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【まとめ】現代諸学と仏法/Ⅱ四句分別という論法⑦/7客観論理の範囲内での事例【石田次男先生】

[出典:http://imachannobennkyou.web.fc2.com/19.htm]


7客観論理の範囲内での事例

(1)四句レンマの部分的事例

中道と仏法の理解
世俗と勝義の関連

中道の立場から、「一切法皆是仏法」という教えは、世俗の現実と勝義の真理を相互に説明することを意味します。世俗の現実から勝義の真理を理解し、またその逆も可能です。

仮諦の二面性
世俗の仮諦は虚妄であり排除すべきものとされ、勝義の仮諦は肯定されるべき建立法性とされます。重要な反省作業「遮照」を通じて、これらの違いが理解されます。東西の学説を仏法と比較し、理解を深めることは有効です。

諸学との比較と理解
仏法を通じて、諸学における困難な問題やアポリア(難問)がより明確になることがあります。これは、仏法の視点から多様な学問分野を理解し、それらを統合的に捉えることを助けます。

異なる分野からの仏法理解
現代の哲学、理論物理学、数学基礎論などが仏法の考え方に接近しています。これらの分野から勝義を説明することは、仏法を現代的な視点から解釈する上で有効です。

四句分別と諸学の融合
四句分別と諸学の論理が結びつくことで、新しい思想が生まれ、科学に新たな展開が見られます。過去には四句分別のような構造的な考え方がなかったものの、多くの学問分野で四句分別に類似した考え方が見られます。

数学の例:無限と連続
数学において、無限分割された線素の考え方は、「ゼロでありながらゼロでない」という定義に基づいており、四句分別に似た概念です。

哲学と物理学の例
哲学や物理学における決定論と非決定論の両立可能性、合理・非合理の両存なども、四句分別に類似した考え方を示しています。

具体的事例:ヴィトゲンシュタイン
ヴィトゲンシュタインの発言には、四句分別に類似する考え方が見られます。例えば、メートル標準尺や同一性の例がこれに当たります。

ユークリッド幾何と非ユークリッド幾何
一般的には実在と考えられるユークリッド平面は、実際には理想的な存在で、非ユークリッド平面とともに、四句分別に基づく理解を示しています。

四句分別の普遍性
四句分別に相当する考え方は、深く思索する人々には普遍的に存在すると考えられます。この思考法は、単なる観念ではなく、実際の事実に基づいて導かれたものであり、さらに深く掘り下げる必要があります。

(2)時間と空間との理解

時間と空間の理解
時間論の問題点

歴史を通じて、時間と空間に関する問題は哲学や科学で長らく難問とされてきました。『中論』では、時間に関する論議が展開されていますが、この分野は依然として解決されていない問題を多く抱えています。特に、時間の有始有終や無始無終など、時間に関する理論は様々な見方が存在します。

仏法における時間の理解
仏法では「久遠」「無始」「尽未来際」などの概念がありますが、これらは数学上の無限の問題に関連していることから、時間論と数学論の両方を考慮する必要があることが指摘されています。

無限とゼロの理解
数学における無限の概念には「無制限」と「無限大」の二つの意味があります。これらは理想的な状態を示し、実在世界には対応するものがないため、形而上学的な存在とされています。同様に、ゼロの概念も現実には存在しないが、数学的な意味付けで重要な役割を果たしています。

数学と仏法の関連
ゼロと無限は数学の基盤を形成していますが、実際には形而上学的な概念であり、これらは無分別の側に属しているとされます。つまり、分別としての数学は、これらの無分別の上に現出していると理解されます。

時間と空間の論理構造
物理学において、空間に関する理解は大きく変化しており、空間は物体の存在によって初めて意味を持つという現代的な見方がされています。これは、空間の概念が物体の存在に依存していることを示しています。

時間と空間の複雑性
全体として、時間と空間に関する議論は複雑であり、世俗的な理解と物理学的な理解の間には大きな違いがあることが指摘されています。しかし、どちらの理解も極端なものであり、より高い次元からの視点が必要です。この視点からは、第三レンマや第四レンマのような複雑な論理構造が必要になるとされています。

(3)特殊相対論・一般相対論の場合

特殊相対論と一般相対論の理解
特殊相対論の基本概念

アインシュタインの特殊相対論は、相対的な現象を縁起論として説明することで有名です。例えば、光の速度が観測者にとって常に一定であるという原則は、相対論の核心です。これにより、「同時性」の概念が相対的であることが示されています。列車の中と外の両者の観点から見た時の光の到達時間の違いは、この理論の具体的な例です。

特殊相対論の時間と空間
特殊相対論においては、高速度で移動する物体における時間の遅れや空間の収縮が観察されます。この現象は、ロケット内部の時計が遅れることやロケットの長さが短くなることを意味しますが、これもまた観測者の立場に依存しています。

一般相対論と空間の歪み
一般相対論では、空間の歪みが新たな概念として導入されます。重力の影響によって空間自体が歪むというこの理論は、日食の観測を通して実証されました。重い物体が置かれたゴム膜の上でボールが転がるように、宇宙の大きな物体は周囲の空間を曲げます。

物理学における相対性の意義
この理論は、物理学において絶対的な真実ではなく、相対的な現象を理解するための手段として用いられています。例えば、地球の重力の影響を受けることや、太陽系内の相対的な運動は、観測者の立場や選ばれた座標系によって異なる解釈が可能です。

相対論と日常の実感
日常生活においても、私たちは地球が回っているという実感を持たないため、相対論的な視点が日常の理解にも影響を与えることがあります。幸福や不幸といった感情も、他人との相対的な比較によって異なる解釈が可能であり、この現象は相対論から多くを学ぶことができます。

(4)出来事としての有無と素粒子の振舞

時間と空間、および素粒子の理解
出来事の多面的理解

出来事を理解する際には、感性や理性、さまざまな視点や考え方を使って異なる側面を捉えます。特に、四句レンマに基づく直接的な理解は、勝義と世俗の融合を可能にし、有と無の両方を同時に肯定する場面をもたらします。

宇宙像としての有無
例えば、夜空に見える星々は、光年を経て届くため、実際にはすでに存在しない場合があります。この「見えるが実際には存在しない」という状況は、有でもあり無でもあるという中道の概念を示しています。これは、天文学の基盤となる仮設を肯定する行為であり、有無の両方を認める必要があることを示しています。

特殊相対論の応用
特殊相対論では、観測者によって異なる「同時性」の概念が示されます。また、高速で移動するロケット内では、時間の遅れや空間の収縮が観測されることがあります。これらの現象は、有無の複雑な関係性を反映しており、物理学においても非有非無の概念が重要になってきます。

素粒子の振る舞い
素粒子物理学においては、粒子と波動の二重性が確認されています。これは、粒子が同時に波動の性質を示すことを意味し、従来の二者択一の考え方に挑戦します。素粒子が場所を占めることなく存在するという概念は、有無の伝統的な理解を超えています。

物理学における相対性の重要性
相対論の進化により、物理学の理解は、単純な有無の概念から、より複雑で相対的な理解へと移行しています。太陽系内の運動や地球の重力など、観測者の立場によって異なる解釈が可能であり、これは四句レンマの考え方と密接に関連しています。

(5)宇宙の内外・表裏

宇宙の内外と表裏の理解
宇宙の境界とその性質

宇宙に「外」という概念が存在するかという問いは、物理学と哲学の双方に挑戦を投げかけます。宇宙に外部があるとすれば、その外部も宇宙の一部となるため、実際には宇宙に「外」というものは存在しないことになります。また、宇宙に「内」という概念も存在しません。このように、宇宙は内外、表裏、中心や端といった分別的な概念が適用できない、無分別な存在と言えます。

宇宙の形而上学的側面
宇宙を物理的に計測することの難しさは、その無限大とされる特性に起因します。光速度の関係や観測の限界により、私たちが経験できる宇宙は一部分に過ぎず、宇宙全体を捉えることは不可能です。宇宙の「膨張」は、観測可能な部分の解釈に基づくものであり、その全体像を反映するものではない可能性があります。

宇宙理論の相対性と中道の見解
宇宙の膨張に関する理論は、特定の観測地点からの解釈に基づいています。このような部分的な観測から全体を推測するアプローチは、宇宙の真の性質を捉えるには限界があります。四句分別の観点から見ると、宇宙が膨張しているかどうかは、絶対的な判断ではなく、相対的な視点に基づくものであると言えます。宇宙の膨張は「しているに非ず、していないに非ず」という中道の視点で捉えることが、より妥当な見解かもしれません。


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