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蜃気楼のかいじゅう【詩】

蜃気楼のかいじゅう

周縁にて燃えており明るい夜
欠けのいびつさを見るにあれはかいじゅう
モールス信号で言わなくていいことを言って叱られるモールス信号で

甘ったるくてすぐに腐ったケーキ

空腹のかいじゅうが泣きながら蹂躙を繰り返す
からだにあいた底なしの穴

きみが線を足してこれがイクトゥスになりますように
おのれを構成するうつくしい悪意我々はかいじゅうとされている
かいじゅうの本質は孤独だがかいじゅうはそれを望んでいないと泣きわめく

かいじゅうは気高くそのあまり己を含むたくさんの光を壊しました
かわいそうに かわいくてかわいそうに不憫だ 撃つな!

蜃気楼が車線を逆走するも誰ひとりとして口つぐみ

夜明けの表面化散乱 気まぐれに照らされるでこぼこのせなか

かつてきみの座っていた椅子がいつのまにか墓石になっていた
見渡すとみな視界の悪い中に墓石墓石亡骸墓石
見晴らしの悪い墓地でごめんね海になれたらよかった

ひとしきり暴れたあとかいじゅうはかつて墓だった石ころを抱きしめた
泣き腫らしたまぶた もっともっと凶暴にみえるね
死体の味をおぼえたかいじゅうは倫理を害すとして撃ちころされました
遺体から出てきた一粒の結石これがかいじゅうの悲しみの源とされています

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