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未来を読み解く、おすすめの10冊

「フューチャー・リテラシー」では多くの参考書籍をもとに執筆してきたが、初学者のためにこれは読んでおいて欲しいという統合的な視点で書かれた書籍を紹介する。

 おすすめ 10冊: ①~⑩
 副読本  16冊: 1)~16)

近年は、多くの文字を読むことが苦痛な傾向にあるというのに、未来を読み解くためになぜ本を読む必要があるのだろう。

レオナルドダヴィンチになれとは言わないが、未来を読み解くためには統合学としての視点・視野が必要になる
なにより良書に出会うことができればヒトの考え方や言葉を借りることができ、思考や表現にかかる時間を大幅に短縮できる

未来のために書籍を読む必要:
1)基礎知識

 ヒトの未来のベースとなる基礎知識として、
 未来は、ヒトの脳、身体、社会形成(人文科学、歴史、経済、組織)の過去から現在の延長にある。
2)メタファー
 世界は、アーキタイプ(原型)・プロトタイプ(類型)・ステレオタイプ(典型)に満ちあふれている。発明や創造にメタファーが有効なのは、原初から繰り返される構造があるから。
3)探索・散策・探求
 ある程度、基本的な書籍を押さえておくと、しだいに自分の求めるものがわかってくる。そうなればしめたもので、内なる欲求に従って広く探査・散策・探究を進めればいい。

ゼロから探すのは大変だ。推薦書籍をきっかけとして、幅広い視点と統合的な視点を得て、未来を読み解いただければと思う。

1.総合

⓵「知の編集工学」、松岡正剛

(松岡正剛(2001), "知の編集工学", 朝日文庫)

「フューチャー・リテラシー」必読書、本書全般にわたる参考書

・編集とは「該当する対象の情報をよみとき、それを新たな意匠で再生するもの」
・対象は、映画や書籍やニュースだけではない、企画書、営業報告書、イベント、都市計画、政策、料理、プログラミング、ラグビー、子育てなど、ヒトがかかわる知的創造全般にかかわる行為を「知の編集工学」として語る。
・我々が情報の未来を読み解く際に、分節、関係、再編集をどのように扱っていくのかと思索するときのヒントが満載されている。

副読本:
1)「複雑系を超えて :システムを永久進化させる9つの法則
」、ケヴィン・ケリー(1999)

ケヴィン・ケリーの原点。複雑系の入門書。


2)Webページ:松岡正剛の千夜千冊 

未来を読み解こうと検索していると、結局ここにもどってくる
本を探す際におおいに活用
テーマ毎に書籍化されている

3)「ネットワーク組織論」、今井賢一, 金子郁容(1988)

「ミクロ・マクロ・ネットワーク」モデルの原点
古い本だが、複雑系をふまえた未来につながる組織論の基礎がここにある「ティール組織」を読むよりまず本書


2.歴史総合

②「ビッグヒストリー」、デヴィッド・クリスチャン

(デヴィッド・クリスチャン, シンシア・ストークス, ブラウン、クレイグ・ベンジャミン(2016), "ビッグヒストリー --われわれはどこから来て、どこへ行くのか--", 長沼毅日本語版監修, 石井克弥,竹田純子, 中川泉訳, 明石書店)

「フューチャー・リテラシー」必携参考書!

・宇宙創生から2010年、そして未来まで。百科事典サイズで、全400ページにわたる壮大な歴史書
・各章の最初はいくつかの問いから始まる
 - 都市とは何か?国家とは何か?農耕文明とは何か?
 - 都市が生まれるためには、どのような技術の進歩が必要だったのか?
点通り一辺倒の教科書的なものではなく、統合的な視点で最新の情報をもとにした著者たちの考察がふんだんに盛り込まれている。
例えば、
「農耕民が誕生したのは、狩猟採集民が豊かな狩猟採集生活という『定住化の罠』にとらわれたから。」

副読本:
1)「情報の歴史21 :象形文字から仮想現実まで」、松岡正剛監修、編集工学研究所&イシス編集学校(2021)

「フューチャー・リテラシー」必携書、一家に一冊!

7000万年前から2020年までの人類史、世界史、宗教、政治、経済、科学、芸術などを網羅してトピックを縦横に整理した統合年表
歴史をひもとくときに、同時に何がおきているのかを世界の東西にわたり確認するために必須


3.生命

③「地球と生命の誕生と進化」、丸山茂樹

(丸山茂樹(2020),"最新 地球と生命の誕生と進化:[全地球史アトラス]ガイドブック", 清水書院)

生命、進化、地質学、宇宙をクロスオーバーさせて、生命の謎を解き明かす!

 統合的視点で生命誕生、大量絶滅、進化の歴史を読み解く

地球誕生~地球消滅までのCG映像

副読本:
2)「生命、エネルギー、進化」、ニック・レーン(2016) 

生命エネルギー生成の仕組みから、生命誕生の場所と方法を読み解く



3)「星屑から生まれた世界 進化と元素をめぐる生命38億年史」、ベンジャミン・マクファーランド(2017)

生命誕生も、生命進化も化学的な限られた選択肢の中から発生する
周期表をもとに、なぜその元素が利用されるのかを解説


4.脳

④「進化の以外な順序」、アントニオ・ダマシオ

(アントニオ・ダマシオ(2019), "進化の意外な順序", 高橋洋訳, 白揚社)

ヒトの「感情」「思考」の仕組みを読み解く

ソマティック・マーカー仮説の神経学者
感情の役割、イメージ形成から言語化・理解、原始生命から神経形成についての独自の見解が面白く、ネットワーク社会におけるヒトの脳のアウトソースについて考える際に参考になる

 
副読本:
4)「脳の誕生 :発生・発達・進化の謎を解く」、大隈典子(2017)

脳の発生、進化、誕生を分かり易く解説

5)「ぜんぶわかる 脳の事典」、坂井建夫, 久光正監修(2011)

脳内の名称がわからなくなったらこれ。脳の仕組みが分かり易く解説されている


5.人文社会科学

⑤「銃・病原菌・鉄」、ジャレド・ダイアモンド

(ジャレド・ダイアモンド(2000), "銃・病原菌・鉄",倉骨彰訳 , 草思社)
世界中の人類史観を変えた必読書。統合視点の入門書。

・地理、食料、家畜と病原菌、文字、部族から国家の形成、なぜ中国ではなくヨーロッパが主導権を握ったかなど、総合的な視点から人類史を分析
・原初生活を残す原住民の観察をふまえ、
・ヨーロッパ人が優位となったのは、ユーラシア大陸が生産性の高い穀物と家畜に恵まれて人口が増加し、地理的に東西に広がるため多種の文化の相互作用により洗練し、激しい競争(=戦争)が繰り返されたから
・コミュニケーションする集団が大きいというのはそれだけで有利
・そして、古くから家畜とすごしていたため病原菌に耐性があり、特にアメリカ侵略において病原菌を武器として勝利した


副読本:
6)「世界史のなかの産業革命 :資源・人的資本・グローバル経済」、R.C.アレン(2017)

蒸気機関が発明されたから産業革命が起きた?そんなわけがない
資本主義、技術の発展が産業革命を契機とするならば、それがなぜこのタイミングでイギリスで起きたのかを広い視野で知る必要がある


⑥「文化がヒトを進化させた」、ジョセフ・ヘンリック

(ジョセフ・ヘンリック(2019), "文化がヒトを進化させた :人類の繁栄と<文化-遺伝子革命>", 今西康子, 白揚社)

ヒトと文化、集団とコミュニケーションの絡み合う共進化が、過去・現代・未来の歴史をつくる

マクルーハンのメディア論、ドーキンスの利己的な遺伝子におけるミーム(文化遺伝子)を包括
文化の対象:道具、技術、知識、ノウハウ、社会習慣・規範、宗教、芸術
ヒトが文化を形成・維持するためには、「集団の規模」「結びつきの強さ=集団のコミュニケーション能力」が必要条件となる


副読本:
7)「グーテンベルクの銀河系
 :哲学人間の形成」、M.マクルーハン(1986)

未来を考えるための必読書
「文化がヒトを進化させた」に続いて読んで欲しい
ヒトとメディアは共進化する、
活字人間、視聴覚人間、新しいメディアがヒトの思考を変え、新しいメディアが古いメディアを衰退させる、ヒトの書籍離れを予言


8)「声の文化と文字の文化」、ウォルター・J・オング(1991)

マクルーハンを読んだら、これ!。そして、「ネットバカ」、ニコラス・G・カーへと続く
ヒトの思考の変化を追って未来を考えるためには、「文化がヒト~」、「グーテンベルク~」、「声の~」は読んでおく必要がある

可能ならば「身振りと言葉」、アンドレ・ルロワ=グーラン(1973)まで読み進めて欲しい


6.経済

⑦「やさしい経済学 :しくみがわかる」、池上彰

(池上彰(2013), "やさしい経済学1 :しくみがわかる", 日本経済新聞出版社)
(池上彰(2013), "やさしい経済学2 :ニュースがわかる", 日本経済新聞出版社)

丁寧に優しく正しく経済の歴史を読み解ける

経済学の初心者が教科書を読んでも何も得られない。かといって「富国論」や「資本論」をいきなり読んでも、何のことやらと思ったらこれ
1と2があるが両方読んでもたいした時間はかからない
アダム・スミス、マルクス、ケインズ、フリードマンを中心に経済学の歴史から学び、世界恐慌やバブルなど現代に続く歴史を概観する


副読本:
9)高校生からわかる「資本論」、池上彰(2017)

「やさしい経済学」をよんだら本書も目を通しておこう

10)「要約 ケインズ 雇用と利子とお金の一般理論」、山形浩生(2011)

巻末の経済史の読み解きが軽快で面白い
もちろん、読みにくい「一般理論」の概要も把握できる

11)「世界経済 大いなる収斂 :ITがもたらす新次元のグローバリゼーション」、リチャード・ボールドウィン(2018)

未来の社会を考えるときに、グローバル経済のおかれている状況について知っておきたい


7.アイデア・プロセッシング

⑧「発想法」、川喜多二郎

(川喜多二郎(1976), "発想法 改版 -- 創造性開発のために --", 中央公論新社)

野外科学のためのアイデアの整理法、KJ法はここから生まれた
ブレーンストーミング、デザイン思考の原点

KJ法で知られる川喜多二郎、僕らの知っているKJ法はほんのサブセットだ
筆者自身の野外観察の体験から、ありのままの自然を観察して得た情報を集め、整理・分類・保存、要約化、統合化、物語化について丁寧に解説
デジタルネイティブをフィールドワークしよう

副読本:
12)「知的生産の技術」、梅棹忠夫(1969)

脳のアウトソースに関するカード整理の記述がいい
知的生産にからめた作者の考えの雑記、いろいろと示唆にとんでいる
手帳、カード、切り抜き、整理、読書、原稿、文章など多岐にわたる
自分なりの思考スタイルを獲得するために読んでおくといい


13)「思考の整理学」、外山滋比古(1986)

「知のエディターシップ」を軸とする、アイデア整理の基本3冊目
エッセイ本のような軽快な流れの中で、思考の整理について示唆に富む
「情報の"メタ"化」など現代・未来についてのヒントももらえる


8.読書法

⑨「本を読む本」、M.J.アドラー, C.V.ドーレン

(M.J.アドラー, C.V.ドーレン(1997), "本を読む本", 外山滋比古, 槇未知子訳, 講談社)

本読みの指南書

「読み方学習の諸段階、組織的な拾いよみ、読書の速度、目のうごき」に始まり、点検読書、分析読書、同一主題について二冊以上読む読書(これが実は難題)
世にある膨大な本を前にして、いかににし探し、効率的に深く読むか
読書に慣れ親しんでいる人をも唸らせる良書


副読本:

14)「探求型読書」、編集工学研究(2020)

本読みをプロセスとして整理
読前、読中、読後に分けることにより、効率よく内容を把握して読みすすめられる
少し訓練が必要だ


9.計画されている未来

⑩「未来創造の白地図」、川口信明

(川口信明(2020), "2060 未来創造の白地図 :人類史上最高にエキサイティングな冒険が始まる", 技術評論社)

計画されている未来本はこれ一冊でいい

実際の企業やスタートアップの事例がふんだんに盛り込まれている


副読本:

15)「インターネットの次にくるもの」、ケヴィン・ケリー(2016)

「フューチャー・リテラシー」につながる未来読解者にして、『Wired』誌の創刊編集長ケヴィン・ケリー
未来を12の視点で整理する、未来整理の手本
(BECOMING、COGNIFYING、FLOWING、SCREENING、ACCESSING、SHARING、FILTERING、REMIXING、INTERACTING、TRACKING、QUESTIONING、BEGINING) 

続けて、テクノロジーを複雑系ネットワークとしてとらえる「テクニウム」も読んでおきたい。




 




 




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