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【アフターコロナ】影響力の武器がないと個の時代はサバイブできないのか

フォロワーがいないと本を出版できない

最近本屋で有名Youtuberの本をやたら見かけるようになった。聞くところ、今例えば本を出版したいならフォロワーが一定数以上いないと難しいらしい。

出版社の企画会議では「その人のフォロワー何人?」と当たり前のようにSNSのフォロワー数が挙げられるようだ。だからわかりやすくフォロワーの多いYoutuberの本が増えているのだ。

一見出版社の怠慢じゃないの?と思うが確かに理屈は分かる。フォロワーも全然いない無名な人よりも、ファンがたくさんいてある程度買ってもらえる見込みのある人の方がリスクがないし楽だ。

いくらでも情報発信ができる時代で本を出版したいのに関わらず「なぜ何もやってないの?」とか、例えブログをやっていても「フォロワーが少ないということは、あなたのその考えに共感する人が少ないってことだよね」という理屈も理解できる。

じゃあフォロワーがいないと本が出せないかというと、権威だったり、数少ない分野の専門家で、その専門分野に関して世間的なニーズがあるなら可能性はあるかもしれない。

影響力はCVR(コンバージョンレート)であらわれる

一億総クリエイター時代。今まで一部の人しかできなかった発信が、インターネットの発達とサービスの拡充により誰もができるようになった。文章、音声、歌、動画、デザインなど誰もが自分の作品をネット上にアップロードできる。

そしてパソコンを使って仕事をしている人には、コンテンツを作ることを生業にしている人が多いだろう。

私はフリーになる前はメディアの会社でそれこそコンテンツを作っていた。ビジネス的観点のメディアにおいて最も大事なことといえばCVである。

CVとはコンバージョンのことで、ようは広告を掲載してそこから読者や視聴者が商品を実際に購入することである。

インターネット以前の時代は、広告は人目に触れるだけでよかった。そこからどのくらい成約したかという人数を割り出すことは難しかった。

例えばテレビのCMを見た人の成約率、雑誌の広告を目にした人の成約率は正確に測ることができなかった。

しかしインターネット広告はこれが可能なのである。何人の目に触れて、そのうちの何人がそれを実際に購入したのか詳細にみることができる。

2019年インターネット広告費がテレビメディア広告費を超えたなんていうニュースがあったけどそりゃそうだ。出稿する側も漠然とした効果よりも、きちんと数字を測りたいに決まっている。

もちろん課金メディア、コンテンツというスタイルもあるが、それでも媒体にとって最も重要なことは、どのくらい信者のようなファンを増やし、提案する商品を買わせるか、行動を取らせることができるのかということなのである。

アノニマスに本当の影響力は作れない?

当時運営していた私のメディアと同じくらいのPVを誇る個人ブログがあった。

そのブログはPVこそ同じくらいなものの、読者はブロガーの信者と言えるほどの大ファンで、彼女が商品を出せば飛ぶように売れ、イベントを催せば2000人の会場を満員にした。

もちろん発信している内容やカテゴリーが違うこと、会社が運営しているメディアと個人が運営しているブログでは個人の方がファンがつきやすいということはあるかもしれない。

しかしそのCVRの歴然とした差に圧倒されたのだ。毎日コツコツコンテンツを更新し、人を集めてくるところまでは一緒。しかし彼女のブログは明らかに訪れる読者のほとんどを魅了していた。

そこで分からなくなってしまった。まず法人が運営するメディアと個人が運営するブログとの線引きも難しいところ。もちろん似て非なるものではあるのだが、CVこそが大事と実感した私にとって、法人が運営するアノニマスなメディアが誰かを魅了することはあるのかと。

キャリアよりもフォロワーが重視される時代

先に触れた出版の話に戻るが、例えば20年仕事で文章を書き続けて来た人がいるとしよう。キャリアは十分、もちろん文章も上手だろう。しかし彼・彼女に本が出せるかといったらそうではない。

一方で大学在学中にブログを書き始め、文章は拙いが同世代に共感を呼びフォロワーは20万人。彼 or 彼女が書いたものは飛ぶように売れるという圧倒的なカリスマ。文章が拙いとしても本を出版できるのは後者のブロガーなのが現代。

もちろん前者の彼 or 彼女にはアノニマスとして美しい文章を書く機会は多く与えられるだろう。しかし自分の声を届けられるのは大学を卒業したばかりの彼なのである。

例えば前者が勤める会社に後者のブロガーが入社して来て、彼 or 彼女が書いた方が共感されるからといって前者よりも給料が高いなんていうこともありえるかもしれない。これぞ本物の実力社会。20年の文章のキャリアよりも、小手先の共感の作り方の方が評価される、なんていう時代はすでに到来してしまっている。

一億総クリエイター時代における影響力のヒエラルキー

さらに思考を未来へ送ると、今後AIの導入などで誰でもできる仕事はなくなるなんて言われている。すでにライティングの世界などでは、AIが文章を書いているECサイトやニュースなんていうのも存在する。

もしそんな時代が到来したとしたら、先に食べられなくなるのはどちらかというとキャリアは十分にあるがアノニマスの彼 or 彼女になるというのは想像がつくだろう。

そしてきっとこのことを個の時代と人は呼んでいる。代わりがいる仕事はAIがやるようになるということ。

すでに影響力によるヒエラルキーというのは出版を例に挙げたように起きている。

もちろん今例に挙げたのはメディアという特殊な業界の話。キャリアがものを言う仕事もたくさんあるだろう。

しかし人々に商品を売る、届けるといったマーケティングの観点からすると影響力というのは切っても切り離せないものである。

影響力のヒエラルキーに苦しむ時代がくる前に、影響力がなくとも食べていけるような保障を整えておくことが急務かもしれない。






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