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迷メイク

女性二人。
 
「何とかゴールデンウィーク明け
 一週間…乗り越えられたね」
「キツかったあ。
 休み中、楽しければ楽しいほど、
 この期間が地獄になるね」
 
「でも頑張った!私たち」
「ほんとだね。
 でも私…お出かけしたの2日だけ…」
 
9連休だったのに?」
「うん。
 何か映画でも観ようと思って、
 出かけたんだけで知らない人から、
 ジロジロ見られたり
 クスクス笑われたりしたの」
 
「何かした?」
「別に何もしてないよ。
 いつも通りの服を着て、
 歩いてただけだよ」
 
「特別なことしてないの?」
「そんなことしないよ。
 みおちゃん私とよく出掛けるし、
 私服も知ってるでしょ?」
 
「そうだね。
 たまに奇抜きばつかなって思う時もあるけど、
 東京の場所によってはそういう人、
 普通に歩いてるしね。
 めいちゃんは最近、
 雑誌そのまんまコーデ多いよね」
「だって私、
 オシャレなんて成人するまで、
 気にしたことなかったもん…」
 
「そういえば学生時代は、
 カジュアルな服ばっかだったね。
 まあ…私もだけど」
「何で学校はさ、
 勉強は教えてくれるけど、
 オシャレは教えてくれないの?
 大人になったら必要でしょ?」
 
「それは私も思った。
 組み合わせとか色味とか、
 体型に合わせた服選びとかね。
 メイクやファッションの授業があったら、
 楽しかったろうなあ」
「ほんと。
 私のような興味のない人間にも、
 せめて基本ぐらいは教えてほしかった」
 
「メイクとかファッションの授業って、
 他の勉強と違って、
 使うところがわかって実践的じっせんてきだし、
 みんな楽しく勉強できそう」
「するよ、きっと。
 私それだったら猛勉強したかも」
 
「学校であんなにたくさん勉強しても、
 使わないものばっかりだよね」
「ほんとそれ思う。
 勉強って社会で役立つものにして欲しい。
 オシャレの授業があれば、
 オシャレリーダーとはいかなくても、
 オシャレ迷子にはならずに済んだのに…。
 私、人の真似ばっかりで、
 オリジナリティがないの」
 
「まあ迷ってる人は、
 そこからでも良いんじゃない?
 徐々に自分らしさを出せれば」
「みおちゃん。
 今度、買い物行こう。
 私に似合う服探しに付き合って」
 
「別にいいよ」
「じゃあ、日曜日ね」
 
日曜日。
 
「お待たせ、みおちゃん。
 待った?」
 
「大丈夫。いつも通りだから」
 
(あれ?めいちゃん…香水
 甘酸っぱい少し酸性の香り…)
 
「どこ行く?」
「いつもの渋谷でいいんじゃない?」
 
「そうだね。
 何でもあるし」
「あれ?めいちゃん。
 リップ変えた?」
 
「そう。
 ちょっと自分らしさオリジナリティーを演出したくて」
「う…ん…。
 でもちょっと…ムラになってるよ
 
「うそ!
 ちゃんとのばしてきたのに。
 ……どれ?
 あっ!ほんとだ。
 みおちゃん、ちょっと直してもいい?」
「いいよ。
 その商業ビルの化粧室行こう」
 
化粧室。
 
「ちょっと待ってね。
 ささっと直すから」
「別に時間あるから、
 あわてなくていいよ…
 めいちゃん、変わったリップ使ってるね」
 
「最近見つけたの。
 私はパーソナルカラーが、
 イエベ春明るい印象の肌色みたいなんだけど、
 雑誌にってたカラー、1本もなくて…」
「でもそれ似合ってる」
 
「そう?
 たまたま家でお片付けしてたら、
 どこからか出てきたの」
「?
 めいちゃん…
 ちょっとそれ…
 見せてもらっていい?」
 
「いいよ。
 はい」
「……
 こうばいしょく?…
 …ぺんてる…って
 これクレヨンじゃない!」
 
「え゛~?!そうなの~?!
 床に転がってたから、
 買ってほったらかしてたやつが、
 出てきたんだと思ってた」
「それはムラになるよ…クレヨンだから。
 しかもどこにあったの、
 この、ちょうどいいキャップ
 クレヨンにピッタリじゃない」
 
「それも横に落ちてた」
「もう、ビックリした~。
 こんなことしたら、
 せっかくの唇、れちゃうよ。
 めいちゃん、
 プクッとした可愛い唇してるんだから。
 それにハリがあるから、
 マット光沢なしよりシアー艶ありの方が、
 似合うと思うんだよね…私。
 リップのあとに、
 シアバターとかグロス使うと、
 立体的で際立きわだつと思うよ」
 
「私…シルバークロス白銀聖衣持ってない」
「いや、そんなのこの世の誰も持ってないわよ!
 私が言ってるシアバターは天然油で、
 グロスは艶出しアイテムよ」
 
「そんなの使ったことない」
「そうだったのね。
 じゃあ、今日は服も見ながら、
 色々探そうか?」
 
「いいの?」
「まずは、そのクレヨン落とそう」
 
「ありがとう、みおちゃん」
「…あれ?めいちゃん。
 それ…髪で気付かなかったけど、
 耳に付けてるのってAirpodsエアポッズ?」
 
「耳?ああこれ?
 これ違うよ。
 これはラッキョウ
 
ラ、ラ、ラッキョウ!!
「え?!
 みんなこれオシャレで、
 入れてんじゃないの?」
 
「めいちゃん、
 みんなが耳に付けてるあれは、
 イヤホンだよ」
「そうなの?
 知らなかった…変だと思ったんだ。
 でも、いつでもラッキョウ食べれるから、
 便利だなとは思ってたけど…」
 
「今、食べちゃダメ~!!
 めいちゃん……
 あなたは、
 オリジナリティーの申し子もうしごよ…」
 

このお話はフィクションです。
実在の人物・団体・商品とは一切関係ありません。 

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