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あったかもしれない歴史的瞬間 ~通訳~

時代がうつろっても、
人というものが変わることはない。
 
今この瞬間。
 
あなたはあの人と、
同じ体験をしているかもしれない。
 



170年前…。
 
嘉永6年。
 
「何事だ!」
外国籍の黒船の船団が、
 この浦賀うらがの港に!!

 
「何だと!」
「ただいかりを下ろし停泊ていはくし、
 何かを叫んでおるのですが、
 言葉がわかりません。
 でも攻撃する気配はないようです。
 いかがいたしましょう?」
 
「わしが話をつけに行く!
 通訳が必要じゃ。
 堀達之助を呼んで参れ!」
「はっ!」
 
オランダ語が堪能たんのうで、
英語も少し話せる堀達之助は、
すぐに与力よりき 中島三郎助の元へ。
 
「お呼びですか」
「達之助よ。
 すぐにあの黒船に出向き、
 相手側の来航の意図を探るぞ。
 お主は通訳を頼む」
 
「かしこまりました」
 
二人は奉行所の船で、
黒船サスケハナ号に近づく。
 
すると甲板かんぱんから声がする。
 
すかさず堀達之助は返事をします。
 
「私はオランダ語が話せます!
 お目通りを!」
 
達之助のカタコト英語が通じたのか、
二人は乗船を許される。
 
そしてペリー側もオランダ語ができる、
ポートマンが通訳
として呼ばれます。
 
「達之助わかっておろうが、
 わしらは話し合いをしに来たのだ。
 くれぐれも言葉には注意を払え。
 ふとしたことが戦争の引き金に、
 なるやもしれんでな」
「心得ております」
 
そこに副官コンティ大佐がやってきて、
こちらの様子を見ながら、
通訳のポートマンに何かを伝えている。
 
ポートマンは英語とオランダ語。
堀達之助はオランダ語と日本語。
 
この二人が双方の、
橋渡し役をになっていた。
 
「達之助、毅然きぜんと振る舞うのじゃぞ」
「はっ!」
 
するとポートマンが、
大佐の話を聞き終わると、
達之助にオランダ語で話しかけてきた。
 
(冷静に…冷静に…
 一語一句聞き逃すな!)
 
「ペラペラペラペラペラペ~ラ、
 ペペペラペラペラぺぺ~ぺ~ラ」
 
「………」
 
「達之助…
 相手は何と申しておる」
 
達之助は一歩前に出た。
 
そして…
 
ゆっくり話してもらって、
 イイデスカ?



令和の今日…
きっと世界の観光地の何処かで…。 


このお話はフィクションです。
実在の人物・団体・商品とは一切関係ありません。 

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