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朱色の化身/塩田武士(2022/03/16)【読書ノート】

「知りたい」――それは罪なのか。
昭和・平成・令和を駆け抜ける。80万部突破『罪の声』を超える圧巻のリアリズム小説。「聞きたい、彼女の声を」 「知られてはいけない、あの罪を」
ライターの大路亨は、ガンを患う元新聞記者の父から辻珠緒という女性に会えないかと依頼を受ける。一世を風靡したゲームの開発者として知られた珠緒だったが、突如姿を消していた。珠緒の元夫や大学の学友、銀行時代の同僚等を通じて取材を重ねる亨は、彼女の人生に昭和三十一年に起きた福井の大火が大きな影響を及ぼしていることに気づく。作家デビュー十年を経た著者が、「実在」する情報をもとに丹念に紡いだ社会派ミステリーの到達点。

ジャーナリズムの神髄を突いた展開に引きこまれて、ページをめくる手が止まらない。――長野智子(ジャーナリスト)
真実は人の数だけある。複雑に絡み合い、繋がった結末に息を呑みました。――小芝風花(女優)
塩田さんの中でも新ジャンルを切り拓き、今の社会にとって、必要な作品を作り出した。――石戸諭(ノンフィクションライター)
情報というものとどう向き合うか試されているのは、大路だけでなく、読者も、である。――瀧井朝世(ライター)
圧倒的なリアリティを描き出した傑作。リアリティとは生の切実さであり、人間への敬意だと気づかされる。――河合香織(ノンフィクション作家)
何度も何度も、熱風が頬を掠めた。「今、なぜ私はここにいるのか」という根源的な問いを突きつけてくる。――武田砂鉄(ライター)
フィクションとノンフィクションの狭間を揺るがす、新たなジャンル誕生!――三宅香帆(書評家)
その女は、戦後日本社会の化身。ファクトとドラマのかつてない融合がここにある。――吉田大助(ライター)

10周年の節目を迎え、これまでの実在の事件やアニメ業界に関する直線的な取材から一歩踏み出し、新しい創作のアプローチを模索している。以前はコミックや映画化され、多くの関係者が参加する作品「罪の声」からインスピレーションを受け、より大きな作品を生み出すプロセスが魅力的だと感じた。その経験から、連携して物語を豊かにする新しい手法に興味を持った。
現代のテクノロジーとの関係性
インターネットとテクノロジーの進化が、現代社会にどのような影響を与えているかに焦点を当てた。特に、仮想現実(VR)などの新しい技術によって、人々が現実世界とデジタル世界の間でどのように生活しているかに興味を持ち、これが依存症を引き起こす可能性について研究している。
メディアの役割と課題
メディア批判が広まる中で、塩田はマスコミの現実的なイメージに問題提起をしたいと考えている。この観点から、各個人の重要性を尊重する報道のあり方を探求し、真実を掘り下げることで、より公正な報道が可能であると考えている。
作品のテーマと構造
塩田は、最初の草稿で虚と実の間のフィクションとノンフィクションのバランスを取りたいと考えていた。しかし、根本的な再作成を求められた後、彼は事実と真実をテーマに据えた新しい構造を確立。これにより、一貫性のあるストーリーテリングが可能となり、編集者からも高評価を得ることができた。

芦原大火(あわらたいか)

芦原大火は昭和31年(1956年)に発生した。福井大震災を乗り越えた芦原温泉は開湯70周年祭を終え、観光ブームによって観光客が飛躍的に増加していた。昭和31年4月23日、午前6時38分に国鉄芦原駅前の商店から出火し、乾燥した強い風により火が瞬く間に燃え広がり、温泉街は火の海と化した。この火災で死者1人、負傷者349人、全焼309戸、被害総額は50億8800万円に上った。旅館26軒中19軒が焼失し、2軒が廃業するという大きな打撃を受けた。


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