「夜の雫」+「夜に残る」(連作詩)
以前掲載した詩と関連しているので二つとも載せます。今回の「夜の雫」は編集前のオリジナル版です。新しく出す作品は下の「夜に残る」の方です。ちなみに「夜の雫」は女性視点で、「夜に残る」は男性視点となっています。よろしくお願いします。
編集版はこちらです。
「夜の雫」
夕日が差し込む教室 またあなたはうつむくの
私の発した何のとりとめもない言葉から
驚くほど鮮やかな色を見せたりするの
青空を背景に快活に笑う君が好きだったと
どうしてもう過去形の告白をしたりするの
私が見ていた景色が間違いだというように
重なる視線 今日も結局そらされる真実
ペットボトルのミネラルウォーター
全部飲み下してもう帰ろうと言うの
そんなあなたの聡明な眼差しなら
私が持っている邪な思いなんて
きっと見透かされているんだろうと
掠れた声でバッグを肩にかけて
下校していく生徒の喧騒を後ろ手に隠して
そうやってまた鍵を掛けて追い出してしまうの
私の全てを見ておいていつもそうするのね
重なる吐息 今日も結局逸らされる視線
シトラスレモンのリップバーム
あえて拭き取らずにまた意味深に笑うの
ずっと前から知ってたよ 言わないだけ
あなたの底にあるその真実を
初めて笑うのを見た時から本当は
そうやって怖がっているんだって
手を伸ばしても触れられないそれを
いつか私にだけ見せてくれたら
無造作に置かれたキャンバス そのひとつを
思い切って目の前に差し出してみる
驚いたように息を止めて私を振り向くの
それはかつて描いた青いだけの絵
賢いあなたならもうわかるでしょう
ピカソの青の時代を思わせるような
深い深い海に秘められた感情に
あなたの流した夜の雫を
「夜に残る」
終わった恋はスクラップ
名前を付けて保存を繰り返して
埋まりゆくデスクトップ画面
ゴミ箱に移動する勇気はなくて
素敵な歌は終わるもの
見るも無残な傷跡を隠しては
笑ってた自分自身の歌詞
君だけとその一言が言えなくて
本気になるほどに核心を避けて
潰していったその可能性
今集めて空に投げよう
たくさんの「君」の中の一人
研ぎ澄まされたその感性の中
初めて自分で選びだしたんだ
手を伸ばして掴み取ってみたい
夢見た日々は夜続く
ただ僕だけを愛してくれるのに
まっすぐに見るだけの能力が
きちんと持っている自信がなくて
本気になるほどに君から逃げて
遠ざかっていったその可能性
今手に取り全部叫ぼう
駆け巡る君とだけの記憶
塗りつぶされるそのガラクタの中
初めて自分で取り戻したんだ
手を伸ばして捕まえてみたいんだ
何度も恋を繰り返して
一度もうまくいかなくて
ようやく君と出会っても
薄れぬ闇の孤独さを
どうにかたどり着いたんだ
眩しいだけの真ん中に
僕たちは同じ色の光
押し寄せていくその悲しみの中
君だけ覚えてくれればいいと
隠したあの歌掘り起こそう
君だけ気づいたあの日の涙
君には知られぬ微かな誓い
「君」とはひとりの足りない欠片
(1028文字)
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読んで下さり本当にありがとうございます。サポート頂けると励みになります。いつも通りスイーツをもぐもぐして次の活動への糧にします。