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東大ケーススタディ研究会 伝説の「論理思考」講座: ケース問題で「広い視野」「深い思考」をいっきに鍛える/白木湊【読書ノート】

論理思考の習得がむずかしい2つの理由
ビジネスでもプライべートでも、「論理思考」が必要とされる場面は数多くあります。また、「知識・経験や勘」だけでは、判断が難しい場面も増えています。しかし、論理思考の習得はそれほど簡単ではありません。
では、どんな学習方法であれば、より効果的に論理思考を身につけることができるのでしょうか?
たとえば、論理的に考えたのに、上司やお客さんから次のような指摘を受けて、大幅なやり直しが必要になった経験はないでしょうか。
「そもそも○○の視点は?」と、自力で気づけなかった内容を指摘された
なぜ、この視点が重要?」と質問されたが、うまく理由を答えられなかった


難しさ1:示された解答や結論を、自力で再現することが難しい
世の中では、以下のような論理思考の指導がよく見られます。こうした指導はたしかに正論ですが、実際に自分で再現するには、「思考プロセスの理解→再現」が必要になります。
・明確に「問いを定義」しなさい
・「なぜ」を繰り返して、理由や課題を「深掘り」しなさい
・考えた内容を、わかりやすく「構造化」しなさい


難しさ2:自力で気がつくことが難しいタイプのミスが多い
また、思考中にミスしやすい箇所は、多くの人の間で共通しています。このようなミスを自力で防ぐためには、「客観的な視点から、自分の検討内容に、偏り・見落としがないかを検証」する必要があり、難度は高めです。

本書が論理思考を学ぶのによい理由
方針1:外側からは見えにくい、「結論を導く背景にある途中の思考内容」を明示/☆Point「模範解答や結論」だけではない
方針2:ミスが発生しやすい箇所を明確にした上で、そのミスの回避策を提示/☆Point「正解(あるべき思考)」だけではない
方針3:複数の「具体的な問い(ケース問題)」を通して、少しずつ理解していく/☆Point「抽象的な方法論」の解説ではない

「ケース問題」であなたの論理思考力をチェック
Q:大手乳製品メーカーA社が、乳幼児用の粉ミルク事業の売上を向上させるには?
よくある回答例:高品質・高付加価値のプレミアム商品を強化する
よくある考え方:少子化で子供の数は減っている。しかし、子ども1人当たりにかける金額が増えている。そのため、単価を上げやすい状況・トレンドであると言える。
このような回答をイメージした方は、論理思考が十分にできていないかもしれません。解答のプロセスはぜひ本書でご確認ください!

この書籍は、「論理思考の5つの要点」や、検討すべき前提としての切り口の紐付けなど、論理的に物事を考える上での不可欠なポイントを詳しく紹介しています。
論理的な思考は、単に「思考力」に依存するのではなく、持っている「知識」の深さにも大きく影響されます。日々の生活の中で知識を増やすためには、受け取った情報に真剣に向き合い、その背後にある意味を理解することがキーとなる、と著者は述べています。
真の目標は、日常生活での出来事を通じて思考力を磨きながら、知識も積み上げていくこと。そして、その旅路を始める際の信頼できるガイドとして、この本がそばにいてくれることでしょう。


【目次情報】
導入編1 なぜ論理思考は難しいのか
導入編2 論理思考の「前提知識」の確認
前提知識1 「論理思考」が満たすべき要件
前提知識2 「論理的な問題解決」が満たすべき要件
前提知識3 「ケース問題」とは何か?
論理思考は「論理力×想像力×知識」で決まる
例題編1 ありがちなミスを認識する
ミス1 検討の「範囲」が狭くなる
ミス2 問題の「背景」を見落とす
例題編2 「見落とし」が発生する5大原因
原因1 定量化を意識しすぎる
原因2 問いの要求や条件を検討に反映できない
原因3 意思決定者の立場をイメージできない
原因4 「結論の仮説」によって検討内容が偏る
補足 「仮説思考」の効能と注意点
原因5 検討の序盤からいきなり「構造化」する
補足 「構造化」を実施すべきタイミング
まとめ 見落としのない論理思考の難易度は高い
本編0 解説へ入る前の準備
準備1 問題解決の「検討ステップ」を理解する
準備2 本編の解説の「構成と流れ」を理解する
準備3 論理思考の5つの心構え
本編1 現状を把握する1【前提編】
前提1 問いの要求を正しく理解する
前提2 拙速な構造化は避ける
本編2 現状を把握する2【基本編】
基本1 具体的に「フロー」をイメージする
基本2 意識的に「比較対象」を設定する
基本3 イメージの対象となる「主体」の洗い出す
工夫 網羅的に「フロー」をイメージする方法
補足 思考の偏りを防ぐ3つの確認ポイント
本編3 現状を把握する3【発展編】
発展1 「類推先」をイメージする
発展2 曖昧な思考を「明確化」する
まとめ 「現状把握」に必要な心構え
本編4 課題を特定する
前提確認 そもそも「課題」とは何なのか?
方法1 「複数の切り口」を紐づける
方法2 「既存の打ち手」から逆算する
まとめ 「2つの方向」から課題を特定する
本編5 打ち手を考案する
チェックポイント1 多様な切り口を打ち手に活用できているか
チェックポイント2 打ち手に関連する主体をイメージし直したか
まとめ 「発想力」の伸ばし方と使い方
補足 論理思考の中の「打ち手の考案」の位置づけ
本編6 日常から知識を蓄積する
復習 知識が豊富なほど論理思考力が高まる
知識の学び方1 日常の情報から「示唆」を抽出しておく
知識の学び方2 知識を得るために「行動」に移す

12分で理解!東大ケーススタディ研究会の論理思考講座
この本は、東大ケーススタディ研究会による「論理思考」講座に焦点を当てています。多くの人が論理思考の基本を学びましたが、その知識を実務でどのように活用すればいいかについて不安を感じることがあります。本書は、論理思考を実際に使いこなせない人々に向けて、ケース問題の解決方法だけでなく、思考プロセスや壁を乗り越えるための方法を教えています。

論理思考の必要性
ほとんどの仕事で論理思考が必要ですが、その目的は問題解決です。しかし、論理思考を活用する際には、正しい手順を理解することが重要です。その手順は以下の3つです。
現状把握と課題特定: 問題解決の前に、現状を正確に把握し、問題を特定します。これは非常に重要なプロセスであり、不十分な場合、後続の思考が無駄になる可能性があります。
定性的な視点を広げる: 現状把握の際、重要な視点を見逃さないようにするために、定性的な視点を広げることが重要です。論理思考は最初に定性的に物事を考える段階から始まります。
メモを取り、洗い出す: 構造化を前提とせず、ボトムアップで情報をメモし、仮説を立てます。これにより、問題を多角的に考えることができます。

量的な視点の注意
定量的な視点に移る前に、まずは定性的な視点を広げることが重要です。なぜなら、定量化できない視点があるためです。例えば、スマートフォンの台数を計算する際、実態と異なる結論に至る可能性があることを説明しています。

構造化に先立つメモの重要性
構造化をする前に、情報をメモし、仮説を立てることが重要です。構造化を強調することが多いですが、適切な切り口を見つけるのが難しい場合があります。そのため、メモを取りながら情報を整理し、問題を解決するためのストーリーを作成します。


誤解や誤算の背後には、多くの時、我々が持つ先入観や見落としてしまう部分が潜んでいる。これらの偏見や盲点に気づくためには、一歩引いてものごとを冷静に、客観的に見る能力が求められる。しかし、自分の視点だけで完璧に気づくことは容易ではない。

また、人々が問いや質問に対する回答を行う際、その問いの本質を捉えきれず、的外れな答えをしてしまうことも珍しくない。こういった状況を避けるには、問いを細分化し、それぞれの核心をつかむ「問いを因数分解」のアプローチが非常に効果的である。

さて、問題を解決する過程において、一般的な流れとして「結論や仮説を立てる」「情報を収集し分析する」「その結果を伝える」というステップが存在する。本書では、この「結論や仮説を立てる」部分をさらに詳細に、すなわち「現状をしっかりと把握する」「明確な課題を特定する」「その課題に対する対策を考案する」という3つの段階に分けて、それぞれの段階でのミスを避けるためのテクニックやヒントを提供する。

論理思考の舞台裏: 素晴らしい頭脳を持つ人々もつまずくその理由とは

論理思考は、現代社会においてほとんどの場面で必要とされるスキルの一つだ。だが、その魅力的な力を手に入れるための学習過程は決して容易ではない。多くの人々が論理思考を学んできたにも関わらず、実際の場面でその力をうまく発揮することができないのだ。

「なぜ?」を繰り返し問いかけ、考えを整理し、明確な問題設定をする。これらは論理思考を身につけるための基本的なステップだ。しかし、多くの人々がこれらの基本を理解したと思っていても、実際には見落としていることが多い。なぜなら、彼らは単に手法を学んでいるだけで、その背後にある深い思考のプロセスを習得していないからだ。

さて、問題解決の現場に立たされたとき、多くの人々はすぐに解答を模索し始める。例えば、「なぜハンバーガーを食べないのか?」という疑問に対して、彼らはハンバーガーのメリットやデメリットを列挙するだろう。だが、実際には、その人がハンバーガーを食べない本当の理由を知ることが最も重要なのだ。

さらに、見落としや間違いの背後には様々な原因が潜んでいる。定量的な情報に偏った視点、問いの真意を正確に理解しないままの回答、あるいは自らの仮説に固執することなどが、その典型的な例だ。特に、早急に考えを構造化しようとするあまり、真の答えを見失うことがよくある。その前に、問題に関する情報や知識をしっかりと整理し、真に具体的な思考をすることが求められる。

最終的に、論理思考の真髄は、単に手法を知ることではない。それを実際の場面で適切に使いこなす力、つまり「具体的で多様な事実をもとに、自分の意見や考えを強化する」能力が真に求められるのだ。

そのためには、常に自らの考えや視点に偏りや見落としがないかを検討し、真摯に向き合っていく姿勢が不可欠だろう。

問題解決の基礎

問題解決の手順を把握する
問題を解決する際、主なフローは「結論への仮説設定」「情報の収集と分析」「結果の共有」となる。この本では特に「結論への仮説設定」の部分に焦点を当てて詳しく説明する。このステップでは、既存の知識を駆使して正確な結論に至る仮説を立てる能力が必要とされる。論理的思考を身につける目的から見ても、この部分は極めて重要な考察となる。「結論への仮説設定」は、「現況の理解」「課題の識別」「アクションプランの考案」の3ステップで説明する。

正確な問いの理解
「現況の理解」の最初のステップでは、問いの本質をしっかり捉える必要がある。例えばコンサルティングの面接では、多くの受験者が本来の問いの意図から外れた回答をすることが多い。
「2位の野菜ジュース企業がシェアを伸ばす方法は?」という問いを考えてみると、よくある答えは新商品の開発だが、それだけでは十分ではない。

このような見落としを避けるために、問いを細分化して考える方法が有効である。例えば、「野菜ジュース」「2位のシェア」「シェア向上」に分けることができる。ここで注意すべきは、「2位のシェア」というような追加情報の存在である。
これらの追加情報を他の言葉、例えば「1位のシェア」に変えて考えることで、新たな視点や問題点が明らかになる。そういった情報の再編成や再構築は、問題解決の際に大変有効である。

問題解決の全体像

現状を把握する
具体的なイメージを持ちながら、問題を広範に考えることが必要である。例えば、「大手の乳製品メーカーが、粉ミルクの売上を増やす方法は?」という問いに対して、最初に浮かぶ答えとして「プレミアム商品の強化」が考えられるが、より深い考察が必要である。
粉ミルクの購入者とその使用者(赤ちゃん)は異なるため、そのニーズも異なる。このように、実際の問題解決のためには、一連の流れや背景をしっかりと理解し、それに基づいて解を導き出すことが必要である。
また、問題の背景や情報を整理し、それに基づいて考察を深めるためには、具体的なシナリオを想像することが役立つ。これにより、問題の本質をより明確に捉え、効果的な解決策を見つけ出すことができる。

問題点を明らかにする

問題の中には、表面的なもの、探り中のもの、そして最も深くまで探ったものが含まれる。詳細に調査した問題が、最も価値ある問題と言える。

問題点を特定するためのアプローチとして、「異なる視点を組み合わせる」方法を紹介します。「特定のフィットネスクラブチェーンの売上向上は?」という疑問を考慮し、2つの視点を組み合わせて考察する。例えば、「時間帯」と「顧客の種類」をベースに分析することで、さまざまな組み合わせ(「社会人×夜」など)が浮かび上がる。その後、各組み合わせの特徴を調査することで、問題点や課題が明確化する。

ただし、2つの視点だけでは、十分に問題を把握するのが難しい。そこで、3つ目以降の視点を追加して分析を深める。例として、「コスト」や「立地」といった新たな視点を加えることで、問題がさらに詳しく、具体的に理解できる。

戦略を計画する

戦略の最終段階での考慮ポイントは、見落としや誤解を避けること。特に、調査が中途半端に終わるミスを避けるため、「多角的な視点が戦略に反映されているか」「戦略の関連性を再評価できているか」を確認する。

例として、「フィットネスクラブチェーンAの売上向上策」というテーマで、提案された戦略が「平日の昼間の客数を増やすために、高齢者向けのプログラムを導入する」とする。その背景には「固定コストが高いため、平日昼の低い利用率は損失」という点や「高齢者は平日昼間でも利用可能」という点がある。

この戦略は一見、効果的に思えるが、まだ考慮すべき点がある。例えば、高齢者の行動傾向を考慮すると、「新しい活動を始める意欲が低い」という問題が浮かび上がる。このプログラムの存在を高齢者に知ってもらう手段が不足している場合、効果は低くなる可能性がある。そのため、「プログラムの認知向上策」も合わせて実施するのが適切である。


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