部屋

随分遠くまで来てしまった。
何処まででも行ける日や、自分には何処に行く資格もないと思う日。気付けばまた一人になったり、見ることの出来ないものを見ようとしたり、している。

起きる度、一瞬ここはどこだと誰ともなく頭の中で問う。ここはどこだろう。大人のいない場所。18の私達が、ドンキの地下1回で私に無防備に笑いかけている。何処でも行けるのは、今だけ?自由は、ここだけ。

好きな物をシェアできなくてもいい。得意なことがお金にならなくてもいい。死ぬ前に、多くの人に覚えて貰わなくてもいい。
世界と、繋がらなくてもいい。
孤独を隅まで見尽くして、今より多くの語彙を知って、笑いながら嘘を言う日もあって、苦しみを見せることなく、誰かの星になるのだ。

寝ても醒めても、私を救った言葉はいつも誰も言わないことを言い切ってくれていた。世界に要るのはそういう言葉だけ。
やさぐれた心が信じるものは、結局、誰にも言わない秘密だけ。
いつの誰かも分からない幼い声のような、懐かしさを握り締める。緊張と高揚と後ろめたさの入り組んだ約束。

悲しいことではない。
忘れることは、変わることは、老いることは、離れることは、近付けなかったことは、分かっていなかったことは、間違えたままであることは、出逢うことは、慣れることは、眠ることは、戻れないことは、思い出すことは。

所詮一番大切なのは、

人々はめいめいにそう言って自嘲と嘲笑を口元に浮かべながら、文字を打っている。空っぽの喧騒から離れたとき、果てしない孤独に落ちていく。
このまま歳をとっていくのかと節目の度に漠然と思いながら、居場所のない喧騒に埋まってやり過ごす日々。
それでも時にはこれを薔薇色の人生だと思ったり、或いはどうしようもなく退屈だと嘆いたりして、持て余しても足りないばかりの、無い物ねだりのようであったり。

発見より発想より、どこかから選ぶ作業を繰り返している。相応しい物を考えて、自分の感性と同等なほど大切なものは増える。時には寂しくなりたい?時には虚しくなくなりたい?

ほんの一瞬、みながただ自分一人の言葉が持てるときが来るとしたら。

初めて好きな音楽に出会った時に感じた、
自分自身のためだけのものがようやく見つかったような、初めて自分が許されたのだと言われたような、
泣きたいような、叫びたいような、生きたいような、
言葉を忘れて涙を誘うような、そんなものであれたら、という願い。




この記事が参加している募集

#自己紹介

230,405件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?