冬島いのり

小説 / 絵 / プロテスタントのクリスチャン

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    曽祖父とひ孫の二人暮らし日記です。

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-/小樽滞在記

2024/08/20  札幌へ行った。中央区を通過しただけで生命エネルギーの半分が吸い込まれた。力、無し。  空気の匂いがいいな、ここなんだか懐かしいな、ああ人が眩しいな、すきだな、というようなときに、快く思うだけでなく、なんだか気持ちが痛む。  たぶんこの肉体に油を指さなくてはならないのを、面倒だからと後回しにしていたから軋んでいるのだと思う。  剪定を怠った、と思ったときには本来切るべき枝に栄養を奪われていたりする。うむ。  今日は一日、特になにもしなかった。  植本

    • 言葉が滑って通りゆく/小樽滞在記

      2024/08/19 草刈りをする。空色の翅の綺麗な蝶々がいた。 なぜか川沿いでズッキーニが栽培されていた。  本を持ってきた。  旅行に関係のない荷物が多い。  旅行に限らず、この傾向が強い気がする。弾かれてではなく、たのしくて周縁を好んでいる。  蜜のある花を見つけたら一日中、文字のとおり道草を食っていた。そんなふうにふらふらとすることをどこかで決め込んでいる。もっと軽やかでいたいと思う。  一人だけ荷物がやたらに重くて苦い思いをすることもあるけれど、誰にも知られず魂

      • まるまるとした夏/小樽滞在記

        小樽に滞在する予定ができたので、日記をつけてみようと思います。 関係のない話をしているだけな気もします。  2024/08/17  函館から小樽まで、約5時間の下道を車が走る。  座標の移動がすさまじい。  移動には音楽があればうれしい。どこへ向かうときにもノイズキャンセリングのイヤホンをして音楽を流し、ひたすらに車窓のむこうを眺めている。  考えがなめらかに流れていく。この時間がなによりすきだ。  旅のおいしいところは、数多の人の、膨大な生活が、一瞬で過ぎ去り、訪れ、去

        • 治る植物

          詩、小説、絵をかいている。 書くことをたのしく思えてうれしい。 ここ数日はつかさどるものが違う人の言葉を聞いてショックを受けたり、自分の奥深く、底の裏面にびっしりと涌く暴力性をまじまじと見つめたりした。それでも、徐々に思考の多動に倒れないようになっている。治癒しているのだと思う。確実に変質している。 常により良くありたいと思っているが、そのたび自分の至らなさに言葉を失う。より良く在ろうとすることに頭打ちなど存在しないのだと痛感する。ただの一瞬でも、卓越化を試みたり、衒学的

        -/小樽滞在記

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        記事

          もくもく木蓮

          もくもく木蓮

          清潔な回廊【詩】

          清潔な回廊 レンズを通過してわたしのまなざしは遮断される 雪山で、あなたについて話す仕草を忘れ、うもるよる わたしの剥き出しの魂に落ちたいかづち、これを離さず逃さない 床に落としたアポロチョコにて小指くじく なかなかにチャーミング 目分量の偶発 指でなぞる本の背 戦争と 今めのまえでわらってくれるひと ここにあなたの席を用意しておく これはあなたの席 きずだらけ、すべすべでない肌を寝かしつける 持ち前の孤独でベイブレードしよう、でなくちゃ耐えてゆけぬから ひけらかさずと

          清潔な回廊【詩】

          蜃気楼のかいじゅう【詩】

          蜃気楼のかいじゅう 周縁にて燃えており明るい夜 欠けのいびつさを見るにあれはかいじゅう モールス信号で言わなくていいことを言って叱られるモールス信号で 甘ったるくてすぐに腐ったケーキ 空腹のかいじゅうが泣きながら蹂躙を繰り返す からだにあいた底なしの穴 きみが線を足してこれがイクトゥスになりますように おのれを構成するうつくしい悪意我々はかいじゅうとされている かいじゅうの本質は孤独だがかいじゅうはそれを望んでいないと泣きわめく かいじゅうは気高くそのあまり己を含む

          蜃気楼のかいじゅう【詩】

          歳を重ねるにつれて世界の曖昧さをその身そのままの形で眺めることができるようになった 鋭さを失っているのかもしれないとも思うが、それならば鋭かったときの痛みを大事にしたい

          歳を重ねるにつれて世界の曖昧さをその身そのままの形で眺めることができるようになった 鋭さを失っているのかもしれないとも思うが、それならば鋭かったときの痛みを大事にしたい

          水晶標本.jpg【詩】

          水晶標本.jpg 鉱石これはいつ何時もショーウィンドウの中 反射光がわたしのすがたかたちの真似をする おまへ結晶、そのように背を正すことを覚え みずかき切られてしまってからに綺麗な音色 夢想に奪われてリッチテキストとなる肢体よ 被造物に恥辱を感じて汽笛の音が聞こえるよ 出航だ 蝶々を半紙のごとくやわにちぎって散らばす 人が死んだから受け取った保険花びらの山々 躾を怠ったのでしょう、だってこの子ほまれ 届けが出ていること知って足を早めたら縺れ 私はアンティークとして売り

          水晶標本.jpg【詩】

          月がきれいだったから

          これより下は記録です。 お笑いを見ることがないという話をしたら「お笑いのない世界で生きているってこと!?」と驚かれた 婚姻という法的関係を結ぶ際に“姓を変えないまま一緒にいる”ことを選べない という現状についてあまり考えたことのなかった自分を知る 台風は消滅することもあるらしい 争いや貧しさに重荷を感じていると話したら「神様じゃないのに神様のようになろうとしている」と言われたこと 看護師さんに「元気になるんだよ、頑張ってね」と肩を叩かれる 大衆的な普遍性に還元された

          月がきれいだったから

          蝶々

          二階堂奥歯の「八本脚の蝶」をお守りのように思っていたころがありました。光の通り道を見るように、二階堂奥歯は凛としていて、ずっと遠くをみていたように思います。 かなしさの海があるとして、今わたしは港を、遠くからでも良く見える灯台を探しています。 クリスチャンであることを喜びます。 神様はとてもまばゆい灯台です。そこへ向かうには、ゆっくりと、息をして、沈まないように気をつけて。 自分の精神状態に振り回され(また周りを振り回す)日々が続いており、生活の根底に大いなるかなしみがあ

          羊水 【詩】

          くぐもった声おしよせる波 やわらぐ衝撃 あたらしい ひとの夢みるさみしい夢にて涙になれば あたたかい そうやって うまれなおしてゆくのでしょう まばゆく、たちのぼり 押し戻されて、くだかれて、ほころび この境を飛び越えていった人を思うと むこうへゆくまでに何度おまえを思い出すのか ただしいところへ生まれいづるために行きなさい ほんものの馬に乗って 草花厭わず踏み潰し 薄氷を渡るさなかに 「生まれるまえのほうがきれいだった」 といわれる 氷の罅と一緒に頽れ ただ 帯を締

          船の汽笛

          北海道に住んでいます。 私は私の生まれた時期が冬だったことをこの上なく誇らしく思っています。 冬に生まれるべくして生まれたのだと思えることは幸いです。 冬が好きです。冬はうつくしいから。 ずっと冬でいいとすら思っています。 すべてが無彩色になるし、北の木は背が高く、裸の枝に白い雪がしなだれかかる姿は圧巻です。 この記事は回顧録です。友人と会った日のことを、私が忘れないように、あるいは忘れても立ち返ることのできる地点として、残しておきます。 文字は現実のなにをも動かしませ

          生活に際し

          チョコレートばかり食べています。 日々、みことばを心にたくわえて、神様と共にあり、充足しつつあります。ありがたいことです。 おじいちゃんに、”うつくしい小説を書いていきたい”と言ってからというもの、テレビに作家業の人が映るたびに私を呼び、 「いのり見れ、作家。」 と言ってきます。  だからなにがあるというわけではなく、ただ作家が映っているのを見せたいらしいです。 小説を書くことや、絵を描くことが能動的な選択となった途端、これ以上ないのではというほど楽しくて、仕方がありま

          氷の地層

          はんてんを着ています。 両親が来た際に買ってもらいました。かなり暖かくて、ずっと着ています。 自律神経症状がひどかった時、1日にブラックコーヒーを10杯近くと、エナジードリンク2、3杯を飲んでやり過ごしていました。 今考えるとそれが要因のような気もするのですが、自分の体を痛めつけるやり方でしか、精神の苦痛から意識を逸らすことができなかったのです。 日々祈りつつ、自らの回復を願っているのですが、時折この精神に対処するだけの薬代でいくらかかっているのだろうと思います。 その金