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好きをかたちにするグラフィックデザイナー+本屋<キムラナオミ・前編>

抜群のセンスで暮らしを豊かにする、グラフィックデザイナー。憧れの職業ながら、どんな活躍の場があるのか、イマイチ分からない人も多いのでは?
広告、WEB、書籍など幅広い仕事を展開しつつ、おしゃれすぎる本屋さんも開業している復業のリアルを取材しました。


グラフィックデザイナーと憧れの本屋を兼業

素敵空間すぎる…Reading Mug の店内

――うっとりするような、本当に良い本屋さんですね…(ため息♡)。キムラさんは本屋「Reading Mug」店主とグラフィックデザイナーの2足の草鞋を履いていらっしゃいますよね。
グラフィックデザイナーが先で、その後本屋を開業し、今は本屋の営業をしながらデザインの仕事もできています。もともとイギリスの本屋文化に触れて憧れを持ち、洋書のオンラインショップやイベント出店をしていたのですが、コロナ禍でデザインの仕事が減ったことが後押しになって開業に至りました。事業が複数あることで、本格的なリスクヘッジとまでは行かなくても、精神の安定につながっているかなと思います。

――デザイナーって、すごく大きなモニターのパワーありそうなMacを、何台も並べて使ってるイメージでした。お店のカウンターに収まる1台のノートブックでできちゃうんですね。
はい、これで事足りますよ♪自分が作ったお気に入りのお店で、もう一つの仕事ができるのはうれしいことです。

――デザイナーと本屋の仕事の割合は、どんな感じですか。
デザイナーとしては学校関連の広報、広告案件を多く手がけていて、その他に個人店などの案件やブックデザインも行なっています。稼働時間で言えば、デザイナーとしての仕事と本屋の仕事、半々くらいでしょうか売上としてはデザインのほうが大きいです。

学校関連の仕事は広告代理店経由の案件と、学校と直接取引をしているものがあります。大学や専門学校のパンフレットやウェブサイトを作っていて、学生募集に関わる冬〜春がめちゃくちゃ忙しいです!

直接クライアントから依頼を受けて制作するものもあります。出版社から書籍のデザインと、美容院、雑貨店などの個人店からはロゴマークはじめ、ショップカードやウェブサイトなどさまざまです。コンセプトから作り込んでいくので、いろいろなツールを統一感を持って仕上げることができるのが強みです。たとえば以前に依頼いただいたクライアントのウェブサイトをリニューアルするということで、再依頼をいただいたこともありました。ウェブサイトのデザインに合わせて、ショップカードもその他のツールも、全部まとめてディレクション。デザインにまとまりがあると洗練された印象にもなりますよね。

本屋は試行錯誤ですが、頻繁にイベントを開催しているので、仕入れや販売といった本屋業務+イベント準備で忙しいです。さまざまなアーティストやお店とコラボすることも多くて、先日は「森と本屋」というイベントで、店内に森を作るために大きな木を置きたいと言われて。私はなんの仕事をしてるんだろうと思いながら、生木を運んでました(笑)。

「公私とものパートナーがいることで、自由でもあるし頼ることもできます」

――デザイナーとしては、パートナーさんとご一緒に仕事をしているんですよね。
2P Collaboration(ツーピー・コラボレーション)という屋号で、20年以上、ふたりで広告制作を続けています。彼が撮影やコピーライティング、私がデザインという役割分担です。もともとお互いの良いところを使って協働しようと、コラボレーションという名前の屋号にしたので、仕事も作品づくりも二人であれこれ考えています。あ、Reading Mugも2P Collaborationの本屋部門なので、二人で運営しているんですよ。

ふたりでやっていることのメリットはいろいろあって、たとえばとある個人の事業者の方から、自分をアピールするツールを依頼されたことがあったんですが、ふんわりとしたお話から、お客様の望むもの、かつ効果的な表現を掘り下げていって、最終的には二つ折りの名刺サイズのツールにまとめました。こういう時にも、二人でアイデアを出し合ってコンセプトや表現を掘り下げられるのは、メリットですよね。


Mac Book(1台)とモニターを使ってデザイン

もう一つ良いところは、見積もりの相談ができるところ。パートナーには「ナオミの見積もりは安すぎる」って言われてまして(苦笑)。個人店さんに予算がないのは、自分も本屋をはじめてよくよくわかるので、つい少なめに見積もりすることがあるのですが、客観的に見てくれる人が身近にいるのは、一人とも、会社員とも違う、心強くてやりやすい部分だと思っています。

オカネは苦手だからこそシビアに

――見積もりって私もいまだに苦手です。フリーランスを始める方の多くが、まずいくらで売れば良いのか悩むと思うんです…。
そうですよね。私は独立する前から多少見積もりの経験があったので、なんとなく目安はありました。でも開業当初は値付けが難しく、宣伝会議が発行している「広告制作料金基準表アド・メニュー」を見たりしていましたね。

――そんなのあるんですか!
うん、今もありますよ。そもそもズルズルと仕事に着手して、最終的に金銭面で揉めることもあるので、初めて仕事をする場合に、必ず契約書を交わしています。過去に友人の友人から依頼があった仕事を、口約束で進めたために大揉めしたことがあったからです。提案が却下されて、再提案する、さらに修正を加えるなど、起こりうる作業全体を想定して、リスクを加味した上で見積もりをする必要があると思っています。

――私もメール1本で仕事を引き受けてしまうことも多く、まずいなあと思ってたんです。契約書、重要ですね。その上で金額の目安はどんな感じですか。
大きな線引きとしては、新規では少額の案件はあまりお受けしていません。逆に言えば、クライアントとの関係性で、何度かお仕事した方は小規模な案件をリーズナブルに請け負ったりすることもありますけど。

姪がイラストレーターなのですが、見積もりに苦慮したときには相談を受けることもあります。デザイナーやイラストレーター、フォトグラファーが気をつけるべきは、流用の有無ですよね。創作物の流用についても、可否やその場合の費用について、事前に決めておくことがマストだと私は思います。


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