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身体のこと。 ~ サバイバルボディを手に入れろ ~

アフリカ大陸の最高峰キリマンジェロ(標高5,895m)に上半身裸に短パンの出で立ちで最短記録で頭頂に成功した男たちがいます。

自殺行為と称されるこの挑戦はただの無謀で炎上目的のおバカなチャレンジなのか・・・

いや、これは科学的な根拠に基づいて行われたトレーニングの結果であり、本来の人間の持つ能力を呼び覚ませば誰でもできるチャレンジだったです。

彼らがどのように寒冷環境に適応した「サバイバルボディ」を手に入れ、この挑戦を成功させたのか、このミッションのチャレンジャーでもある科学ジャーナリストのスコット・カーニー著「サバイバルボディー〜人類の失われた身体能力を取り戻す」について要点をまとめながら健康的な身体づくりについて考えていきたいと思います。

快適さを脱ぎ捨てる

私達の祖先は凍てついた山や灼熱の砂漠をごくわずかなテクノロジーの助けだけで長旅をして、全世界へと広がりました。

しかしながら、今に生きる私達は科学の発展と進歩により、ほとんどすべての人がテクノロジーの生み出す繭にくるまり、快適さと周囲に対する忍耐力をアウトソーシングすることに成功しました。

私たちの身体には「ホメオスタシス=内部恒常性」がほぼ完璧に備わっており、これにより周囲の環境の変化に対応するようにできています。

快適さに慣れてしまえば、私たちの循環、呼吸、体温などの内部環境は快適さの中でホメオスタシスを保ち、本来用いる能力を奥に隠してしまいます。

過酷な自然を生き延び、様々な困難に直面しながらも、このような快適さを追い求めて人類は進化してきたため、今快適な空間いれることは人類にとっての一つの成功なのかもしれません。

しかしながらこのような快適さが人の身体を弱くし、過去にはなかった新たな脅威(肥満、糖尿病、慢性疼痛、高血圧、自己免疫疾患 ・・・etc)を呼び込むことにもなっています。

このような快適さを脱ぎ捨て、自然界によくある環境ストレスを身体を取り込むことによって、人が本来持っている進化上の活力を取り戻すことができるのではないか?

高度なテクノロジーは私たちのすることすべてに浸透していますが、その快適さの一部を捨て、むきだしの自然を選ぼうという人びとは、快適さに対する社会的欲望によって消し去れれた人間本来の生き方を象徴しています。

そして、自然界に対する身体の反応を受け入れれば、動物的な力の隠れた源泉を開くことが可能だということを学んでいます。

本書の主人公の一人であるヴィム・ホフもその一人であります。

ヴィム・ホフ メソッドとは

ヴィム・ホフは、様々な寒冷な環境に関わる記録をもち、「アイスマン 」の通称で知られるオランダ人です。

彼は、普通の人々よりも寒冷に耐えることができるようになるという「ヴィム・ホフ・メソッド 」を開発しました。

彼の身体は、低温に耐える自然な能力をもち、褐色脂肪組織をより効率的に活性化させ、普通の人間より体温を高める能力が高いことが様々な検証によって明らかになっています。

1998年末には、北極点で、40cmの厚い氷の下で、水着だけでの寒中水泳をした記録があり、1999年には、北極海の海中を、水深50mまで潜水した記録も残っています。

2000年にはフィンランドで、氷点下20度の気温の中、氷の下を潜水して100m泳ぐことにも挑戦しています。

さらに、2009年にはタンザニアで、ほとんど裸同然で氷点下15度のキリマンジャロの5,892mまで登って「世界記録」を達成し、2014年(上記の記録)には再びショーツ姿でキリマンジャロに登り、登山開始から48時間以内に頂上に到達するという世界記録を樹立しています。

2007年の実験では心臓モニターと血圧モニターをつけた状態で氷に浸かり、正常では15分から45分で深部体温が28℃以下となり死に至るとされていますが、ホフは72分間氷水に浸かっていることが可能でした。

ホフの深部体温は最初に数度下がったところから、再び上昇したことが記録されています。

この実験の結果が発表されると、多くの科学者がホフの身体についての関心を持つようになり、科学的な検証が多く行われるようになりました。

そして、ホフの身体は寒冷という極端な環境に適応するために、ミトコンドリアの豊富な褐色脂肪組織(BAT)をトレーニングによって大幅に増やしたことが平均的な20歳の若者の5倍の熱エネルギーを生み出せるようになった要因であることがわかりました。

この褐色脂肪細胞を効率よく増やすことのできるホフの考案したトレーニングが「ヴィム・ホフ・メソッド」です。

生理学的機序

私たちの筋肉も臓器も神経も脂肪組織もホルモンも、すべて外からの刺激に反応して変化します。

特に重要なのは、外部からの刺激がきっかけとなって、脳の意識領域を経由せずに次々と生理反応が起こることで、これは自律神経をコントロールする領域に直結し、例えば冷たい水に飛び込んだときには、それが引き金となっって身体を温める数々のプロセスが始まるだけではなく、インシュリンが生成され、循環器系が収縮し、精神的な自覚が増します。

そして人間の身体は多種多様な環境にほんの数週間で順化します。
高地に辿り着くと、身体は赤血球を作り出して、血中酸素濃度が低下した分を補います。

蒸し暑いところに行けば、やがで身体から汗となって出ていく塩分は減少し、尿の量も減ります。暑さは心臓血管系を刺激して効率よく、蒸発と冷却の能力を増やすことができます。

また、寒冷下では低体温症を防ぐため、身体は手足の血液供給を止めて熱を逃さないようにします。

これにより末梢部分の温度は低下しますが、重要な臓器は温かい血液によって温度が維持されます。

また、褐色脂肪細胞組織(BAT)は普通の白色脂肪を代謝して身体を休息に温めることができ、この細胞の大部分は幼年期には消えてしまいますが、研究では環境によってBATの量が変わることがわかり、寒冷下ではBATは蓄えられることがわかりました。

こうした外部環境の変化による身体の温度調節機能は現代に生きる我々はほとんど使用していません。

暑ければ冷房をつけ、寒ければ暖房をつける。こうしてテクノロジーによって快適な環境を手に入れたものの、筋肉と一緒で使わなければ弱っていくのが身体の機能であり、循環系の筋肉を鍛えることは、死亡要因の30%を占める循環器系疾患の予防と健康維持に不可欠となります。

ヴィム・ホフ・メソッドは身体に対して環境を調整することによって、人間が持つ本来の生理学的反応をコントロールともに、循環器系の筋肉を鍛え、身体の自律反応や体温調節機能、免疫機能の改善を図ることができると考えられています。

ヴィム・ホフ・メソッドの方法

①寒さに身を晒す
バケツや浴槽を氷でいっぱいにして、そこに飛び込む、もしくはシャワーを出来る限り冷たくしてそれを1分間浴びます。

また雪が降るのをまってパンツ一枚で外を歩くなども効果的です。

最初は冷たいシャワーを30秒浴びることがらスタートして徐々にレベルを上げていきます。

慣れることよりも急激な刺激に身体がどう反応するのかを見ることが大切であり、呼吸が速くなり、瞳孔が散大し、身体が動き出したくなるような反応を観察し、身体の血管収縮や震えがきたら、それを冷静に観察して意識を集中させます。

身震いを意識下において抑え込むことで身体は代謝を上げることで体温を維持することを余儀なくされ、褐色脂肪細胞を生み出し、ミトコンドリアが蓄積されていくようになります。

②息をこらえる
まず深く息を吸い込んで、どのくらい息を止めていられるかを、ストップウォッチで測定します。

次に床に寝転ぶか、椅子に腰掛けて30回の速い呼吸をします。約1秒で息を吸いますが吐く時は力まずに、自然に出ていくようにします。

こうした意識的な過呼吸の後に大きく息を吸い込んで胸いっぱいに空気を貯めて、息継ぎをいたくなるまでの時間を図ります。このときにできるだけ我慢して、胸、両腕、両足の筋肉を収縮させます。

もし我慢できなくなったら肺の中の空気を少し出してください。そうすれば少し吸うまでの時間が稼ぐことができます。

息を吸ったら最初の記録と比べてみてください。

きっとベースラインを大きく超えているはずです、こうしたトレーニングを繰り返すことで息を止めていられる時間が延びてきます。

③パワー腕立て
床に仰向けになって②の速い呼吸を行い、最後に1回大きく息を吸い込み、うつ伏せになって、息を止めた状態で腕立て伏せを始めます。
回数をカウントする以外は何も考えないようにしてください。
これによってベースラインの自分の腕立て回数を楽に突破できるようになります。
さらに、今度は息を吐ききった状態で息を止めて同様に腕立て伏せを行います。
これは先の方法とは違う神経システムに作用して神経の新しい道筋を作ることができるようになります。

④パワー呼吸
まずは基本的な呼吸法で30回ほど速く深い呼吸をします。目は閉じたまま行い、頭がぼぅーとしてくるぐらい激しく呼吸をして、最後に吸った空気のほとんどを吐き出して、肺がほぼ空っぽの状態で息を止めます。
身体はすぐに血液中の酸素に頼らざる得なくなり、息継ぎをしたくなります。ここからさらに限界を広げるため1つめには肺に残っている空気をゆっくり吐き出します。次に足からはじめて最後は頭部まで筋肉を次々と収縮させていきます。
ふくらはぎ、大腿、腹筋、胸筋、上腕二頭筋、指、顎、耳の後ろと順に力を入れていきすべての圧力が頭のてっぺんからでて行くのを想像しながら行います。息を止めているのが限界に達したら肺に半分ほど空気を入れて、そのまま10~15秒息を止めてリカバリー呼吸を行うようにします。
この呼吸によって身体の限界点を強化して、交感神経を活性化させます。

⑤瞑想
身体の内の感覚に意識を集中させ、さらにその感覚を強化する目的で行います。
目を閉じて、自分の吐く息、吸う息に集中して、頭の中の思考をシャットダウンします。
目を閉じたときに現れる光の線の形や色に集中します。
思考が現れたら、何を考えていたのかを客観的にみるようにします。
そして、また呼吸と眼の前の光に集中するようにしてこれを5分から10分程度行います。

まとめ

現代における快適な生活は人間の身体に備わる生理システムを脆弱にして、環境の変化に対する適応力の低下をもたらします。

不快で環境ストレスの多い環境にあえて身を置くことで生理機能を強化して、免疫、循環に関わる神経システムを強化することができます。

私も本書を読んでから1ヶ月ほど上記の方法でトレーニングをしていますが、今では2分近く息を止めていることが可能になり、体脂肪も2%ほど低下しました。

傷や筋肉の痛みなどある部位にパワー呼吸をして、息を止めた状態で痛みのある部位の筋肉を収縮させるとその部位の痛みが消え、治りが早くなるといった事例も多く報告されており、私も筋肉痛などで試すとすぐに効果を感じることができました。

現代ではあえて過酷な環境に身を置くようなキャンプやドSなスパルタンレースが商業として成り立っており、世界のエグゼクティブやリーダーがこぞって参加しています。

日本でも開催されているスパルタンレース(https://www.spartanrace.jp)ですが年間12,000名もの人が参加するそうです。

私も参加してみたいと思っていますが、まだそこに飛び込めずにいます。

誰か一緒にサバイバルボディを手にして参加しませんか?

最後までお読みいただきありがとうございました。

本日の参考図書
スコット・カーニー著「サバイバルボディー〜人類の失われた身体能力を取り戻す〜」

#健康 #からだづくり #推薦図書 #トレーニング #生き方


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