる人はあまりいないと思うけど、この地域だとそれぐらいやらないと。一枚でも多く「アキラ君の畑は種撒けばできるね」っていう土壌を残していきたいわけ、最終的に。そして僕は肥やしになりたいな。

茅ヶ崎八一農園
Hp: https://81farm.organic/
Instagram: @hachiichi_nouen

画像4


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?