第8回大人の読書感想文コンクール落選作品「なりたかった自分、なれなかった自分。」

走っている最中に言われたくない言葉がある。
「頑張れ」だ。
前作『タスキメシ』で彼、眞家早馬は自らが走りたくても走れなかった箱根で「ちゃんと走れ!」と叫んだ。彼はランナーとして一番言われたくない、言いたくない言葉を知っていた。
その前作のラストから3年、仕事を辞めて大学院進学を選んだ彼に再び箱根へ挑戦できるチャンスが舞い降りる。合格した院のある大学の駅伝部でコーチアシスタント兼栄養管理をしてほしいという申し出だ。彼はその提案を一度保留する。そして思うのだ。高校生の自分だったらこの話に飛びついた。サポートする側としてもう一度箱根を目指せるのだと心躍らせたと。そう考えると、どうやら自分も少しは大人になったんだなと思う、と。

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