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「累々」松井玲奈

 恋愛シュミレーションゲームをした事があるだろうか。私はある。
プレイヤーはいつでも好きな時間に彼・彼女と遊ぶ事ができ、それが例え深夜や早朝であっても彼・彼女は文句ひとつ言わない。
ゲームの中なのでお金もかからず(一部ゲームでは課金などでお金がかかるが)、
彼・彼女が機嫌を損ねても最終的には上手くいくことが約束され、
上手くいかなかったとしてもセーブ画面に戻りやり直せばいい。
究極に都合のいい相手との失敗しない恋愛と言っていいだろう。
しかしながら現実でも、いわば「恋愛のいいとこ取り」をしたいという男女の欲望が絡みあい、例えばパパ活というものが存在している。男性は色々な女性と後腐れなく食事やデートを楽しむ事ができ、女性はそれに付き合う事で報酬を得られる。
「累々」の三話にはパパ活を「恋愛シミュレーションゲーム」としてプレイする男が現れる。
女の事の会話にはテキストウィンドウが流れ、会話の受け答えには三種類の選択肢が示される。
その正解を選び、女の子を喜ばせる回答をし、食事をしたりプレゼントをあげて好感度を上げ、最終的にお金が絡まない関係になったら「エンディングを迎える」。
そんな風に様々な「パパ活女子」を攻略してきた彼だが、その攻略ノウハウやマニュアルが通じない相手が現れる。
会話の答えを回答する前に先に会話を進めてしまい、ブランド物をプレゼントしても喜ぶどころか怒る。
「攻略不可能」となってしまった事を悟った男は、彼女の事を知りたくて彼女の後を尾行する。
そこで彼女が大学生ではない事、彼氏と同棲している事、その彼氏の親友とセフレである事などを知る。
その事を彼女に突きつける男、しかし彼女はそれらが矛盾していないと言う。
彼女にとって、彼氏と同棲している事と、パパ活をしている事と、彼氏以外にセフレがいる事は彼女の中では矛盾していないのである。

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